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四話⑥


朝、まだ日は昇りきっておらず少しの薄暗さが目立つ時間帯涼はいつもよりひどい顔でベッドの中で動いていた。

下手に起きて母親を起こすわけにはいかないので少しの間ベッドにいる必要があった。

ベッドでゆっくりと呼吸を整える。人に心配をかけないため少しでも血色良く見えるために体に良いと思うことをやっていく。

腕を伸ばし力を入れそして抜いて、また入れて抜く。これを五回ほどを繰り返す。

冷えた体が暖まっていく。

今度は足も同様に力を入れそして抜いて、また入れて抜く。

体がほんのりと熱を感じるまでじっくり時間をかけて行う。

こうするうちに眠気と相まって酷くなっていた顔が少しましに見えるものになる。

スマホで自分の顔を確認した涼は静かに部屋を出て脱衣所に向かった。


朝の軽い運動とシャワーにより一旦の体裁を整えた涼は今日も朝御飯の用意をする。朝御飯を作りながら彼女に分ける弁当の用意も忘れない。

あれだけ詰められ脅されてもいつもと同じ関係を続けたいと思うのはDNAがなせるものなのか涼が鈍いのか。恐らくは前者なのだろう。

怖くてしかたがない。だけども求める。涼にとって彼女は麻薬となんら変わりがなかった。


朝の時間、生徒はまだ揃いきっておらずまばらにしか人はいない。いるのは朝練があった人間か規則正しい生活を送っているおよそ学生の鏡のような人間くらいである。

隣の席には尊がいた。色々と遊び回っているような彼だが思ったよりも根は真面目で親のしつけも良いのか授業を見る限り頭の回転も悪くはないようだった。

「おはよう」

「おはようっす」

また独特のくだけた返事が帰って来た。だが涼の荒んだ心にはこれぐらいの気軽さがほんの少し嬉しくなる。

「流石に入学して少し落ち着くとクラスも落ち着くな。」

彼の発言のように入学してすぐは騒いでいたクラスも少しは落ち着き大体のグループも定まっていた。

グループが定まったという事実が昨日涼に脅しをかけた男をより目立たせる原因になっていることに涼は少しうんざりした。

「でもまぁちらほら目立つやつもいるよな」

そんな了解心境を知ってか知らずか彼はそんなことを呟いた。

「柊谷さんのこと?」

「それもだけどあのヤンキーもどき達も目立つと思うけど?」

「あぁそうだね。」

涼はふと昨日のヤンキーの発言と尊の注目先に何か違和感を感じつつもそれがなんなのか分からないので頭のすみに追い出した。


昼休み、クラスの人間が移動し始め各々のグループで固まったり恋人とご飯を食べる。

涼は柊谷滴とご飯を食べようかと考えるがそんな涼の考えは最初から見越しているようにヤンキーが涼にガンを飛ばした。

「わかってんだろうな?」

そう耳元で囁かれたかと涼は思った。そんなヤンキーの視線から逃げるように涼は教室から逃げ出した。


図書室のフリースペース、結局は部室で一人過ごすことに決めた涼は黙々と弁当を食べる。普通の一人前の弁当にしては少し多いそれは涼に逃げたという事実を認識させるに十分なものだった。

卵焼きも生姜を強めに効かせた唐揚げもレタスを下敷きにして包むようにおいたミニトマトのマリネも涼一人が食べるにはどれも少し多く、綺麗な盛付けが涼の心を抉る。

「辛いなぁ」

一人、白い壁紙に囲まれて食べるお弁当はいつもより味が薄い気がした。







すいません。誤字修正しました。七月十九日

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