-二つの出会い-4
大分奥まで進んで、やっと今より開けた所が見えてきた矢先、今度は横の茂みから大きく草が揺れる音が聞こえる。
アオイを庇うように立ち止まると、風を切るように左右に分かれ一瞬で俺達を狙うように立つ二人に囲まれてしまった。
赤髪は俺に銃を。
緑髪はアオイの首筋に何かの魔法を。
二人の背中には漆黒の翼が生えていた。
「あんたらが怪しい奴らか?」
睨むように銃を構えた奴が問いかける。
(…あんたらって事は、この二人が先に来ていた人達って事だろうか)
「…いや、違う。俺達はギルドからの依頼でここに来た」
そう言うと赤髪の男は手に持っていた銃を消し、腕を組むように立ち直す。
緑髪は指に集めていた魔法の力を消していた。
「ハル、この二人が残りのギルド員って事みたいだね。ごめんね、驚かせてしまって。関係無い人だったら巻き込みたくなかったんだよ」
「いえ……。遅れてすみませんでした。俺はジュン・クロスフォードって言います」
「私はアオイ・シャルムーンです。よろしくお願いします」
年齢は俺達とは変わらなさそうだったけど、小さい頃から入っているかもしれないし、ベテランくらいの先輩だろうと思って気をつけていると堅い挨拶になってしまった。
堅すぎたのか緑髪の方は『あー』と口を開けてオドオドしていた。
「あーっと…。勝手に先に来ていたのは僕達だから気にしないで。僕はナツキ・カランス・ティオ・ラクトス。とても言いづらい名前だからナツキって呼んでくれるかな?それと多分、君達とあまり変わらない年だろうし僕達はギルドに入ったばかりだからね…。くだけた感じに話してくれた方が嬉しいかな…」
ナツキは頬を掻きながら苦笑いをしていた。
「分かった。…という事は俺達と入った時期は殆ど変わらないんだな」
「そうかい?ならもっと仲良くできそうだ。これからよろしくね。そして、こっちは…」
「ハルトだ。ハルト・ティルエル・シア・フィアード」
腕を組みながら無愛想に答える。
(そう言えばハルトにナツキって名前、何処かで観た事あるような…)
「ハルちゃんとなっちゃんか!よろしくね~」
「ハ、ハルちゃん…」
さっきまでの無愛想な感じとは違って困った顔をしていた。
「ははっ。まだちゃんづけは慣れないんだね。フユネもそう呼んでいたのに」
ナツキがハルトを弄りながら懐かしそうに笑っている。
その表情に何か引っかかる感じがしたのは気のせいだろうか。
「…そろそろ行くぞ」
これ以上弄られないようにとハルトが先頭を歩き始める。
二人の横顔を気にしながらもアオイを護るようにしてハルトの隣を歩いた。
歩き始めて間もない頃、更に大きく開けた場所が見えてきた。
そこには報告にあったように怪しげな奴らが八人もいた。
一人は眠っているようだったけど、八人がいるその場の空気や雰囲気が普通ではなく感じる。
額から冷汗が流れ、不安から胸元の服を掴む。
さっきまで忘れていた胸騒ぎもまた出始めた。
「悪い。アオイ、そこで待ってろ」
「ここまで来たんだからもう引き返さないよ」
「…危険…でもか?」
「僕もやめといた方が良いと思うけど」
「うん。でも私もやる」
「……分かった。でも、本当に危ないと思ったら独りでも引き返せ」
アオイの頑固さには困り、溜め息が出る。
やると言ったら最後まで考えを変えようとしない。
約束した意味も無くなってしまう。
「ナツキ、お前も危ないと思ったら引き返せ」
「ん?了解。だけど、ハルを置いていく気は無いから」
さっきまでののほほんとした微笑みから想像もできないような鋭い目つきに変わっていた。