前途多難過ぎる恋 48
何か身の危険を感じるフィニアは、半無き状態で身を丸める。と、そういえば自分はなんでベッドで寝ていたのかと、今更に彼女はそれを疑問に思った。
「あ、そういえば私またなんで寝てたの?」
見渡すと部屋はイシュタルへと用意した客室のようだ。
なんかこんなシチュエーション前にもあったよなとフィニアが考えていると、メリネヒは「王女様、お風呂でのぼせて倒れたんですよぉ~」と彼女に教えた。
「え!? そ、そうなの?」
「はい~。で、王子がびっくりしてお部屋に運んだんですよぉ」
なんかよくよく自分は倒れるなぁと、フィニアは落ち込む。でも今回のお風呂は自分にはどう考えても刺激が強すぎたし、頭に血が上りすぎて倒れたのもしょうがないとも思った。
「そういえば、服……」
素っ裸で倒れたのであろう自分だが、ちゃんと服を着て寝かされていたことにフィニアは気がつく。
青い上質な絹の服は、ほんの少しだけ自分にはサイズが大きい。誰の服だろうとフィニアが思うと、メリネヒがタイミングよく「王子の服ですぅ」と答えた。
「へぇ!?」
「すいません~、緊急事態だったのでとりあえずってことで~。ちなみに私と王子で着せましたぁ~」
「おお、ぉ、おぅ……そうなんですか……」
ということはイシュタルに完全に裸見られたのか……と、フィニアは恥かしさのあまりどこか遠くへ逃げたくなった。
それにしてもこのほのかに花の匂い香る服がイシュタルのものだとわかると、なんだかまた胸がドキドキする。そういえば出会ったときに彼女が貸してくれたマントも同じ匂いがしたと、フィニアは服の匂いを嗅ぎながら思った。好きな人の服の匂いを嗅ぐとか、もはや立派な変態である。
「私はですねぇ~、王子の服もいいんですけどもぉ、私秘蔵の小悪魔風セクシーランジェリーを着せようと提案し……」
「ひいいぃぃ、王子の服でいいです! 王子の服がいいです!」
メリネヒの妙なテンションにフィニアが振り回されていると、イシュタルが部屋に戻ってくる。彼女はフィニアが起きているのを見て、慌てた様子でフィニアに駆け寄った。
「フィニア、大丈夫?」
「あ……イシュ……」
フィニアは「大丈夫です」と答え、そして心配させてしまったことをイシュタルに謝る。
「あの、ごめんなさい。なんか心配ばっかりさせてしまって……あと服とか勝手に借りてるみたいで……」
イシュタルは「そんなの気にしなくていいから、もっとフィニアは自分の体調を気にして」とちょっと怒ったように言う。フィニアはなんか情けなくて悲しくて、小さく「はい」としか返事出来なかった。
「フィニアは体弱いんだから……」
「あ、そ、そういえばそういう設定でしたね……」
「え?」
「おおぉ、すいませんなんでもないです! 弱いんです私!」
”お姉さん”宣言した後のイシュタルは、本当にお姉さんのようだった。フィニアのことを心配するからこそ、少し厳しくもなるのだろう。
なんかこれはこれでいいなぁと、頭の中基本的にお花畑なフィニアはちょっとそんなことを思った。
「ところで王子、王様たちに王女様のことをお話しに行くって言って出て行きましたがぁ……随分早く戻ってきましたねぇ~」
メリネヒのその言葉に、フィニアが「えぇ!?」と反応する。
まさかイシュタル、自分が根回しするよりも先に王たちと今回のお見合いについての相談をしてきてしまったのだろうか。
「あぁ、うん……」