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第四十八話:放課後のファミレスから召喚されたら、敵だけが記憶持ちの2周目ハードモードだったので、絆の力で「偽りの凱旋」ごと覆しました!

魔王が消滅し、アストラディアから絶対的な「病巣」が切除された。


魔王城の頂上に現れた「帰還の羅針盤」に背を向け、5人は自らの意志でこの世界に「残る」ことを選択した。


1周目で「見捨てた」世界の責任を、2周目の「日常」として引き受けるために。


魔王という『外科医』がいなくなったこの世界を、今度は自分たちが『手当て』するために。


◇◇◇


「対魔王連合戦線」は、その役目を終え、「アストラディア復興連合」として再編された。


その中核には、もちろん彼女たちがいた。彼女たちが魔王との戦いの中で閃いた「革命」の種火は、今や大陸全土を巻き込む、復興の原動力となっていた。


【産業革命:鉱山都市ヴァルカン】


ヴァルカンの大工房は、24時間体制で稼働していた。


恵が持ち込んだ「ライン生産方式」とドーリンの「職人芸」は、当初こそ衝突したものの、今や完璧な融合を果たしていた。


「恵! お前の言う『規格化』は分かった! だが、この『複合装甲』の最終圧着だけは、わしのハンマーの『誤差ゼロ』でなければ無理だ!」


「上等よ、ドーリン! その『職人芸』こそが、このラインの最強の『ボトルネック』であり、最強の『品質保証クオリティ』よ! 全ライン、棟梁あなたの速度に最適化・・・させます!」


【衛生革命:ノクス村 / フォルトゥナ】


「はーい、皆さん、しっかり手を洗って! 結衣お姉ちゃんの特製スープが逃げちゃうよ!」


結衣、観月、花音、そしてリューナは、魔王が残した《黒い腐敗》の残滓が残る地域を回っていた。


結衣の「公衆衛生」の知識が煮沸消毒や手洗いの習慣を根付かせ、花音の《浄化のテラ・キュア》が大地そのものを癒やしていく。


「結衣さんの『知識』と、花音さんの『浄化』。そして、観月さんの『太陽』。これが、アストラディアの新しい『常識』になる」


リューナは、子供たちと共に温かいスープを受け取りながら、微笑んでいた。


【交通革命 / 新体制構築:全土】


「こちら舞。シルヴィア、聞こえるか」


「感度良好だ、舞。『アース』弐号機、今、フォルトゥナ上空に到達した」


舞は自ら『アースシールド・ストライカー』のテストパイロットとなり、大陸全土を飛び回っていた。


陸路で数週間かかっていた都市間を、わずか数時間で結ぶ「交通革命」は、物理的な距離だけでなく、種族間の「心の壁」をも打ち破っていった。


「私たちのやることは、『治療』じゃない」


連合本部の作戦室で、恵は新たなアストラディアの地図を見つめながら言った。


「私たちの『革命』は、この世界を『カイゼン』し続けること。立ち止まらない『日常ミクロ』を、みんなで作っていくことよ」


◇◇◇


彼女たちが「カイゼン革命」に着手してから、十数年の歳月が流れた。


魔王が「停滞」と断じた世界は、もうどこにもない。人々は自らの意志で「ミクロな正義」を積み重ね、世界マクロを前進させ続けていた。


「……うん。もう、大丈夫だね」


連合本部の作戦室で、すっかり大人になった結衣が、仲間たちに微笑みかけた。


「帰還の羅針盤」が、今、彼女たちの手の中にある。アストラディアでの「責任」は、確かに果たされたのだ。


「それじゃあ、岡山に……」


結衣が羅針盤に手を伸ばしかけた、まさにその瞬間。


「待って」


恵が、作戦室のメインコンソール(《応用科学》で構築したアストラディア全土の監視システム)を睨みつけていた。


「どうしたの、恵?」


「……『カイゼン』は、まだ終わっていなかったわ。この世界のシステムに、最後の『ノイズ』が残ってる」


恵がモニターを拡大する。そこには、アストラディアの辺境、誰にも知られぬ瓦礫の山が映し出されていた。


「この魔力パターン……! まさか、生きていたなんて」


「この歪み……! マリオニス!?」


◇◇◇


……その、光に満ちた世界の片隅。


辺境の瓦礫がれきの山で、"人形遣い"マリオニスが、古びた「召喚陣」を前に恍惚こうこつとした表情を浮かべていた。


彼は魔王城での決戦に参加せず、生き延びていたのだ。


彼は、2周目の「陳腐なハッピーエンド」をつまらないと断じ、新たな「脚本シナリオ」を始めようとしていた。


「(アルドゥスは、『絆』を与えて成功した。ならば、私は、そのを試してみよう)」


「『絆』を持たず、『安易なチート』だけを与えられた人間にんぎょうは……」


「果たして、どれほど滑稽かっけいに、無様ぶざまに、壊れてくれるのでしょうね?」


彼が召喚陣に魔力を注ぎ、あの「1周目」の物語を再び始めようとした、その時。


ゴゴゴゴゴ……!


凄まじい風圧と共に、上空から『アースシールド・ストライカー』の最終量産型が、マリオニスの眼前に着陸した。


「なっ……!?」


タラップが開き、そこから降り立った5人の姿に、マリオニスは絶句した。


十数年の時を経て、成熟した「英雄」の顔つきになった5人が、マリオニスを冷ややかに見下ろしていた。


「久しぶりね、マリオニス」


恵が、アストラディアの未来を賭けた最後の「バグ(・・)」を睨みつけた。


「……フン。ここまで来るとは。ですが、無駄ですよ!」


マリオニスは、最後の「芸術トラウマ」を仕掛けた。


「さあ、思い出すがいい! お前たちの脆い『心の枷』を!」


彼は、まず舞に向かって「完璧主義の限界」の幻影を見せた。


「……無駄よ」


舞は、幻影を一蹴した。「私の『完璧』は、十数年の『カイゼン』を経て、このアストラディア全土に実装・・・済みだ。あなたの『脚本ノイズ』が入る余地はない」


マリオニスは、次に観月に「姉への劣等感」を突きつけた。


「あはは!」


観月は、幻影を見て大笑いした。「私、この世界アストラディアの『太陽』って呼ばれてるんですけど? 今さら、誰かと比べる必要ある?」


「(馬鹿な!? 私の『芸術』が!)」


焦ったマリオニスは、恵に「ポンコツ」の屈辱を、花音に「偽善」の罪悪感を、結衣に「付属品」の無価値感を同時に叩きつけた。


だが、


「合理的な『失敗データ』は、全て『カイゼン』の糧よ」


「私の歌は『癒やし』ではなく、復興の『力』になりましたわ」


「私は『付属品』なんかじゃない。この世界の『衛生革命』を担当した、児島結衣だから」


十数年の時を経て、精神的に成熟しきった彼女たちに、もはや「心の枷」は存在しなかった。


(う、うそだ……! 壊れない! 全然、壊れないじゃないか!)


マリオニスは、自らの「芸術」が完全に通用しない現実に、プライドを粉々に砕かれた。


「つまらない! つまらない! お前たちのような『完成品』は、私の『作品』ではない!」


マリオニスは、召喚陣の魔力を暴走させ、5人ごと全てを破壊しようとした。


「あなたの『脚本シナリオ』は、もう終わりよ」


恵が、冷静に宣告した。


舞の《ガーディアンフィールド》と花音の《アースシールド》が、召喚陣の暴走を完璧に封じ込める。


「マリオニス」


結衣は、1周目の悲劇と2周目の絆、その全てに決着をつけるため、最後の「手当て」を宣告した。


「あなたの『歪み(びょうき)』も、私たちがここで、完全に『治療』する!」


観月の《私が太陽!》が、結衣の《神の恩寵》の力を最大まで引き上げる。


アストラディアのことわりそのものを「浄化」する純粋な光の奔流が、マリオニスと、彼が起動させた「1周目の召喚陣」を包み込んだ。


「ああ……! 私の芸術せかいが……! 陳腐なハッピーエンドに……上書き、される……!」


マリオニスは、自らが最も忌み嫌った「絆」の光の中で、召喚陣ごと、今度こそ完全に消滅した。


アストラディアから、全ての「歪み」と「ループの可能性」が消え去った瞬間だった。


◇◇◇


……キィィィィィン。


耳鳴りのような甲高い音が響き渡り、温かい日差しと、コーヒーの香り、そしてフライドポテトの匂いが、彼女たちを包んだ。


「――だから、費用対効果コストパフォーマンスが悪すぎるって言ってるの」


その声に、結衣はハッと顔を上げた。


目の前には、タブレット端末の為替チャートを睨む、咲良恵の横顔があった。


(……帰ってきたんだ)


アストラディアで過ごした、あの十数年にわたる激動の日々。


その全ての記憶を持ったまま、彼女たちは、旅立つ直前の、あの放課後のファミレスに戻ってきていた。


「はいはい、ストップ! 恵、ちょっと厳しすぎだって!」


太陽のように明るい辰巳観月が、二人の間に割って入る。


完璧パーフェクトとは言えないな」


窓際で英単語帳をめくっていた琴平舞が、ふっと口元を緩めた。


「ふふ、皆さん、結衣さんのことが大切なのですね」


聖乃花音が、優雅な所作でロイヤルミルクティーをすすっていた。


かけがえのない仲間たち。


この、ささやかで、大切な日常。


結衣は、目の前にいる4人の顔を、一人ひとり、ゆっくりと見渡した。


「……ふふっ」


結衣は、思わず笑ってしまった。


「ねえ、もしさ」


結衣が、ふとそんなことを口にした。


「もし私たちが、異世界とかに行ったらさ……どうなるんだろうね?」


「なにそれ、ラノベみたい!」


観月が目を輝かせる。


「私は風の魔法がいいわね!」 恵が真顔で答える。


「私は……みんなを守れるようなジョブがいい」 舞が呟く。


「私は、歌で皆さんを癒やしたいですわ」 花音が微笑む。


他愛もない、いつもの放課後の会話。


結衣は、心からの笑顔で、かけがえのない仲間たちを見つめ、言った。


「きっと、私たち5人なら、どこへ行ったって、大丈夫だよね!」


5人の笑い声が、岡山の放課後の空に、いつまでも、いつまでも響いていた。


(二周目 完)

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