-空からの訪問者-3
依頼アイテムを受付けに持って行き、どうしようかと悩みながら歩いていると誰かが俺の名前を呼んでいるように聞こえた。
「…ュン…ジュ~ン!」
気のせいじゃなく俺の名前を呼んでいる人がいるようだ。
「…ん?…げ…っ!」
(アオイが何故そこにいるー!?)
振り向くと寮にいると思ってたアオイが休憩場の椅子に座っていた。
大きく手を振っていて、俺が気づくと椅子から立ち上がり俺に向かって走って来た。
さっきまで笑っていた表情とは一変、予想していた通り直ぐに心配そうな顔になってしまった。
「ジュン、どうしたの!?凄い傷だらけじゃない!」
「……ちょっとたくさんいた犬とじゃれて遊んでたらこうなった。…ってか、何でここにいるんだよ」
アオイは俺の傷を癒しながらぼろぼろになった服も直していた。
「理由も無しに出歩くなって言われて、何も無い部屋で独りだと退屈だったんだよ~。それにギルドの中の方が家にいるより安全だと思うんだよ」
「まぁ、確かに…。何かあったとしても男もいるからこっちの方が安全…か…。悪いな、部屋に閉じ込めるような事を言って」
「分かってくれたらそれで良いよ~。……よし、これで終わり」
傷が完全に癒えると、その場所を軽く叩いた。
「ありがとな」
「本当の事、何をしていたのかは訊かないけどその代わりに今から私のわがままを聞いてもらうから」
やはりあれじゃ誤魔化しきれていなかったようで、何かを企んでいるような顔で微笑んでいる。
「了解。何がしたいかは決まっているのか?」
「うん。アルーナウェントの近くにある村、レイウォークに行ってみたい!」
「レイウォークか…。あの橋の向こうにあった村だな」
あの橋って言うのが分からず、アオイは頭に?を浮かべながら首を傾げていた。
「せっかく行くんだし、ついでにレイウォークへの依頼を探してみるか?」
「うん!」
レイウォークについて書いてあるボードに目を通す。
(村付近の魔物狩りか…)
今回はそんなつもりで行くわけじゃない。
あの時の事を思い出して、少し表情に出てしまったのか隣にいたアオイが顔を覗き込んでくる。
「…どうした?」
「ちょっと怖い顔してるなーと思って」
「怖い顔なんてしてないよ」
慌てて笑顔に戻す。
疑うような表情をしていたけど『そっかー』と、これ以上は詮索しないでくれた。
再びボードに顔を戻し考えていると同じように探していたアオイが俺の肩を軽く突いていた。
もう片方の手で依頼書を指差していたからその先を見つめる。
「これはどうかな?」
「配達か。これならちょうど良いな」
「でしょ?ギルマンシェに届け物を受け取りに行こーう」
依頼書を提出してから、俺達はギルマンシェへ向かった。