1周目・第15話: 「劣等感」を突いたら「最強(勘違い)」で爆殺された
舞の心が折れないことに激しい苛立ちを覚えたマリオニスは、即座にターゲットを変更した。
(チッ! あのマニュアル女は後回しです!)
彼は、次に壊しやすそうな人形として、パーティの火力担当(?)である観月に狙いを定めた。
(データによれば、二人目は辰巳観月。心の枷は『優秀な姉への劣等感』。……フフフ、これは私の大好物ですよ!)
「次は、あなたです!」
マリオニスは、現実の玉座の間でキョロキョロしていた観月の意識を、強引に精神世界へ引きずり込んだ。
「うわっ、なにここ!?」
観月が飛ばされた先は、眩い光に包まれたステージの上。そして、目の前には、観月とは対照的に、完璧な容姿と溢れる才能で観衆を魅了する、一人の女性が立っていた。
観月のトラウマの根源――「完璧超人である姉」の幻影だった。
「観月。あなたは相変わらず、騒がしいだけね」
幻影の姉は、軽蔑したような冷たい目で観月を見下ろす。
「あなたはどうやっても私にはなれない。あなたは、私の劣化版よ」
(さあ、来た! このセリフ!)
マリオニスは、精神世界の片隅で最高の絶望シーンを待っていた。
(さあ、絶望しろ! あなたは偽物だと泣き叫びなさい!)
しかし、一周目の観月は、マリオニスの期待とは全く違う反応を見せた。
彼女は、MP無限チートで道中の敵を蹂躙してきたせいで「私、最強」と本気で勘違いしていたのだ。
「は? 偽物? 何言ってんの?」
「……え?」
マリオニスはフリーズした。
観月は、目の前の「完璧な姉」を、心底面倒くさそうに睨みつけた。
(あー、はいはい。またその説教ね。でもさぁ)
観月はオーブの魔力を、幻影に向かって高め始めた。
「てか、お姉ちゃん、MP無限じゃないっしょ?」
「は?」
今度は幻影の姉が、想定外の反論に目を見開く。
「私、今、MP無限チートで最強なんだけど? はい、論破!」
「なっ……!?」
幻影の姉は、妹の恐るべき成長に驚愕する間もなく消え去った。
観月が放った制御ゼロの超・大爆発魔法の直撃によって。
ズドドドドドドン!!!
幻影の姉は、「そんなバカな」という表情を作り切る間も無く、木っ端微塵に消滅した。
観月は、爆風でボサボサになった髪をかき上げ、満足そうに鼻を鳴らした。
「ふー、スッキリした。やっぱ私、最強だわ」
観月は、自力(?)で幻術を粉砕し、現実の玉座の間に意識を戻した。
「……」
玉座の間で、マリオニスは呆然と立ち尽くしていた。
(こいつ、劣等感どこいった!? チートで無双したせいで、逆に自己肯定感がバグってる!?)
(なんなんですかこの人形たち! 脚本通りに壊れてくれない!)
マリオニスは、悔しそうに地面を踏みつけた
(第15話 終)




