-二つの出会い-5
怪しげな奴らがいる所へ音を立てないようにゆっくりと近づき、近場の物陰に隠れて奴らの様子を窺う。
「ようやく…覚めたようだな…ト。…我らの役目は……を……する事だ」
「すみませんアル…様。…はどういう…なのでしょう」
「……だと…いる。お前達にも……を…取る力はあるだろう。しかし…を通った時、…が……消えた。どうにか……を探さねばならない」
金髪と獣耳の生えた二人の男が何かを話しているが、声が小さすぎて会話が上手く聞き取れない。
危険と分かっていても独りで近くに寄り、耳を傾ける。
「このままだとホートが戻るまで時間がかかりそうだよね。探そうにも手がかり無しだし。なんでボク達のホートの力だけが消えたんだろうね~」
「めんどくせぇが暴れてれば直ぐに戻ってくんじゃねぇのか?」
「どうだろうな。遅いか早いかなんて俺らには分からん」
「私は力が戻らなくても、お兄さまがいればそれで充分ですわ」
「…って、おいっ!くっつくな」
「嫌がるお兄さまもス・テ・キ」
冷めたような目で水色髪の二人を黙って見ている銀髪の男。
「何か言えよメグレス!」
癇に障ったのか銀髪の男に向かって声を荒げていた。
それでも何も喋らず突っ立っているメグレスと呼ばれた銀髪の男に溜め息を吐いている。
(奥にいる二人と違って手前の五人の性格は全然違うようだな。それにしてもホートって何だ?消えた?ハゲが暴れると言っている。やはりこいつらは…普通じゃない)
アオイ達と合流する為、音を立てないように引き返し始める。
微かに踏む枝の音を聞き取ったのか、座っていた白髪の女が立ち上がりこっちに気づいて振り向いた。
(やばい、気づかれた…!?)
動く事を止めて木の裏で身を潜める。
「どうかしたのか?フェクダ」
「ええ。ちょっと大きなネズミを見つけたわ」
「はぁ?ネズミぃ?そのネズミたぁ何処にいるんだ!」
「あそこに三匹」
女が指差す方はアオイ達がいる所。
その場にいる全員が指差す方を見る。
(俺に気づいたんじゃないのか…?)
そんな事を考えている暇は無い。
ハルトが二人を庇うようにして奴らの前に出ていた。
「ケッ、へなちょこなネズミじゃねぇか!俺様達と殺り合おうってか?笑わせてくれる」
「…フン。へなちょこかどうかはやってみないと分かんないだろ?来いよ。相手してやる」
「んだとぉ?殺ってやろうじゃねぇか!!!」
ハルトの挑発を真に受けるハゲ。
勝算は無いように見える。
だけど後ろのアオイ達を少しでも逃がそうと考えているのか、奴らの視線をわざと自分に向けさせているように感じた。
ナツキがアオイを連れて離れたのを確認してから俺も跳び出した。
「へっ、お前一人にかっこいい事させられないな!」
俺が飛び出したのが予想外なのか、ハルトの眉間に皺が寄る。
「なんだぁ貴様はぁ?何処に隠れてやがった!…まぁ良い。ネズミが増えたからって関係無ぇ。お前らまとめて殺してやる!!」
跳びかかってくるハゲの拳を剣で受け止める。
「くっ…硬い…。それに…重い」
支える足は震え、力が強すぎて受け止めるだけでやっとだった。
「残りの二人を逃がして貴方達二人で私達に楯突こうだなんて。自殺行為だとは思わないのかしら?」
フェクダと呼ばれていた女が何処からか出したカードを俺達目がけて投げて来た。
それを素早くハルトは一つ残らず銃で撃ち落としていく。
「そんな事は言われなくても分かっている。どうせ逃げても殺られるだけだからな。なら殺られる前にやり返すだけだ」
「……へぇ。それなら俺も混ぜてもらおうかな」
「ふふ。お兄さまも混ざるのでしたら私も…」
傍観していた二人も武器を取り出す。
抑えつけられている今の状態で、これだけ集まられると流石に負ける気しかしない。
(本格的にどうするか…。このままだとやばいな…)
ハルトを見ても同じような事を考えているのだろうか、頬に冷汗が流れていた。