-はじまりの朝-1
時計の針と針が合わさり、高い音が部屋中に鳴り響く。
いつもは目覚まし時計なんて設定はしないのだけど、今日はどうしても寝坊ができない用事があった。
―12月20日
今日はアオイの18才の誕生日。
そして俺達二人がギルドに入る事を許された日だ。
急いで準備を始める。
今日の為に買った新しい服に袖を通し、薄いピンクの箱に赤いリボンがついた誕生日プレゼントを手に持っていつも通りにベランダから隣のベランダへと渡る。
外は気持ちの良い風が吹いている。
部屋の窓は開けっ放しにされていて、吹き抜ける風でカーテンが大きく揺れている。
大きく揺れるたびに見えるのは肌色をした二本の人の足。
暫くそれを見ていたら風の力でカーテンが開いてしまい、着替えている途中のアオイと目が合ってしまった。
何度見てもアオイの驚いた顔は面白い。
「ジュン…いつもいつもワザとやってるでしょ」
顔を赤くしながら急いで服装を整えていていた。
「ははっ!そう怒るなって。ほら、誕生日おめでとう」
持って来たプレゼントをアオイに差し出すと怒る事をやめて箱をゆっくり開け、二つの丸められた赤いリボンを取り出した。
「いつもの髪形に赤いリボンが似合うと思って選んだんだ」
「あ…かわいいリボン。ありがと…ちょっと待ってて」
鏡の前にアオイは向かい、戻って来るのを待ってる間、ベランダの手すりに凭れるように俺は空を見上げていた。
暫くした頃、近づく足音に気づいて前を向くと、髪形をツインテールにして結び目の所に赤いリボンを着けて戻ってきた。
「お待たせ。どうかな?」
スカートをなびかせ、照れたようにまわる。
その姿は自分が想像していた以上にとても似合っていた。
「うん、凄く似合ってるよ」
「そう、良かった」
俺が言い慣れない事を言ったからか、アオイは照れているのを隠すように笑顔になっていた。
「んじゃ、そろそろ行くか」
アオイの家の階段を下りて行く。
リビングに向かう途中のアイ姉と廊下でばったり会った。
「あら、ジュン君いらっしゃ~い。またアオイの部屋を覗いてたの?」
「ははっ。アイ姉、おはよう。覗いてたわけじゃないですよ。いつも通り堂々と見てましたから」
俺とアイ姉の会話にアオイはまた怒り始めていた。
「ふふふ。これからギルドに向かうのかな?気をつけていってらっしゃいね」
「はい、行ってきます。では、また」
「…もう。行ってきま~す」
手を振って見送ってくれるアイ姉に背を向けて荷物を取りに自分の家のリビングへ向かう為、渡り廊下を歩く。
二本の対の剣を持って長い廊下を歩き、階段を何度も下りて行く。
数分かけ下り続けると、やっと外に出られる門に辿りついた。
そして俺達はギルドへ向かって走り出した。