1周目・第18話:やっと壊せたと思ったら、仲間の方が地獄だった件!
舞、観月、恵、花音。
心が空っぽか、思考停止している4人の「不良品」に連続で幻術を不発させられたマリオニスは、もはや魔王の威厳を失い、玉座の前で頭を抱えていた。
「なんなんですかこの……このポンコツ人形どもは! 壊そうにも心が無い! 芸術が理解できてない!」
マリオニスは、最後の希望(?)を、戦場の隅で「障害物」として震えている少女、児島結衣に向けた。
(そうだ、あの子だ! あのフライパンの子だけは!)
マリオニスの観劇によれば、結衣だけは、チート装備に貢献度を奪われ、「自己無価値感」の心の枷が正常に機能していた。
(フフフ……やっと見つけましたよ。この舞台で唯一、まともな中二を!)
マリオニスは気力を振り絞り、最後の、そして最も得意な脚本を結衣に向けて発動させた。
「あなたの番です、付属品!」
「ひっ!?」
結衣の意識が、強制的に精神世界へと引きずり込まれる。
そこは真っ暗な空間で、仲間たちの幻影が結衣を指さして嘲笑っていた。
「道具に判断力を期待するな」
「付属品のくせに使えねー!」
「フライパン様のほうが本体です」
(さあ、どうです!)
マリオニスが、結衣の脳内に直接語りかける。
「お前は無価値だ! お前はただの、フライパンの付属品だ!」
その言葉は、結衣がこの世界に来てからずっと言われ続けてきた事実だった。
「うわあああん! やっぱりそうだ!」
結衣は、ついにその場で泣き崩れた。
「私なんていらないんだ! 私がいてもいなくても、誰も困らないんだ!」
(よし! やっと効いた!)
マリオニスは、ガッツポーズをした。
(こいつだけはまともな中2だ! 感受性が豊かだ! 素晴らしい絶望顔ですよ!)
ようやく脚本通りに壊れてくれる人形を見つけ、マリオニスは恍惚となる。
「さあ、フィナーレです! その無価値な魂ごと、消え去りなさ――」
マリオニスが結衣にとどめを刺そうとした、まさにその時。
ドガァァン!!
現実の玉座の間の扉が、再び蹴破られた。 幻術の外で待機していた他の4人が、しびれを切らして玉座の間に乗り込んできたのだ。
「え?」
マリオニスと、精神世界で泣きじゃくる結衣の意識が、現実の光景に引き戻される。
玉座の間には、結衣が泣き崩れている姿と、それを取り囲む、最悪に機嫌の悪い仲間たちがいた。
「まだ終わらないのか? 非効率だ」
「《叡智の書》によれば、ボス戦が長引いています。巻いてください」
「え……?」
結衣が、涙に濡れた顔で仲間たちを見上げる。
(私、こんなに苦しんでるのに……)
その期待を裏切るように、観月が、泣いている結衣の顔をスマホ(圏外)でカシャリと撮った。
「あ、結衣が泣いてる。マジウケる」
そして、花音は。
「紅茶のおかわりが欲しいですわ……」
仲間が目の前で泣いているのに、4人は全くの無関心だった。
結衣は、マリオニスの幻術という「第一波」と仲間たちの冷たい態度の「第二波」によって、深く絶望した。
「あ……あ……」
結衣は、もはや泣き声も出せず、ただ口をパクパクさせた。
一方、マリオニスは。
(……)
マリオニスは、目の前で繰り広げられる「本物のギスギス」に、言葉を失っていた。
(え? 仲間が泣いてるんですよ!? なのに『マジウケる』!? 『非効率』!?)
(なんなんですかこいつら! 私の芸術より、こいつらの日常の方がよっぽど地獄じゃないですか!)
マリオニスは、このギスギスしたパーティを相手にするのが、精神的に、もう限界だった。
「私の脚本がめちゃくちゃだ! なんなのこいつら!!」
マリオニスは、戦意を喪失しかけていた。
(第18話 終)




