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gloria  作者: ユズリ
前途多難過ぎる恋
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前途多難過ぎる恋 22

 血迷ったことを言い出すフィニアに、ロットーは焦った様子で「ちょっと王女、マジっすか」と突っ込む。だが本気でもうイシュタルに真実を言えないんじゃないかと思い始めているフィニアは、わりと真剣にそれを考えていた。


「だって本当に今更真実なんて言えないもん! 俺イシュのむ、胸とか見ちゃったし……っ!」


 その時の映像を脳内で思い出し、またわかりやすく顔を真っ赤にするフィニアを見て、ロットーは心底呆れる。しかしまぁ女性と付き合ったことがない年頃の男ならこの反応も当然かと、彼は溜息を吐いた。


「王女、純情なのはいいんですけどそんな一回胸見たくらいでいちいち顔真っ赤にしてちゃ女性となんて一生付き合えないですよ?」


「……う、うるさいな」


 呆れるロットーにどキツイ言葉を投げかけられ、フィニアは涙目でロットーを睨む。そしてふと気になる疑問が思い浮かんだ。


「ロットーって女性と付き合ったことあるのか?」


 なんだかそれは聞いてはいけない禁断の質問のような気がしたが、しかし好奇心でついフィニアは聞いてしまう。そして案の定フィニアはこの後ショックな現実を突きつけられる。


「そりゃありますよ」


 さも当然のようにそう答えるロットーに、フィニアは絶望した。彼だけは自分の味方だと思っていたのに、物凄い裏切りを受けた気分になったのだ。勝手に。


「こ、この裏切り者! なに勝手に彼女とか……そ、そんな……羨ましくなんかないんだからっ!」


「王女、涙凄いですよ。俺の良心がちょっとだけ痛むから泣かないでください。大体なんですか、裏切りって」


「う、うるさい! だって彼女って……やっぱりロットーは俺の味方じゃなかったんだぁうえぇぇぇぇん……」


「うわ、マジ泣きしないでくださいよ、ウザイなぁ」


 時々微妙にフィニアに冷たくなるロットーは、「俺だって男ですし、好きになった女性とは付き合いますよ」とちょっと突き放した言い方で言った。


「……じゃあさ、もしかして、あの……キスとかも」


「ありますけど」


 フィニアは無言でロットーに枕を投げつける。ロットーはスマートな動きで投げつけられた枕を避けた。


「もういい。ロットーは俺の敵だ。もうお前なんて彼女のとこにでもなんでも勝手に行けばいいよ!」


「落ち着いてくださいよ、王女。俺今は別に彼女いないし」


「でもまた彼女出来たら、ロットーは俺を捨てて彼女のとこに行っちゃうんだろ?! この薄情者!」


 フィニアは嫌がらせなのか何なのか、「どうせ俺のことは遊びだったんだ」とかのたまう。ロットーは「気持ち悪い事言うなって」と小声で抗議した。


「まぁ、いいでしょう。俺の恋愛の話は置いといて、今は王女のその女性への免疫の無さをどうするか考えないと」


 ロットーは真面目な顔で、「その免疫の無さは結構大問題ですからね」とフィニアに言う。フィニアは「じゃあどうすればいいんだ?」と、自分で考える前にまずロットーに聞いた。


「王女、まずそれを直しましょう。なんでもかんでもすぐ俺に聞こうとしないでください」


「えー!」


 不満顔のフィニアに、ロットーは彼女の一番悪い点を指摘する。


「俺にばっか頼るのはやめましょう、王女。俺に頼ってばかりいたら、王女が成長出来ません」


 フィニアの頭の中には『困ったときはロットーに相談』とマニュアルでもあるのか、頻繁に彼へ相談して頼るのだ。それにはフィニアも自覚があったが、しかし彼へ明確に相談しないとそれはそれで自分は失敗をやらかすということも理解していたり。


「でもロットー、誰かに相談ってやっぱり大切だよ。だって相談しないでほとんど俺の独断で暴走した結果が”これ”だよ?」


 フィニアはそう言って、男じゃ無いことを証明する自分の胸を両手でわし掴む。ロットーはちょっと納得してしまった自分が悔しかった。


「……わ、わかってますよ。王女が一人だとどんな突飛な行動に出て、何をしでかすかわかったもんじゃないってことは」


「な? だから俺もロットーに頼っちゃうんだよ」


「……はぁ」


 思わず深い溜息が出る。ロットーはひどく疲れた様子で、「わかりましたよ」と言った。


「もう少しだけ王女の面倒見ますよ、俺も。でも王女、少しは自分でも考える努力はしてくださいね。それで俺に絶対相談すること。これでいいですか?」


「うん、いいです!」


 元気に返事をするフィニアを見て、ロットーは「これでいいんかな」と疲れたように呟いた。


「それでロットー、さっきの話。早速どうすればいいか話し合おう」


「……王女の女性への免疫の無さの問題と、王子に『王女が本当は男』だってこと言うべきかどうかについての話ですよね?」


「あー、そうだっけ? うんそうそう、それ。どうしようか?」


 フィニアの適当な返事にまたちょっと怒りそうになるのを抑えて、ロットーは「免疫のことは一先ず置いといて、王女は王子に自分の真実を話す勇気はありますか?」と聞いた。


「だから無いって。なんか段々と言えない状況に追い詰められてるし」


「そうでした。んじゃあ……とりあえず王子の好きな男性のタイプとかリサーチしてみては?」


「へ? それ聞いてどうするの?」

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