コーヒー店
道の目立つところにその小さな店はあった。
なんというかその、こじんまりしているというか、たたずまいから個人経営であることが伺える。全体的に焦げ茶色のその店は、お世辞にもチェーン店のカフェのように綺麗なカフェらしさは醸し出していなかった。だがそこが良かった。カラオケ帰りにふと目に付いたその店に友人と二人で入る。
コーヒ店と書かれていた看板と店の雰囲気に沿ったドアを開けると、女性の店主が少し戸惑ったような、しかし客人として歓迎もしているかのような表情でこちら見る。無理もない、店の中にいる客層は(と言っても3人ほとだったが)皆、高齢の男性ばかりだ。その中で私と友人は一際目立つ女子高生であり、たいして常連でもなく初めてこの店に吸い込まれてきた店について無知な客であった。
恐る恐る店に入り、比較的せまい店内の席に着くと、女店主はこちらを伺うように注文を待っていた。メニューは壁に貼られた手書きのものとコンピュータで作成されたプリントのものがあった。私はコーヒーのみを飲もうと思い、かつ自身が飲めるものを選んだ末、『カフェオレ』を注文した。友人は、席のすぐそばに貼られていたプリントのメニューを見て、『モーニングBセット』を頼んでいた。
注文した際にカフェオレはホットかアイスかと聞かれ、ホットでお願いします、と答えると女店主はえっ?というような疑問の表情を示した。こんな暑い夏にホットは合わないと思っていたのだろう。だが砂糖が溶けやすいホットコーヒーは私にとって極上のものなのだ。しかしなんだか申し訳なくなった。…それはさておき、この『ホットサンド』とは一体何なのだろう、モーニングセットBに書かれていたメニューの内容だ。暖かいサンドイッチと想像はつくが、なぜわざわざ暖かくするのだろう。冷たい方が美味しいのではないか?私はおそらく先ほどの女店主のような表情を浮かべていただろう。
実際にそれを食べた時に確信した。ここのホットサンドはこうでなくてはいけないという定義まで生み出すほどだ。家庭が垣間見えるキッチンで作られたそのサンドイッチはまさに家庭の味だった。サンドされた玉子焼きの量は思ったより多かったため、私の未熟な食べ方ではすぐにこぼれてしまったが、これは暖かくなくてはいけない、このサンドイッチが冷たかったらこの玉子は全くの意味を持たなかっただろう。暖かいからこその美味しさというものがそこにはあった。それにトマトやほかの野菜との相性も抜群だ。これも玉子がいい感じに熱を吸収しているからではないかと勝手に思った。うまい。そう言うしかほかならなかった。
完敗だ。雰囲気も落ち着いていて騒音や人の集団など、私を咎めたり逃げ出したくなるように心を殺しに来るものなど何一つない。このホットサンドに、コーヒーを飲みながら作業をすることに、驚くほどに集中できるじゃないか。
友人も同じ気持ちだったらしく、目を輝かせて(そんな気がしたというだけなのだが)いたので提案した。
また来よう。




