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Star Dust-Drop-  作者: 鳥海水瀬
.3-空からの訪問者-
19/84

-空からの訪問者-5

レイウォークはアルーナウェントから北の方角にあり、橋を渡って直ぐ近くの湖の上にある村だ。

橋を越えると魔物の種類も帝都側とは少し変わっている。

ログウェン、ドグア以外に狐のフォクシー、猪のボワドーラがうろついているのが分かった。

俺とハルトより前にアオイとナツキは歩いている。

俺とナツキを近づけるのが嫌なのか、ハルトは俺の横を歩いていた。

「なぁ、ハルト。俺が嫌いなら別にそれで良い。ルコルトの森で…二人で戦って思ったんだ。短い時間だったけど俺はお前と一緒に戦えて楽しかった。だけど、森で奴らと会って、死ぬかもしれないと思った。今、生きているのが奇跡だとも思ってる。…俺はもっと力が欲しいんだ。あいつを護れるくらいもっと強くなりたい。…だから…もし、お前が良ければ…だ。俺の…修行の相手を…してくれないか?」

何も答えようとしないで、ただ目で俺の方を見るだけだった。

「…考えといてくれよな」

それから一言も話す事は無く、歩いている俺達に気づいたフォクシーやボワドーラをハルトとナツキが襲ってくる前に蹴散らしていた。


時間もそれ程かかる事も無く、湖の上に建てられた村、レイウォークに辿り着いた。

村には建物へ入る為の小さな橋が繋がっていて、透き通った水には鮮やかな色をした水草や花が咲いていた。

その花や水草を避けながら泳いでいる魚はたくさんいる。

だから家の周りで釣りをする村人も多い。

夜になるとリュシアルが蛍みたいに飛び回ると言われていて、それを見る為に村へ訪れる人は多いそうだ。

村長さんがいる建物は湖のど真ん中。

ど真ん中という事で、他の建物とは違って橋では渡る事ができず、村長宅へ行く為には専用の小さな舟に乗らなければいけない。

乗らないと行けないはずなんだがハルトとナツキには関係ないようで、翼を広げればそこまでひとっ飛びで行けるらしい。

「高い所が大丈夫なら手を貸すけど…どうする?」

「俺達は高い所は平気だ。助かる」

ハルトは俺を嫌っているのが分かっている為、ナツキに連れて行ってもらう事にした。

アオイはハルトに軽々とお姫様のように抱えられて村長宅周りの船着き場に飛んでいった。

突然、胸に抱き寄せられてアオイは顔を真っ赤にしているのが見えた。

(あいつにあんな顔見せるなんて…ちょっと嫉妬しそうだ)

それは駄目だと頭を左右に振る。

船着き場には舟が二艇も停めてあり、一つは村長のだろうけどもう一つは誰のだろうかと思いながらも建物の前まで行き、扉を開ける。

「すみませーん。村長さんいますか~?」

建物の中に入ると、髪飾りに青白いのと茶黄色の羽根を着け、毛皮の服を纏いとても綺麗な格好をしたお姉さんが立っていた。

「あ、ちょっと待っていてくださいね」

呼び声に反応して、部屋の奥へと可愛く走っていくお姉さんの後ろ姿を見送る。

ジッと見ていたらアオイに頬をつねられてしまった。

「…痛いって。何を怒ってるんだ?」

「……別に」

つねられた所を擦りながらアオイを見るが、不機嫌な顔をしながら黙っていた。

何が気に入らなかったのか、何で怒られたのかを考えてはみたけど分からなかった。

お姉さんが走って行った奥の部屋からは複数の声が聞こえてきていた。

その中には何処か聞き覚えのある声も混ざっていた。

小さくなる声に一人分の足音が近づいて来る。

「みなさん、お待たせしてすみませんね」

部屋から現れたのは村長さん。

立派な髭が生えていて雰囲気からしても、とても優しそうな感じの人だった。

手に持っていた品物を村長さんに渡し、依頼達成の証にサインをもらう。

優しい眼差しで『ありがとう』と言われて嬉しくなった。

「では、俺達はこれで。失礼します」

立ち去ろうとした時に奥の部屋からひょっこり顔を出した一人の女性と目が合い、ピンクの髪をなびかせて走って来た。

「やっぱり君達か!久しぶりだね。元気にしてた?」

「ユミルさん!?」

「こんにちは。お久しぶりですね」

「ナツキ達もユミルさんと知り合いだったのか?」

「そうだよ。入った時に教えてもらったのがユミルさんだったからね」

「ふふふ。私の教えた二組が仲良くしてくれてて良かったよ」

「別に仲良くはしてない」

「はははっ。ちゃんと仲良くしていますよ」

面白そうに笑いながらユミルさんも帰る準備を始めている。

「じゃあ、私もそろそろ帰ります。長居しちゃってごめんね」

「いいえ。こちらこそありがとうございました。またいらしてくださいね」

部屋から戻って来たお姉さんに手を振りながらユミルさんは玄関を出て来た。


アルーナウェントへの帰り道、ユミルさんも一緒に歩いていた。

「そう言えば、どうしてレイウォークにいたんですか?」

「アオイちゃん気になる?最初はヴィスティークからの依頼で来てたのよ。お嬢さんの婚約祝いの服を届けてほしいってね。そして一緒にわいわいしてたら帰る事をすっかり忘れてたんだ」

「婚約……お祝い言い忘れちゃったな」

「知らなかったのなら仕方がないよ。気にしない」

落ち込むアオイの頭をユミルさんは優しく撫でていた。

(…ヴィスティークってどこだっけ?全然覚えてない…。けど、あの羽根や服の素材にプレゼントって何処かで聞いた事があるような……あ!)

「ヴィスティークってもしかしてシャーリィさんのいる服屋ですか?」

「うん、そうだよ?」

「やっぱり。なら、心配ないさ。俺達の外での初仕事があのお姉さんの洋服の素材だったって事だ。直接お祝いが言えなくても役には立てたんだからな」

「…うん、そうだね!」

「……材料を集めた事とか本人には分からないがな」

機嫌は良くなってくれた。

慰める為にそうは言ったが、アオイには聞こえないくらい小さく呟く左隣のハルトを睨み、腹部に思いっきり肘打ちを決めてやった。

「…っ!!」

(左は俺の利き腕だ。相当痛かっただろう)

肘打ちが決まった所を押さえ、咳き込みながらも痛いのを我慢していた。

急に咳き込んだ事にアオイとユミルさんは心配していたけど、何もないと誤魔化しその場はどうにか乗り切った。

「今のはハルが悪いよね」

「…げほっ……悪かったな」

「…珍しく素直だな」

「るせぇ」

俺達が笑っている事にアオイ達は何かあったのかと不思議そうに見ていたけど、ハルトとは嫌われていても何やかんやで仲良くやっている気もした。


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