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転生の参 異世界での身の処し方

世界を巡り、謎を追いかけ、害獣を屠り、時には金儲け、時には人助け、時には悪働きと呼ばれることもあるが、世界を救う事もある。

そんな彼らを、人々は畏敬と恐怖をもってこう呼び習わす。

冒険者と。


「しかしコノ世界には冒険者ギルドは無かった」

「無いみたいだねぇ、困った困った」

仏頂面の竜人カレアシンの独白に、いつも笑みを浮かべて人をおちょくるのに命がけの草原の旅人(ランダーズ)女性である(ベア)子が合いの手を打つ。

この『ALL GATHERED』世界に転生してきた彼らが考えたのは、先ず『冒険者ギルドへ登録しよう』という、ありきたりな事であった。

しかし、いくつかの町や村を巡り、住人にも話を聞いたところ『なにそれ』『傭兵ギルドではないのか?』『商人とか、いろんな職人とかのギルドはあるけど…て言うか冒険者って何?』と言う反応が返ってきたのである。


「まさかとは思ったけど、まあ仕方ないわね。取り敢えず、どうする?どこかの職人に弟子入りでもして生産系のスキルを生かしてみる?」

小首を傾げて頬に人差し指を当てながらそう言う呉羽に、フンと鼻息も荒くカレアシンは応える。

「却下だ。まあ皆と相談しようぜ。おい、帰るぞ」

あの草原から少々移動した所にある町で、彼らの一団は狩った魔獣などの素材を売りつつ、情報収集を行っていたのである。

草原の見張り小屋には常に誰かしらを残し、更に転生してくる者が居る時の事を考えて監視を続けている。

これまでギルドメンバーの内、30人ほどが転生してきていた。

ゲーム時代、ギルドの定員は100名で、それ以上になると新規のギルドを立てて提携ギルドと言う形をとり拡大、そのグループをクランと呼び習わしていたが、このギルドは廃人こそ多かったがそこまでの人数は集まってはいなかった。

基本的に、あくまでもゲームと捉えていた他のギルドに所属しているメンバーなどは、ゲーム内ではソレこそ気軽に強盗(アイテム強奪)殺人(プレイヤーキル)などは当たり前といったプレイを行っており、ソレに相容れないものが集まってきたともいえる。

ゲーム内では公式にPKプレイヤーキルが認められていたため、ソレこそ相手の方がルールに則ったプレイだと言い張られてはどうしようもない。

それでも、仮想空間だからといってそんな倫理観の無い行動などは気に入らないと言う者たちの集団が、このギルドだったのである。

仮想とは言え、いやむしろ仮想だからこそ。

自分の生きたいように生きるべき、というのがそのギルドの根幹にあった。

けれど、他人に迷惑をかけてでも好き勝手に生きるというのとは違うという思いが強く、かくしてゲーム内でギルドは設立されたのであるが……。


「冒険者ギルドが無いなら作ればいいじゃない」

「お前は晋の恵帝か」

「いやあ」

「照れるな、意味わからん」


熊子がおどける様に言うのを軽く突っ込むカレアシンだった。

冒険者ギルドが無いならば、自分達で作ったらいいじゃないかとばかりに意気込んでみたが、結果として無理だった。


「流石にどこの馬の骨ともわからん奴らがギルド立てるとか言っても誰も食いつかないか」

「そりゃ既得権益とかあるだろうし。調べてみたけど厳しいねぇ、とある職人になろうと思ったら、その同職人ギルドに所属している親方の下で下働きから始めないといけないみたいだし、そこの下働きになるだけでもかなりのコネがいるみたいだね。流浪のウチらにゃ無理無理」


現実となったこの世界では、ゲーム時には誰でも出来た街中での露店営業すらままならない。

素材の売却すらも足元を見られるという、二進も三進も行かない状態である。


「まあ、食うには困らないから、特にどうこう言う気にはならんが……ウチは女が多いからなぁ……」


流民の扱いなど、元の世界においても酷いものだった。

ソレが中世レベルの倫理観の異世界においておや。


「自分たちの身は自分達で守らんとなぁ」


カレアシンはその見た目上、流石に町のチンピラ程度では突っかかってこられる事など無いが、他の面子はそうではない。

それに、ギルドメンバーのほとんど全てが見目麗しい姿をしているとなれば、男でも安心できない。

累積レベル的に、現状でも並みの盗賊団程度なら素手で無双出来る事が判明しているが、流石に隙を突かれたり寝込みを襲われたりしては些か拙かろうと思う。


「早いところ、社会的にそれなりの立場をつくらねえとなぁ」


年寄りの考えかもしれないが、社会的な基盤が元の世界の治安の良い日本と言う国とは大幅に違うのだ。

終戦直後の混乱期を、幼児体験とは言え持っているカレアシンの中の人としては、安全を講じるのに手を抜くという気は毛頭なかった。


「しゃーねえなぁ。おいアマクニ」

「何じゃ、トカゲ」

「トカゲ言うな。あのよ、お前さんなら判ると思うが、よ」


旧世界においての、戦後の混乱期。

要するに、法の秩序に守られていない時代の経験者であるならば、わかるはずと。


「…判るがよ、そこまで気にするこっちゃねえと思うがな?」


何しろ自分達は今でこそ低レベルで基礎能力はこの世界の住人より比較的高い程度だが、これまでに蓄積されてきた累積レベルにより、多くのスキルを身につけている。

その恩恵は計り知れず、生産系ならば素材さえ集めればスキル発動により体力の消費だけで製品が作れるし、体力系のものならば、未発動でも腕力や素早さに補正がかかる。

戦闘系の物などは特に顕著で、高熟練度のスキルならば、素手での魔獣退治すら容易いものであった。


「確かに俺らは強いさ。でもよぉ、魔法主体の連中はまだ魔法の杖も手に入れてねえし、俺らにしても安物の剣やら防具程度じゃ、限度ってもんがある」


それに何より、騙される、というのが一番恐ろしい。

この世界には魔法があるのだ。


「…考えてもみろや。100人単位で攻めてこられても、負けねえ自信はあるけどよ。魔法なり魔道具なり…でよ、一人でも拘束されて人質になったりしたら…」

「…むぅ、ソレは確かに拙いのう」


およそ手出しできるとは思えない。

この世界の傭兵たちならどうだろう。

今のところお目にかかったことは無いが、盗賊団が傭兵くずれの成れの果てという可能性を考慮すると、ろくでもない連中がいる可能性のほうが高い。

仲間の一人や二人が捕まったところで、『捕まった奴がマヌケ』として放置なのではないだろうか。

しかし、自分達にはソレが有効だ。

いや、有効だと知られた場合、どうなるか。

そこが最も懸念される点なのだ。


「…きっちり話し合う必要があるだろう?」

「そうじゃな。ワシもちーとばっかし気合入れて装備品を作るかね…」


アマクニが気合を入れて装備を作るなら、この世界の最高級品を超えたものが出来上がるだろう。

気楽に行こうと思っていたらしいドワーフに頭を下げて、カレアシンは暢気に前を歩く熊子らを見つめ、気を入れなおした。




見張り小屋に戻ると、他の地域で素材売却兼情報収集をしている者たちも戻ってきており、小屋の前で座り込んで雑談に興じていた。

そこに帰還したカレアシンらは、全員がそろっているのを確認して、先ほどのアマクニとの会話を基にした話し合いを始めた。


「そういうわけで、自衛手段を考えるわけだが、一番のネックは仲間が人質になった場合だ」

「そりゃー厳しいねぇ。ウチらじゃみんな武器捨てて降参しそう」


カレアシンの言葉を受けた熊子の後押しにより、周囲の者達もその危険性に気付いたようである。


「そうね、いくら私達がこの世界の元からの住人よりも個体能力が高くても、搦め手で来られると対処できないかもしれないわ」


副ギルドマスターであり、現在の仮代表でもある呉羽の同意も得られたことで、カレアシンはこう切り出した。


「俺達の誰かが捕らえられた、若しくは最悪討たれた場合だが。基本的に全力で奪還、及び報復を行う」


その言葉に周囲の皆はそりゃそうだとばかりに一様に頷く。

それを確認し、カレアシンは次の言葉を吐いた。


「ただし、人質となってしまった場合、相手との交渉はしない。金銭や物品での取引や駆け引きは一切無視だ。捕らえられた者がいて、取引を持ち出されたりした場合は、全力で相手をつぶす。それでその捕らえられた仲間が傷ついたとしてもだ」

「うわあ」


その場にいた者達が全員、元世界におけるとある物語を思い出していた。

後に冒険者ギルドとは争うな、と言われるに至る、『冒険者の地獄』の始まりであった。

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