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四話④

本日ラストです。

柊谷滴との食事会が終わったあと余った少しの時間で涼は気になっていたことを聞いてみた。もっとも実は君の名前ぐぐって~なんてことを聞いたらドン引きされるのは目に見えているのでそれとなく聞いてみる。

「柊谷さんは入る部活決めた?」

「いや、どこにも入らないでおこうかなって」

予想通りの答えが帰って来た。彼女は説明会の時、良い顔をしておらず終始つまらなさを体全体で表していた。でも涼が聞きたいのはそこではなかった。

あのミュージカルでの彼女はあどけなさこそは残るものの目鼻立ちが整った彼女が訓練された声で歌い、演じるのだからそれは美しいものだった。小さな劇団のせいか話題にはならなかったことが涼には非常に残念で仕方がない。

「演劇とか吹奏楽とか入らないの?女の子多いから入りやすいと思うんだけど?」

涼は巧みに言葉を使い誘導する。日頃の日記のせいか言葉の使い方が達者だった。

「うん。あまり興味ないから。」

ダウト、なんてことを言いたくなったがあくまで思うだけにして違う返事をする。

「そっか。そろそろ時間だね。また一緒にご飯食べても良い?」

「こっちからもお願いしていいかな?春巻き美味しかったし。」

涼は内心ガッツポーズをとりながら「うん!」弾む声で返事をした。


その後の授業は説明だけで本格的に入るのは来週からとなった。ホームルームの内容も特に重要な物はなく涼は終わり次第図書室に向かった。

そこには我らが新聞部の面々が居た。

「お疲れ様です。」

「あぁお疲れ様。」

部長との極めて事務的なやり取りをして席に座る。

新聞部はその行動が多岐に渡るためこうして定期的にミーティングをするらしい。県下一の蔵書数は伊達ではなく読書スペースだけでなくフリールーム、ディスカッションルームなどの部屋があり新聞部は定期的にそれらの部屋を使わせて貰っている。

人数が大体揃うと部長の司会でミーティングが始まる。

「今日来てもらったのは他でもなく入学式と部活動説明会の新聞を作るためだ。」

入ったばかりで記事を書くのかと涼が思うとその考えを否定する部長の注意が飛んできた。

「新入生の皆にはそれぞれのチームに別れて仕事をしてもらうね。今からそれは分けるから安心して。最初はそのチームのリーダーに従って仕事をしていこうね。」

部長の言葉に安堵を見せる部員達。

その後、涼はあらかじめ決まっていたのか部長のチームに割り当てられていた。

「じゃあよろしく。私の班はメインの記事と全体のデザインを担当してるから新入生は雑用と簡単な校閲作業をお願いすることになるかな。」

新聞部はどうやら土日もあるらしく、休まる機会は大幅に削られるとの嬉しくない言葉を聞きつつも涼は部活の雰囲気嫌いじゃなく皆で和気あいあいと何かをするという初めての作業に心を弾ませるのだった。


「でさ、部長の仕事振りがキツイんだ。」

月曜日、涼は中庭のスペースで柊谷滴と食事を取っていた。今日のメニューは一口ハンバーグ、獅子唐の醤油と鰹節炒め、トマトのマリネ、炊き込みご飯と色鮮やかである。

涼は柊谷滴と食事を取るようになってから昼食にも力を注ぐようになっていた。

そして力を注ぐようになったからこそ柊谷滴のパンばかりの昼食に不安と余計な勘繰りを働かせることになっていた。

(いつもパンだけど家庭環境複雑なのかな?)

だけどもそんなことを大声で聞こう物ならせっかく築き上げた仲は地に落ちることは目に見えていた。

「ハンバーグ貰うね。まぁでもよっぽど信頼してなきゃ新入部員に仕事は回さないと思うから安心して良いと思うよ。」

そんなことは分かってはいるがそれでも容赦のない仕事振りは中々に来るものがあるのだ。

だけども愚痴は話のタネ程度にして本腰を入れては喋らない。

まだ友人として付き合い初めて土日を含めて4日という短い期間もあってか色んな手法を試しても柊谷滴は自分の過去を喋ることはなかった。

涼が過去を知ってることは柊谷滴本人は気づいてないだろうがそれでもボロは出さず上手く話題をスルーする。涼は長い道のりになることを覚悟していた。

ハンバーグの油が口の中でとけ白米と躍り合う。白米はハンバーグの攻撃によりバラバラになり口のあちこちで甘味を振り撒いていた。

(我ながら良い仕事するな)

自分の仕事を褒めつつ目の前で笑顔になる滴を見て涼は嬉しくなった。

彼女のことが知りたい。すっかり熱をあげていることに涼本人は気づかずこれからの長丁場の覚悟を隅っこに置き目の前の彼女の笑顔を楽しんだ。


昼休みが終わりその後の授業も無事に終えた。そのまま部活が始まると思いきや涼の席に男が向かってきた。

その男の見た目はチャラく進学校に決して似合わないものだった。クラスの中のドキュン達とよくつるんでいることもあって涼は普段から避けるようにしていた。

「なぁ少し良いか?」

男の荒い物言いに涼は従うしかなかった。


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