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出会い③

遅くなりました。

扉を開くとそこは本好きには堪らないほどの本があった。何処を見渡しても、ひたすら本、本、本。本だらけである。図書室というより図書館と言っても言いほどの本に涼は興奮を隠せないでいた。無意識に緩む顔を戻そうとしてもまた緩んできてしまう顔に困りながらも最初に抱いた不安を頭の外に追い出し図書室改め図書館を歩き始めた。

図書館の中を一通り歩いた後、最初に見た人の集まりを涼は思い出した。一通り見学することで頭が少し落ち着きを取り戻したことも自覚した。

その落ち着きを取り戻した頭は同時に彼が頭の外に追い出した何処から来たかは皆目見当がつかない不安もをご丁寧に呼び戻した。

この図書館にはフリースペースと呼ばれる空間があり、そこでは迷惑にならない程度なら会話も許されているスペースがあった。

その人の集まりはフリースペースの10人は座れる机と椅子を全て陣取り、ノートに必死に書き込みながら同時に子供が逃げ出しそうな顔で会話している人もちらほら伺えた。

涼は不安と同時に好奇心が自身の体を操りかけていることを自覚する。それは不安のように見当がつかないものではなく、入学したての学校で人の集まりが必死に活動していることに対する純粋な興味から来るものだった。

涼は本来気が大きくはない。

だが、入学式を終えた後の気の高ぶりが涼に普段は眠っている勇気を叩き起こす一つの起爆剤となった。

男性に声をかけるのは何処か怖かったので机の中ごろに位置している少し地位の高そうなだけど優しそうな女性に涼は声をかけた。

「あのぅ。すいませんこれって何の集まりなんでしょうか?」

涼の怯えた声に怪訝そうな顔をしながら優しそうな女性は振り向いた。

女性は振り向き、涼をじっくりと見ると涼の制服のバッチに気がつき「新入生?」と優しく声をかけた。

女性の問いに緊張しながらも「はいっ」と答えた。

女性はその姿をみて笑いながら穏やかに説明を始めた。

「ここはね、新聞部の集まりでね今はその締め切りに追われている最中なわけ。明日部活動説明会があるでしょう?その準備もまだ残っててさ。少しいつもより忙しいんだ」

その説目に涼は迷惑をかけたかと思った。その考えは表情にも現れていたらしく女性に笑われる原因になった。

「そんなに怯えなくても大丈夫。興味を持ってくれるのは嬉しいからね。」

その答えに安堵しながらもやはり不安というのは残って涼を蝕む。

「あの、何かお手伝い出来ませんでしょうか?ご迷惑をお掛けしたのは事実ですし‥‥」

その不安とさっきの勇気の残骸が普段涼が言わない言葉を涼に言わせた。

その涼の発言に女性は心の底からの笑顔を咲かせ「ぜひお願いしていい?」と涼に確認を取った。


涼は女性、部長に(皆が部長と呼ぶので涼も部長と呼ぶことにした。)明日行う部活動説明会のPowerPointの資料を作る手伝いをさせられていた。

資料を作りながら涼は新聞部の活動の概要を部長と確認していた。

「文化祭でも活動してるんですね?」

涼の問いに部長は「新聞部だけど大概のイベントには関わってるからね。演劇部の脚本も書いてるしね。」と答えた。

演劇部と言われ涼は柊谷滴がふと頭に浮かんだ。スポットライトに当たった彼女を涼の思春期の頭は一瞬で作り上げた。

見てみたい気持ちに襲われながらも彼女と関わることが出来てないという現実が彼の頭を冷やす清涼剤となった。

その後涼は部長と楽しく喋りながらなるべく余計なことに頭回さないように着々と仕事をこなした。

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