1周目・第23話:やりなおし
「彼女たちが……世界を、見捨てた……」
アルドゥスは、偽りの魔王城の玉座の間で、膝から崩れ落ちていた。
「ええ、見捨てましたね。清々しいほどに」
マリオニスは、頭のコブをさすりながら、心底うんざりした顔で言った。
「まったく、最低最悪の人形どもでした。私の芸術はガン無視するわ、仲間は盾にするわ、挙句の果てに物理で殴ってくるわ……。観劇するこっちの身にもなってほしいですよ」
「アルドゥス」
真の魔王が、絶望する賢者に静かに告げた。
「お前の『1周目』の実験は、何も生まれず、ただ『不条理』に終わった。実に非効率だ」
「……」
アルドゥスは言葉も出ない。
「よって、これより世界の『治療』を開始する」
真の魔王が玉座に手をかざすと、城の外のアストラディア全土が、急速に本当の闇に包まれていくのが見えた。
大地は腐り、空は裂け、世界が「無」に帰っていく。
「ああ……ああ……!」
アルドゥスは、チート装備の付与が招いた最悪の結末を前に、血の涙を流した。
(ダメだ……! このままでは、この世界も、あの少女たちも、全てが『失敗』のまま終わってしまう!)
(あんな小娘どもに引っ掻き回された挙句、世界が闇に包まれるとか!こんなシュールな結末、認めてたまるか!)
アルドゥスは、最後の力を振り絞り、立ち上がった。
「魔王よ! わしはまだ、諦めんぞ!」
「……ほう?」
「お前の言う『治療』など認めん! わしはもう一度、賭ける!」
「おや、まだ諦めないんですか? あんな『心が無い』人形ども、何度やり直しても同じですよ。実験は失敗です」
「黙れ! ……いや、確かにお前の言う通りかもしれん!」
(え? 肯定した?)
「あの中二どもに、自発的に絆を育むことなど不可能だ!」
(そこまで言い切っちゃう!?)
アルドゥスは、自らの命そのものを魔力に変換し、神殿の床に巨大な魔法陣を描き始めた。
(こ、これは……!?)
マリオニスが、その術式が持つ意味に気づき、目を見開いた。
「時間遡行の禁呪……!? 正気ですか、アルドゥス! それを使えば、あなたの存在自体が……!」
「黙れ!」
アルドゥスは、急速に老いさらばえ、白髪が抜け落ち、肌が皺だらけになっていく激痛の中で叫んだ。
「わしは、最後の力を振り絞り、時間遡行の禁呪を詠唱する!」
(もう、わしのミスは繰り返さん!)
(安易な力ではない! 必要なのは『絆』!)
(だが、あの中二どもに、自発的に絆を育むことなど不可能だ!)
アルドゥスは、消えゆく意識の中で、最後の「願い」を禁呪に込めた。
(第23話 終)




