-はじまりの朝-4
ずっと走っていたお陰で予定より大分早く着いてしまい、ゆっくりファーマリーの中を見てまわってから依頼主がいるであろうキャットゥールの所を見に行く事にした。
少し歩くとキャットゥールらしき生き物達が集まっている所を見つけた。
「わあ、本当に顔が猫っぽくて体が羊っぽい!可愛い~」
宣言していた通りにアオイはキャットゥールの元へ駆け寄り、とても幸せそうな顔をしながら毛をもふもふしていた。
少し奥でキャットゥールの毛を刈っている人が何人か見える。
あの人達の中にこの依頼主であるカイツさんがいるだろうかと思いながら集団の方へ向かうと、一人の男の人が作業をやめて俺達の方へと歩いて来た。
「こんにちは。アラルトルーフェから来ました。あなたがカイツさん…ですか?」
「こんにちは。よく来てくれたね。私がカイツだ。今日は頼んだよ」
「こ、こんにちは。えと、私達初心者なんですけど…初心者でもできますか…?」
「大丈夫だ。キャットゥールは大人しいから暴れたりはしないからね。この毛刈り鋏でゆっくり刈ってくれればいいから」
渡された毛刈り鋏は誰でも扱えるようになっていて、ちゃんと傷付けないように加工もされていた。
「じゃあ、頼んだよ」
「はい」
「頑張ります!」
はしゃぐアオイを横目にコツコツと毛を刈る事を始める。
作業を始めて数時間は経った頃か、キャットゥールは暴れる事もなく全ての毛を刈り終える事ができた。
「あ゛ー…これは疲れた…」
「まだまだだねぇジュン」
「いや、身長的に腰にくるんだよ」
「それ、私に小さいって言ってるようなもんだよね」
「被害妄想だってそれ」
勝ち誇った顔から直ぐに睨むように俺を見ているが、俺とアオイの身長差って言ったら十七センチ。
流石にそれだけ差があれば腰への負担は大分違う。
(…でも身長の話をすると何故か直ぐ怒るんだよな。それだけあれば十分だと思うが、今からあと七センチも伸ばすのは難しいだろ…)
溜め息を吐きながら休んでいた俺達に声をかけてきたのはカイツさんだった。
「二人共お疲れ様。今日はありがとな、お陰で助かったよ。これが今回のお礼だ。少なくて申し訳ないが二人分の依頼料だ」
差し出された封筒を受け取り、中を見てみると五千SILDの紙幣が二枚入っていた。
「…こんなに貰っても良いのですか?」
「ワッハッハッハ。少なくて申し訳ないくらいなのに謙遜するなよ。また来てくれよな。お前達なら大歓迎だ!大事に使えよ」
「ありがとうございます。また来ます」
「カイツさんありがとうございます!」
「じゃーな!」
「はーい!」
俺は会釈をし、大きく手を振るのはアオイ。
依頼を無事に終えて俺達はギルドに戻った。