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紅き箱庭のフィロソフィア  作者: 高柳神羅
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戦火を泳ぐ災禍

 灯火が近付いてくる。

 地平線一杯に広がるそれは、生者に群がらんとする死者の群れのように見えた。

 ゆらり、ゆらりと揺らめきながら、確実に前へと進み。

 獲物を喰らわんと、爪を磨ぎ牙を剥いている。

 それらを目の前にしてもなお。

 彼らは、笑っていた。

「千どころの騒ぎじゃないっスね」

「あら、怖気付いたの?」

「まさか」

 アルティマの茶化しに、ネイティオは苦笑して肩を竦める。

屍人アンデッドに恐怖なんて無縁の言葉っスよ」

「それもそうね」

 アルティマは靴の裏で軽く砂を擦るような仕草をした。

 右手を軽く身体の横に構えて拳を作り、ふぅと深く息を吐く。

「あたしたちの役目は可能な限り時間を稼ぐこと。深追いはしないわよ」

「了解っス」

 ネイティオは自らの腹を軽く撫でる。

 ぞろり……と内に隠されていた肉の器官が法衣を捲って表へと顔を出した。

「五体満足でいられたら、また会いましょう」

「そう言うあんたがあっさり解体されてるんじゃないわよ?」

 アルティマは右の拳を上下に振る。

 彼女の右腕は、一瞬にして巨大な機械大砲へと変貌を遂げた。

 遥か前方で空気が震える。

 声を上げて駆けて来る数多の兵を前に、彼女は真っ向から大砲を構えて不敵に笑んだ。

「さあ、派手に遊ぼうじゃないの!」

 声と共に撃ち出された破壊光線が、大地を抉って派手に吹き飛ばす。

 熱風が渦を巻いて吹き荒れる。その風に捲れた法衣を靡かせながら、ネイティオは両の掌を前に持ってきて構えた。

 掌の先に光が生まれる。それは幾分もせずに巨大な炎の塊へと成長し、波となって前方へと奔った。

 灼熱が多くの兵を飲み込み、焼き焦がす。それでも押し寄せてくる人の波は勢いを衰えさせることはなかった。

「……災禍に終焉を」

 呟いて、彼は胸の前で印を切る。

 長大な爪を生やした両手を彼に向けて振りかぶる兵士に、花開いた肉の触手がヴェールのように覆い被さった。

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