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gloria  作者: ユズリ
不穏な影
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不穏な影 12


 イシュタルと話を終えたコハクは『自室まで付き添いする』と言うイシュタルの申し出を断って、一人夜空の下の散歩を継続していた。

 一方でイシュタルはというと、まだ何かを考える様子であったが、しかし一先ずは体を休めることにしたらしい。

 先ほど一人自室へと戻っていったイシュタルを見送ったコハクは、見送った後も終始何か悩む様子だったイシュタルのことがまだ少し気になっていた。


(王子も結婚に悩んでいる様子でしたわ……もしかして兄のこと、何か勘付いているのでは……?)


 兄が女性として王子と結婚することに賛成出来ないが、しかし自分はあまり口出し出来るような立場でも無いとコハクは思っている。

 それでも兄が自分の性別を偽り隠して、このまま王子と結婚するとなったら、それはあまりにも王子が気の毒でならない。だって王子の妻となる女性は、本当は男性であるのだから。


(いいえ、王子が気づいていなくとも……そもそもお兄様だって、本当に男性と結婚したいのかしら……? 国の為だとか、今更お兄様がそんなことを背負うつもりだったら……)


 散々今まで自由に生きてきた兄だ。今更に国の為に自分が犠牲に……などと考えているのだろうか? と、コハクは眉をしかめる。

 今回のことをきっかけにフィニアが『国の為に結婚する』とはっきりそう宣言したら、コハクはフィニアをもう一発ぶん殴るつもりでいた。


(この国のことは私に任せておけばいいのよ。お兄様が頑張らなくたって……そうよ、何のために私が今までいっぱい勉強してきたと思ってるのかしら)


 兄が本来はアザレア王家に存在してはいけない者であるとコハクが知った時、その日からコハクは幼いながらに国の為にと勉学によりいっそう励み、王族としてふさわしいたち振舞い方も努力して身につけてきた。

 ”姉”は表には出れない王女であるのだから、将来は自分がアザレアの王女として国内外で活動をしなくてはならないと、幼いながらにコハクはその責任の大きさを理解しながらも全て背負う覚悟をしたのだ。

 アザレアは豊かで安全な国だ。辺境の島国であるためか戦もほぼ無く、少々平和ボケしているところが心配ではあるが、この平和を長く築いていけるように努力するのが自分の役目であるとコハクは思う。


(お兄様は結界で物理的に国を守っていればいいわ。それ以外のことでは私が頑張るんだって……そう、決めてたんだから)


 自分には兄ほどの魔術の才能は無い。兄が大陸を沈めるほどの大きな力で国を守るのならば、自分は表に出れない兄の代わりに国の顔として外交などをに担っていこうと決めていたのだ。


(だから別にお兄様が無理して国の為に結婚とかしなくていいんだから~! そういうのは私に任せておけばいいのに……本当、お父様もお母様もなにを考えているの?!)


 ここ数日何度も何度も頭の中で繰り返した両親への文句をまたも繰り返す。そうしてふっくらとした頬を子どもっぽく膨らませながら早足で庭を歩いていた彼女だが、ふと足を止めた。

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