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Star Dust-Drop-  作者: 鳥海水瀬
.2-二つの出会い-
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-二つの出会い-2

結界の外へ出られるようになって暫く経った頃。

ファーマリーでの仕事にも大分慣れ、たまには違う事をしてみようかと思い新たな依頼を受けてみる事にした。

まだ見ていなかった結界外依頼のボードに目を通す。

貼られている依頼の難易度的にはまだ簡単な帝都周りの魔物からの収集や難易度高めの大陸外まであった。

魔物から収集する物の方が帝都の中の依頼より報酬の値段は上がる。

危険な物になっていくとそれは普通の依頼と比べ物にならないくらいの額になるが、いきなり難易度を上げてもまだ護りきれる自信はない。

「ねえジュン。今日は何しようか?こういう収集するのとかどうかな~」

悩んでる俺の隣でアオイが何かの依頼に指を差していた。

『服を作りたいのですが材料が足りません。キュラムとキュレムの羽根、ログウェンとドグアの毛皮を五枚ずつ集めてほしいです』

覗いて観ると帝都周りの簡単な収集依頼だった。

「羽根と毛皮集めか。これなら大丈夫だろう。…無理だけはするなよ」

喜ぶアオイを危なっかしく思いながらも、依頼を受付けに届ける。

万全の準備をして結界の無い帝都外の大地へと足を踏み出した。


緑豊かで広大な大地。

出る事ができなかった結界の外は魔物がいるとは思えないくらい自然がとても綺麗だった。

だけど辺りを見回すと当たり前のように魔物はうろついていた。

まずはキュラムとキュレムの羽根を集める事にする。

キュラムは体が黄色くて羽根先が茶色でかなり太っていて、キュレムは体が白くて羽根先が青色。

そしてキュレムはキュラムと違ってスマートだ。

飛ぶ事のできないこの二匹は草むらで身を潜めていると言われていた。

草むらに近づくと何かがモゾモゾとあっちこっちで動いているのが分かる。

「あいつらか。潜んでるって言われてたが、あれじゃ隠れきれてないな。ちょっと行って来るか。周りには気を付けろよ」

「分かってる。ジュンもね」

両手に剣を出すのを合図にアオイも力をくれる。

草むらに独り飛び込みキュラムとキュレムを斬り刻んでいく。

どういう仕組みかは分からないけど、この世界の魔物は力尽きると何かしらのアイテムを落として跡形もなく消え去ってしまう。

そのお陰で大量の死体がゴロゴロと転がっている事もなく綺麗な自然のままだ。

(あと一匹!)

「ふう、終わったぞー……っ!?アオイ、後ろ!!!」

最後の一匹を倒し、羽根を拾って後ろを振り向くと一匹のログウェンがこっちに向かって走って来ていた。

叫び声に反応して後ろを振り向く。

(くそっ…。間に合わない…!)

そう思ったのも束の間。

向かって来ていたはずだったログウェンが遠くの方に飛んで行くのが見えた。

「へ……?」

目の前で起こった状況に戸惑いながらアオイの方をもう一度見ると、昔から良く見慣れた構えを取って立っていた。

「その構えって…」

「えっへん!ジュンには内緒でナルちゃんに教えてもらってたんだ~。ただ、護られるのも嫌だったから。私もジュンを護りたいからね!」

「あはははは。でも、やっぱり無理だけはするな」

満面の笑みを浮かべているアオイにつられて俺も笑う。

アオイが言うナルちゃんとは俺の従兄のナルミ・リューグの事。

クロスフォード家の血は引いているけど、俺とは違って港町に住んでいる。

そして俺達が殆ど出歩く事ができなかったからか、面倒臭がりなナルの方が家に遊びに来てくれてたりした。

かなり面倒臭がりながら見せてくれた体術も凄かったけど、何かを悩んで俺の父親と相談していたのも良く見てきた。

何を話していたかを訊いても俺の眼を見ては『お前にはまだ早い』と何度もはぐらかされてばっかりだったけど、なんやかんや言っても実の兄達よりも親しみやすくて頼りになる従兄だ。

(でも、いつの間に教えていたんだか…)

「気を取り直して残りの毛皮取りに行くよ!」

「ははっ、了解」

ログウェンとドグアはキュラム達と違ってそこら辺をうろうろとしている。

狼みたいな奴らだからさっきみたいに不意打ちで襲われないように気をつけないといけない。

残りの奴らはアオイも倒す方に加勢して一気に終わらせた。

材料を全て集め終え、依頼主であるギルマンシェの服屋にいるシャーリィさんに渡す。

「ありがとうございました。これでプレゼントの服を作る事ができます。これはお礼です」

お礼として受け取ったのは今回の依頼報酬とシンプルで細い腕輪だった。

「ありがとうございます。それでは」

服屋の前から離れ、さっき貰った細い腕輪を陽の光に当ててみると反射してキラキラ輝いていた。

「アオイ、これ。俺よりお前の方が似合うと思う」

「貰って良いの?ありがと」

嬉しそうに左手首に着け、その手を太陽にかざす。

相当気にいったらしく、ずっと腕輪を見ながらニコニコしていた。


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