-はじまりの朝-7
日が傾き始めた頃、俺達はユミルさんとの約束の為にギルドへ戻って来ていた。
ただ待っているのも暇だったから適当に駄菓子を摘まみながら待っていると、仕事を終えたユミルさんが俺達の座っている所まで走って来た。
急いで戻って来たのか大分息切れをしていて、息を整える為に大きく深呼吸をしている。
「ふぅ…。待たせてごめんね。これから二人の腕試しをさせてもらうよ。ある程度の戦う力が無いと危険な結界の外には出る事ができなくて、他の街や村への依頼とかも受けられなくなるのよ。だからそれを見極めさせてもらう為に私と全力で戦ってもらうわ。場所はギルドの地下に戦える設備があるから、準備ができ次第始めるよ」
「分かりました。準備の方はもうできているので大丈夫です」
「そう。んじゃ、行きましょうか」
連れられて向かうのは建物の奥にある階段。
昨日ユミルさんが走って行った場所だ。
上に向かう階段は無く、あるのは下に向かう階段のみ。
階段を下りて行くと開けた場所に出た。
地下部屋は透明ガラスで何部屋にも区切られていて、俺達以外の人も既に他の先輩の人達と戦っていた。
部屋を使用する為に管理している人と何かを話していたユミルさんが手招きで俺達を呼び、歩いて行く方について行く。
そして一定の離れた距離に立つように指示された。
「さてと、始めますか。本物の剣は流石に危ないから木刀に持ち替えてね。私は遠距離タイプだから接近戦は苦手だけど、本気で斬りかかって来てくれても構わないから。始まりのブザーが鳴ったら開始ね」
備えつけで置いてある木刀を二本、手に取る。
少し間が空いてから部屋中にブザー音が鳴り響き、それと同時にユミルさんは攻撃を仕掛けてくる。
ユミルさんの手にあるのは光の弓みたいなものだろうか、一回矢を射るだけで何本もの光の矢がこちらに飛んで来ていた。
「アシストを頼む。まずはスピード!」
「分かった!」
足に向けて片手をかざす。
アオイはシャルムーン家の血縁である為に補助の能力に長けている。
一瞬光った両足が少し軽くなったのを確認し、数多に飛んでくる矢を左右に走りながらかわす。
それを繰り返し、少しずつ相手との距離を縮めて行く。
「そう簡単には来させないよ!」
叫んだのと同時に飛んでくる矢の数が増え、あとから飛んでくる矢の色がピンクから水色に変わっていた。
光の矢が床に触れた所から徐々に凍っているのが分かる。
「まじかよ…」
足元にも飛んでくる為に大きく後ろへ跳び避ける。
「早くしないと全部凍っちゃうよ」
(向こうに行く為の通路が全部氷で埋まってしまう。さあ、どうするか。時間をかければかけるほど氷は厚くなるだろう。ここは力押しで行くしかないよな…。最後まで木刀がもつだろうか)
「アオイ!木刀強化!」
「了解!」
強化がついた事を確認してから、右手に持つ木刀を力いっぱい氷にぶち込む。
刺さった所から亀裂が入り、その亀裂は徐々に広がっていった。
一旦、大きく下がり勢いをつけながら刺さっている木刀を足の力で氷の中に押し込む。
すると上まで延びていた氷の壁が音を立てて崩れ落ち、その崩れ落ちる氷を利用して懐まで飛び込んで相手の首筋に残りの左手に持つ木刀を当てる手前で止めた。
「ひゅう。やるね~。降参降参」
左手に持っていた光の弓を消して笑いながら両手を上に挙げる。
「君達二人なら文句無しだね。合格だよ」
止めていた木刀をゆっくり下ろす。
だけどその首筋には木刀が当たっていたのか斜めに伸びる一本の痣ができていた。
「あ、首筋に痣…すみません」
「ん?これくらい大丈夫だよ」
首にできた痣を軽く摩るのを見てアオイは何も言わずユミルさんの近くに歩み寄り、その痣を覆うように手を添える。
「ちょっと動かないでくださいね」
訳の分からないような顔をして固まっていたけど、首筋にできた痣はアオイの力によって徐々に消えていった。
「あはは、凄いな。温かくなったと思ったら痛みも消えてるよ。アオイちゃんありがとう」
「いえ」
「それじゃあ、これで私の指導は終わりね。明日からは結界の外に出ての依頼も受けられるようになるよ。また一緒に仕事できるといいね」
「ありがとうございました」
深々とお礼をしてユミルさんを見送る。
俺達も少し時間を置いてから階段を上って行った。
これからまた新しい事が始まる。
出来る事も増えて、ギルド生活も思ってた以上に楽しいです。