表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
gloria  作者: ユズリ
前途多難過ぎる恋
83/138

前途多難過ぎる恋 39

 怒り狂ったフィニアがそこらに転がっていた本をバンバン投げてくるので、ロットーは意地悪い笑顔で華麗にそれを避け続けた。


「避けるな! 当たれ! この! くぉの! うがあぁー! なんで当たんないんだよ、くっそー!」


「はははっ、王女のへっぽこな攻撃なんて当たりませんよ。それより俺思い出したんですけど、王女は女性への免疫の無さも大問題でしたよね」


「へ?」


 フィニアは一旦攻撃の手を止める。攻撃が止んで落ち着いたところで、ロットーは改めて「王女、王子と手を繋いだり出来ます?」と質問した。


「そ、それくらいだったら出来る……っていうか、したいです」


 別にフィニアはイシュタルと特別大人な事したいわけではない。いや、ホントはちょっとしたいと正直に思ってるけど。キスとか、あとアレとか。でもそれよりもイシュタルと手を繋いでデートとかのんびりお話しとか、それが出来れば大体は満足なんだと、フィニアはそれに気づいたのだ。

 ロットーはフィニアの返事を聞いて、先ほどよりもいっそう意地悪い表情となる。


「へーえ。さっき転んで王子に助けてもらった時、王女ったらちょっと王子に体触れただけでぎゃあぎゃあ騒いでいたのに? へぇ~ぇ、手ぇ繋げるんですか」


「なに、なんなのロットー! お前いきなり意地悪になりすぎだぞ! 本投げたこと怒ってるなら謝りますごめんなさい! だから意地悪やめて!」


 意地悪なロットーに、フィニアはちょっと涙目になる。唯一の味方が敵になると、頼れる人のいないフィニアは心細いのだろう。どうしようもなくヘタレなのだ、この王女は。


「あーすいません、つい……だって王女いじめ……からかうと反応面白いから」


「お前なぁ!」


 ロットーはまた怒り出すフィニアを「まぁまぁ」と適当に宥め、話を先ほどの話題に戻す。


「王女はもっと異性に慣れないと……って、メイドさんたちにはいつも好き勝手されてるのに、なんで今更女性に触ると緊張するんですかねー」


 ロットーの何気ない疑問に、フィニアは「俺の世話してくれる召使さんって中堅の人かベテランさんばっかじゃん」と呟き答える。そういえばそうだったと、ロットーは納得した。


「コハクは若い人に手取り足取り着替えさせてもらってるのに、俺は何でか母さんと歳近い人ばっかりが周りに……いや、理由はわかるけどさ。さすがに母さんくらいの歳の人たち相手なら俺も緊張しないよ。むしろ一人で着替えとかしたいなーっていう心境になるし」


「なるほど。ということはあと二十年もしたら、王女は王子に余裕で触れられるようになるってことですね。なぁんだ、案外簡単に問題一つ解決しましたね」


「に、二十年……なげぇよ! 青春真っ盛り楽しい盛りの時期を無視して二十年後って、それ虚しいだろ! 全然問題解決してないから! もっと真面目に考えろって!」


「……王女のくせにわがままなんだから。身の程をわきまえてくださいよ、めんどくさいなホント」


「王女の癖に、って意味わかんない! 今のは俺がわがままなの?! ねぇ?!」


 フィニアは真面目なのか不真面目なのかわからないロットーにまたちょっと怒って詰め寄る。ロットーは「ちょ、寄るなよウザイなぁ」とひどい本音を呟きつつ、改めてフィニアへのアドバイスを考え始めた。


「あ、じゃあこういうのはどうでしょう?」


「な、なに?」


 急にまた張り切った様子になるロットーは、驚くフィニアにまたちょっと意地悪な笑みを向ける。ロットーは意地悪い笑顔はそのまま、至極真面目にこう言った。


「王子と一緒にお風呂入るんですよ!」


「はあぁ?」


 ロットーの突然な意味不明アドバイスに、フィニアは理解不能といった表情となる。当然の反応をするフィニアは、「な、なんでイシュとお風呂入るんだよ!」と照れて顔を紅くしながら言った。


「昔から裸の付き合いで親睦を深めるって言うじゃないですか。せっかく今は王子と同性の”女”なんだし、『女の子と一緒にお風呂入る』っていう全男の夢を一回叶えてきたらどうです?」


「な、ななな……馬鹿言うな! そんなことできるわけないだろ!」


 口ではそう否定するも、フィニアはロットーのアホとしか思えない発言に、無駄に想像力を掻き立てられてしまう。

 一度だけはっきりと見たイシュタルの白い肌と豊かな胸元が、また鮮明な映像で脳裏に蘇る。そしてロットーの悪魔の囁き、『お風呂』というワードがフィニアの脳内で彼女と結びつき……


「わあぁぁぁああぁぁぁぁダメダメそういうこと妄想すんのっ! ごめんなさいイシュぅうぅぅあぁあぁああぁぁ! 俺最低の人間ですごめんなさいいぃぃ!」


「あっはっは、王女鼻血出てますよ。いやらしいこと妄想して鼻血って、あんた漫画じゃないんだから」


 フィニアの一人大慌てな様子を楽しそうに眺めながら、しかしロットーは内心でちょっと困っていた。


(想像以上に王女は女性に慣れてないな……やっぱり無理矢理にでも接触させて、慣れてもらうしかないか)


 自分に利益のあることなら精一杯頑張るロットーは、鼻血垂らして慌てるフィニアにティッシュを投げつけながら、ちょっと彼女に対して荒治療を実行することを考えた。




 ◇◆◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ