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オバール人達の地球  作者: 赤屋根
第三章 破壊
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スナメリが部屋に戻ると、フロンはもう目を覚ましていて、ベッドの上にちょこんとと座っていた。

「おかえり」

スナメリを見て、笑顔になる。

スナメリは小さく微笑み返すと、棚にしまってあるパンをとり出し、フロンに手渡す。

フロンはそれをしげしげと眺めた後、かぶりついた。


「なぁ、フロン」

スナメリは真剣な表情を意識して造りながら、言った。

「俺たちのキャンプの住人になるには、身元をしっかりと明かさないといけないんだよ、だからフロンがどこで生まれ育ったか、詳しく教えてくれないか」

スナメリはフロンが色々と話してくれる事を期待していたが、フロンは以外にもただただ困ったような表情を浮かべるだけだった。

「私怪しい人じゃない」

「いや、そういう事じゃないんだ、フロンはこのキャンプに住みたいだろ?」

「うん」

目を輝かせながら言うあたり、本心であることに間違いはなさそうだ。

「自分の事についてきちんと話さないと、キャンプから追い出されるんだ」

それを聞いて、フロンの表情が曇る。

スナメリはフロンの横に移動した。

「それは嫌だろ?何か言えない事でもあるのか?」

フロンはベッドの一点を見つめたまま、黙っていたが、やがて口を開いた。

「シェルターに住んでいたの、一週間前まで」

「シェルター?」

それはスナメリにとって聞きなれない言葉だった。

「キャンプの事か?」

フロンは首を横にふる。

「もっとずっと大きい」

「人がたくさん住んでいるのか?」

「人は、あんまりいない」

スナメリはどういうことなのだろうか、と訝しんだ。

このキャンプよりずっと大きく、住人はまばらな、シェルターという場所。

そのような場所は噂にすら聞いた事がない。

「なんでそこを出て、森をさまよってたんだ?」

「冒険したかったの」

遠くを見つめるようなフロンの目はきらきらと輝いているように見える。

そしてその生き生きとした目を、スナメリへ向けた。

「人間達の住む世界を見てみたかった」


スナメリは全身がぞわりと粟立つのを感じた。

何かがおかしい。

「どうゆうことだ?お前も人間だろ?」

「そう、だからこそ、知りたかった」

ビー玉のような灰色の濡れた目でフロンはじっと見つめてくる。

何かを訴えようとしているかのように。

あるいは、こちらの考えをすべて見透かそうとするかのように。


その時、通りでフロンの名を大声で呼ぶ声がした。

「フロン、いるんだろ?よかったらキャンプを色々案内してあげるよ、下に降りといで」

アンナさんだ。

それを聞き、フロンは顔を輝かせる。

「行ってくる」

あぁ、とうわの空で返事を返すスナメリに、フロンは付け加える。

「ヒントはいっぱいあげた、これ以上はあんまり言えないから、私の過去が知りたいなら、ゆっくり考えてみて」

そう言い残すと、フロンは軽い足取りで部屋を出て行った。


部屋に一人残されたスナメリは、ベッドに仰向けに倒れこんだ。

天井の、むき出しになった丸太の骨組みを見つめながら、フロンの言った言葉について考える。

人間の住む世界ではない場所に、フロンは今までいたと言う。

「オバール人達のドーム

スナメリはそう呟いた。

地球の侵略者であるオバール人達は、地上と大気の汚染から身を守る為に、巨大なドームを造りその中で集団生活している。

ここのキャンプから一番近い所だと、南に60キロほど行った所に、ドームが存在する。

「まさかな」

オバール人達の残虐非道な性質は、誰だって知っている。

オバール人達はたまに人間を拉致することがあったが、ほとんどの者は二度と生きてドームの外に出る事は叶わず、運よく逃げ出してきた者もわずかにはいたが、心身共に健康な状態で戻ってきた者は誰一人いなかった。

オバール人によって拉致され、命からがら逃げだしてきたが、加えられた拷問により心身ともに破壊された村人を、スナメリは知っていた。


「…ンだよヒントって」

スナメリは悩ましげな表情のまま、毛布を体にまきつけ、ベッドの上で丸まった。


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