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1周目・第14話:「トラウマ抉り」を「バグ」と返されたんだが

玉座の間で、完璧な登場シーンをガン無視されたマリオニスは、ついにブチギレた。


「もういいです! 脚本シナリオ変更!」


彼は、このギスギスした人形たちを一体ずつ、確実に「壊す」ことに決めた。


「まずはあなたからですよ、琴平舞!」


マリオニスは、パーティで唯一まともな戦力であろう舞に狙いを定めた。


「あなたのその『完璧主義』、私の最高の舞台で、ズタズタに引き裂いて差し上げましょう!」


マリオニスが指を鳴らすと、舞の視界がぐにゃりと歪んだ。


「!?」


仲間たちの姿も、玉座の間も消え失せる。


気づけば、舞は見知らずの戦場で一人、血の匂いの中に立っていた。


二周目ほんぺんで彼女が体験した、「1周目で実際に起こった」悪夢の再現だった。


『ギャアアア!』


『助けて!』


観月や恵の幻影が、魔物の群れに蹂され、次々と倒れていく。


(来た! この絶望的な表情!)


マリオニスは、舞の精神世界を覗き込みながら、最高の演出に打ち震えた。


彼は、最も効果的なセリフを、舞の脳内に直接響かせる。


「 見ろ、琴平舞! お前の完璧な守りは破られた! お前は仲間一人守れない、不完全な盾だ!」


さあ、絶望しろ! 泣き叫べ!


マリオニスが期待に胸を膨ませた、次の瞬間。


「……は?」


幻術の中で、舞は心底面倒くさそうに、ゆっくりと振り返った。


その瞳は絶望に染まるどころか、冷え切った目でマリオニスの意識体を捉えていた。


「何を言っている?」


舞は、自分の足元で血を流す仲間の幻影たちを一瞥いちべつすると、興味を失ったように再びマリオニスに向き直った。


「私の盾は完璧だが?(物理)」


彼女は、自慢の《不壊の盾》をコンコンと指で叩く。傷一つない。


「仲間が倒れたのは、あいつらが勝手に動いて私の戦術マニュアルを乱したからだ。非効率だ」


「え?」


マリオニスの完璧な笑顔が、ピシリと固まった。


(いや、『非効率』じゃなくて! 感情・・はどこ!?)


(仲間が! 仲間が死んでるんですよ!? こいつ、仲間が死ぬことより、マニュアル違反の方が重いのか!?)


マリオニスは、この中二まいの思考が、自分の「芸術」を全く理解していないことに気づき、慌てて脚本シナリオを修正した。


(こ、こいつ、仲間はどうでもいいのか……! ならば!)


マリオニスは幻術を切り替える。今度は、魔王が放った必殺の一撃が、舞自身の《不壊の盾》を貫通し、彼女の腹部に致命傷を負わせる幻を見せた。


「どうです! これなら! お前の完璧な盾が破られた!」


「無駄だ」


舞は、自分の腹部に刺さった剣を、まるでホコリでも払うかのように掴んだ。


「《叡智の書》によれば、《不壊の盾》の防御力は計測不能カンストだ。それが破られるなど、マニュアルにない。よって、この幻術はバグだ」


「バ……!?」


「お前の幻術は《叡智の書(マニュアル)》の想定を超えていない」


舞は、幻影の剣を握りつぶすと、現実の玉座の間に意識を戻した。


彼女は幻術を「バグ」あるいは「非合理的なノイズ」として処理し、精神攻撃を「論破」ならぬ「論理無視」で突破したのだ。


「……」


玉座の間で、マリオニスは硬直していた。


(こいつ、仲間はどうでもいいし、自分はチートで無敵だと思い込んでる! 私の十八番・トラウマ抉りが全く効かない!)


「終わったか?」


舞が、面倒くさそうに盾を構え直す。


「ああもう! なんですかこの人形! 壊し甲斐がなさすぎる!」


(第14話 終)

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