-空からの訪問者-2
夢で何度もあの時の記憶を思い出し、目覚めの悪い日々が続く。
見逃されて助かった事がかなり悔しかった。
自分の力が全く足りない事を思い知らされた。
今のままでは駄目だと考えてベッドから起き上がり着替える。
(魔物を相手に修行…やってみるか)
寮には強い人が多いから安全だろう。
そう考えアオイには出歩かないようにと伝え、そして俺は依頼を受ける為にギルドへ向かう事にした。
今回はたくさんの魔物と戦えるような依頼を探し、端から端まで見比べて一番修行に向いていそうなくらいの良いやつを見つけた。
『欲しい物。ログウェンの毛皮とドグアの毛皮をそれぞれ五十枚ずつ集めてもらえませんか?受け渡しはギルドの受付けでお願いします』
「うん、これがいいな」
依頼登録を済ませ、ギルマンシェの道具屋、ツインメリオで必要な物を買い、独り魔物のいる大地へと足を運んだ。
道に沿って歩き始める。
橋の手前で立ち止まり、ツインメリオで買った物をポケットから取り出して小瓶に入ったカンバセーラの蓋を開けた。
カンバセーラはバラフリットとカンフリットの鱗粉を混ぜて作られた匂い粉で、この匂いの大好きで鼻が利く魔物を自分の周囲に集める事ができるらしい。
風で粉が舞うように高い所から振り撒くと、匂いに釣られて遠くの方からログウェンとドグアが何匹も俺の立っている所まで走って近づいて来た。
剣を構えて匂いが消えるのを待つ。
俺の周囲に漂っていた粉が徐々に消えて匂いも無くなった。
匂いに酔っていたログウェン達は我を取り戻し、目の前にいる俺の匂いに気づき始めた。
「修行…開始!」
呟くのと同時にログウェン達は一斉に飛びかかって来る。
舞うように双剣を操り、一匹残らず倒していく。
上手い事、捌ききれずに腕や足を噛まれたりしたが気合でやりきった。
集まった奴らを倒し終えた後、念の為に持ってきていた包帯をきつく巻いて傷口を塞いだ。
魔物が落とした毛皮を拾って数を数えると全然、目標には達していなかった。
ポケットから再びカンバセーラを取り出し、周りにばら撒く。
それを何度も何度も繰り返して傷だらけになりながらも戦い続け、開始してから何時間か経った頃にやっと毛皮集めの目標に到達した。
「やばいくらいに傷だらけになったなー。これじゃ、アオイに心配されるか」
心配されないように修行をするつもりだったけど、今の自分を見せたら何をしてきたのかと問い詰められるのは目に見えている。
「…なんて誤魔化そう」
誤魔化す為の言葉を探しながらギルドへと戻って行った。