1周目・第17話:お嬢様?!絶望の淵で、ティータイム始めないでくれる?
舞、観月、恵と、心が空っぽか思考停止している人形が3体続いた。
マリオニスのストレスは、もはや偽りの魔王の威厳を保てないレベルにまで達していた。
(なんなんですかこいつら! 脚本をガン無視にもほどがある!)
彼は、残る二人に視線を移す。
(四人目は……聖乃花音。心の枷は『恵まれた環境への罪悪感』……フフフ、これですよ! これ!)
マリオニスは、彼女たちがあっさり見捨てたノクス村の光景を思い出し、これぞ芸術だと確信した。
(今度こそ、完璧な絶望を見せて差し上げます!)
「あなたの罪を、悔い改める時間です聖乃花音!」
マリオニスは、玉座の間でただ静かに佇んでいた花音の意識を、精神世界へと引きずり込んだ。
「……ここは」
花音が飛ばされた先は、かつて彼女たちが見捨てた、あのノクス村だった。 疫病に苦しむ村人たちの幻影が、恨めしそうに花音を取り囲む。
「お前のせいだ! 聖女ぶって、私たちを見捨てた! この偽善者め!」
(さあ! 来ました!)
マリオニスは、この鉄板のシチュエーションに「これぞ様式美!」と打ち震えた。
(さあ、罪悪感に苛まれるがいい! あなたの善意は偽物だったと泣き叫びなさい!)
しかし、一周目の花音は、マリオニスの期待に応えなかった。
彼女は、恵に「非効率」と一蹴されて以来、「どうせ私が何かしても無駄」と、とっくに心が折れ、すでに無気力状態に陥っていた。
「ああ、またそういう感じですか……」
花音は、自分を罵倒する幻影の村人たちのど真ん中で、ふぅ、とため息をついた。
そして、おもむろに背負っていた荷物から、結衣がエリクサーを配るために使っていたティーセットを取り出した。
(え?)
マリオニスの動きが止まる。
花音は、幻術のど真ん中という絶好のロケーションで、慣れた手つきで見た目紅茶のエリクサーを淹れ始めた。
(……え? なんで? お茶会?)
マリオニスは、自分の芸術が背景として扱われていることに気づき、混乱した。
花音は、熱いエリクサーを一口すすると、苦しむ村人たちに背を向け、優雅に呟いた。
「どうせ私が何をしても、恵さんに『非効率』って言われるだけですし……。お先に休憩させていただきますわ」
「絶望しろよ!!」
マリオニスの絶叫が、精神世界に響き渡った。
(なんでくつろいでるんだ! メンタルが鋼なのか!? いや、こいつも心が折れすぎた結果、現実逃避してるだけだ!)
4人連続の不発。
マリオニスは、もはや自分の芸術センスがこの中学生たちに通用しないことを悟り、頭を抱えて玉座の間にうずくまった。
(第17話 終)




