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gloria  作者: ユズリ
彼と彼女の出会いのお話
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彼と彼女の出会いのお話 1

ちょっとだけガールズラブっぽいストーリーとなっていますが、基本的にノーマルなラブコメディです。

 彼女のことが好きだった。大好きで、愛していた。

 美人で強くて、だけどちょっと涙もろくて他人想いの彼女。周りには馬鹿だのひきこもりだの変態だのって言われて育った俺にも彼女は優しくて、俺はこんな心も顔も綺麗な女性がこの世にいたのかって本気で感動したんだ。それでもうどうしようもないくらいに愛しくなって、気づいたら俺は彼女を愛していた。

 出会いは無茶苦茶で、俺も彼女も全然普通じゃなかった。俺は男だけど女で、彼女はすっごい美人な女の人だけど男で、なんかあべこべだった。

 だけどそんな奇妙な俺たちがこうして出会えたのは、こんなこと言ったらまたロットーに笑いながら「馬鹿ですね」って言われるだろうけど、でも間違いなく俺は運命だと思う。俺たちが互いに普通じゃなかったことも全部含めて、これってきっと運命だったんだって、そう思うんだ。



「どれで、どうするのだ? フィニア、お前は最初の願い通り男に戻るのか?」


 青い魔人が俺に問う。俺は直ぐには答えられなかった。


「それとも」


 隣で赤い魔人も俺に問いかける。

 青と赤、二人の魔人の問いかけに俺は覚悟を決め、隣の彼女の手を強く握りしめながら搾り出すように声を発した。


「俺は……俺の願いは――」


 俺は魔人に願いを告げる。魔人は無表情に頷き、隣で彼女が小さく何かを呟く。頭の中がちょっと混乱していた俺には、そのとき彼女が何を言っていたのか理解出来なかった。

 青の魔人が何か呪文を唱える。俺と、そして彼女の周囲を青い光が包み込んだ。彼女が控えめな悲鳴をあげる。俺は咄嗟に、今の自分よりも背の高い彼女を抱きしめた。だいじょうぶ、って、そう彼女に囁いたけど聞こえたかな。


「よかろう、マスター・フィニア。お前の二つ目の願い、我ゴエティアの魔人が叶えようぞ」


 後悔はしないと思う。だって、彼女がいるから。




◇◆◇




 中央大陸と呼ばれるエドゥナー大陸の東の海に存在する小さな島国・アザレア国は、周囲を青い海に囲まれているためか長く争いとは無縁ののどかな場所だ。

 周囲が海に囲まれている為国は漁業が盛んで、自然豊かで平和な国のため観光客が多く訪れる。そして小さい国ゆえに資源が少ないが、海で取れる宝石品を輸出する道を確保してからは貿易も盛んになり、ここはそれなりに豊かな国だった。


 アザレア国は紅の国とも呼ばれている。それはこの国の王族は皆、鮮やかな桃色の髪と紅玉のような紅い眼が特徴となっているからだ。

 アザレアの王族の女性は皆、王族の血筋としての証で桃色の髪の毛と紅い目を持っている。男性に王族の血を持つものは存在しない。それは王家に代々『男が生まれると災いが起きる』という言い伝えがあるために、男の子供が産まれると災いを恐れて幼いうちに殺してしまうからだ。


 現在のアザレアの国王は、元・アザレアの貴族であったダイフ・ノーマン・シュエルツガ・アザレア5世。そして妻は今の国王と恋に落ちて結婚した、アザレア国の王家の血を引く桃色の巻き毛と深紅の瞳の優しい顔立ちの女性、カレラ・スティス・アザレア。恋に落ちてから結婚後現在の十数年まで変わらず仲のいいこ の二人の間には、まだ若い二人の娘がいた。

 長女で第一王女のフィニア・ロイメルナ・アザレア。今年で十八になる彼女はひどく病弱で、十四の時を境によく体調を崩すようになり、それ以来国の行事などで国民たちの前に姿を現すことがなくなった。

 次女で第二王女のコハク・シュエンナ・アザレア。姉と四つ違いの彼女は病弱な姉とは正反対に健康的で活発、国の行事で姿を見せる以外にも従者を連れて城下の街を元気よく歩く姿が頻繁に見受けられている。

 王家の血を引く二人の娘は、それぞれに母によく似た優しい顔立ちと桃色の髪、深紅の瞳が特徴的な王女たちだった。


 だが王家の一般的な認識で、真実と大きく違うことが約二つほどある。それは主に第一王女であるフィニア王女に関することだ。まず第一に彼女は全く病弱ではない。妹同様とても健康体だ。ではなぜそんな彼女が一般国民の間で病弱と噂され、そして皆の前に姿を現さないか。それは彼女に関するもう一つの真実が関係していた 。


 フィニア・ロイメルナ・アザレア、彼女は”彼女”ではなく”彼”だった。


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