1周目・第1話:しょっぱなから破綻しそうなパーティなんですが!
結論から言おう。
異世界召喚、それ自体は理不尽だがまあいい。
床が冷たい石造りであることや、目の前に胡散臭い爺さんが立っていることもテンプレだがまだ許せる。
最大の問題は――どういう人選(悪意)か、一緒に召喚された「残り四人」の素性が、絶望的に最悪だったという事実だ。
児島結衣。
中学2年生。
彼女は、この世で最も苦手な「完璧主義の体育会系(舞)」、「状況を理解せず一人だけワクワクしてる脳天気な構ってちゃん(観月)」、「圧の強いインテリクソ眼鏡(恵)」、そして「本物と書いてガチのお嬢様(花音)」――という、あまりにも濃すぎる4人に囲まれ、開始5秒で自己肯定感が地を掘り始めていた。
「――静粛に!!」
結衣が絶望の淵で硬直していると、ローブの爺さん――賢者アルドゥスが、床を杖で叩きつけた。
「勇者たちよ! よくぞお越しくださった!大都会 岡山の別々の学舎から最強の魂を集めるのは骨が折れたわい!」
「は? 岡山? 最強?」
構ってちゃんが、ピクニック気分で首を傾げた。
「てか、ここどこ? もしかして私、異世界転生ってやつ!? やった! 私が主役だ!」
「黙れ、この脳天気。」
体育会系が、観月を殺しそうな目で睨みつける。
「状況を分析しろ。私たちは誘拐されたんだ。爺さん、完璧に説明しろ。でなければ、お前を敵と見なす」
「ひぃっ!」
結衣が小さくビビる。
今度はインテリ眼鏡が、アルドゥスにタブレット(圏外)を突きつけた。
「非合理的です。私にはこの後、学習塾のオンライン講義が…。誘拐による逸失利益は、誰が補填してくれるのですか? まずは賠償責任の所在を明確にしてください」
(うわ、この二人、絶対関わりたくない……)
結衣の心の声は、誰にも届かない。
「あ、あの……」
お嬢様が、か細い声で恐る恐る手を挙げた。
「ここは、天国……なのでしょうか? それとも、地獄……? 私、何か悪いことを……」
「全員、黙れぃ!!」
アルドゥスが、ついにブチ切れて怒鳴り散らす。
(こいつら、本当に中2か!? もっと純粋に喜ばんか!)
「ええい、もうよい! 時間が無いのじゃ! お前たちの絆がどうとか、もう知らん!」
召喚した張本人が、開始早々「絆」を諦めた。
このパーティの未来は既に暗い。
アルドゥスはヤケクソになったように、神殿の奥から五つの武具(?)が乗った台車をガラガラと押してきた。
「魔王を倒せば、元の世界に帰してやる! 代わりに、お前たちの本質に合わせた最強のチート装備をくれてやる! これで文句あるまい!」
「チート?」
「帰れる?」
その言葉に、それまでバラバラだった4人(と結衣)の視線が、初めて一つになった。
「話が早くて助かります」(恵)
「完璧な取引だ」(舞)
「最強ならOK!」(観月)
(早く帰りたい……)(結衣・花音)
アルドゥスは、このギスギスした空気には気づかないフリをして、武具(?)を一つずつ配り始めた。
「まず、お前(舞)には《不壊の盾》!」
「お前(観月)には《魔力無限の宝玉》!」
「お前(恵)には《叡智の書》!」
「お前(花音)には《絶対魅了のリュート》!」
そして最後に、アルドゥスは結衣の前に立つと、心底申し訳なさそうな顔で――古びた、油汚れの目立つ「フライパン」を手渡した。
「……すまん。お前(結衣)からは『料理』の才能しか感じられんかった。これで我慢してくれ」
「え?」
主人公(仮)の自己肯定感が、異世界転移して早くもマイナスを振り切ろうとしていた。
(第1話 完)




