もぐらの灯
「お兄ちゃん、いよいよだね」
「そうだね」
「わくわくするね」
「そうだね」
雲一つない青い空
ぼくの瞳の奥の奥
ギラギラとした太陽だ
「あぁ~、私の息子たち」
「お母さん…」
「頑張っておいでよ」
「うん、頑張ってくるよ」
今日はもぐらの成人式
大きくなるための大事な日
地中に眠る宝探し
「いいかい、宝を見つけたら必ず戻って来るんだよ」
「うん、分かってるよ」
「必ず戻って来るんだよ」
「うん、ありがとう、お母さん」
「これをお前たちに渡しておかないと…」
ゴソゴソとするお母さん
キラキラとしたライト2本
頭につけるライト2本
「いいかい、これを頭につけて宝を探すんだ」
「これは光?」
「そうだよ、暗闇に入っても光があれば怖くないだろ」
「ありがとう、お母さん」
「必ず戻って来るよ、母さん」
ライトをつけたぼくと兄
地下へ構えたぼくと兄
腹を決めたお母さん
「お兄ちゃん、地上で会おうね」
「そうだね、必ず会おう」
「行っておいで、愛する息子たち」
地下へ潜ったぼくと兄
ライトが照らすぼくの道
土から土をかき分ける
「とにかく土を掘らないと…」
「掘って帰らないと…」
ザクザクザクと掘り進む
バキバキバキと掘り進む
ゴリゴリゴリと掘り進む
「頑張らないと…」
ザクザクザクと掘り進む
バキバキバキと掘り進む
バリっと折れた希望の灯
「あれっ、ライトが…」
「お母さん、ライトが…」
雲一つない土の中
ぼくの瞳の奥の奥
ギラギラとした太陽だ
「必ず戻るんだ」
「頑張るんだ!!」
ザクザクザクと掘り進む
バキバキバキと掘り進む
瞳が照らすぼくの道
「頑張って、お母さんに会うんだ」
「お兄ちゃんと笑うんだ」
ザクザクザクと掘り進む
バキバキバキと掘り進む
ボロッとこぼれた希望の灯
「ここはほこら…」
「何で土の中にほこらが…」
「息子よ…」
「えっ、あなたは誰ですか?」
杖をついたおばあさん
毛の生えてないおばあさん
息子を愛するおばあさん
「よくここまで来たのぅ」
「あっ、ありがとうございます…」
「お前にこれをやらないと」
「これはライト?」
「そうじゃ、ライトが壊れていただろう?」
「はっ、はい」
「このライトを点けて掘り進めるんじゃ」
「わっ、わかりました!!」
ザクザクザクと掘り進む
バキバキバキと掘り進む
ライトが照らすぼくの道
「不思議と怖くない」
「光があると怖くない!!」
ザクザクザクと掘り進む
バキバキバキと掘り進む
キラキラキラと掘り進む
「うん!?何か光が見える?」
「もしかして、宝?」
金色に輝く財宝だ
名前のない財宝だ
ぼくのための財宝だ
「嬉しい…」
「持って帰ろう」
金色の
腕輪、王冠、ネックレス
ぼくにスッポリおさまった
「よしっ!!帰るぞ!!」
ザクザクザクと掘り進む
バキバキバキと掘り進む
ゴリゴリゴリと掘り進む
ザクザクザクと掘り進む
バキバキバキと掘り進む
ポロっと見えた地上の灯
「ここは地上…!?」
「私の息子!?」
「遅いじゃないか、待ってたぞ!!」
「お母さん、お兄ちゃん…」
「よく帰ってきたね」
「頑張ったな」
「ありがとう、お母さん、お兄ちゃん…」
「宝はあったかい?」
「うん、あったよ」
金色に輝く財宝たち
ぼくのための財宝たち
太陽のような財宝たち
「太陽…」
「どうしたの?お母さん?」
「お前の名前は太陽なんだ」
「名前?」
「名前を呼べて嬉しいよ、太陽」
「お母さん…」
「僕がお兄ちゃんだよ、太陽」
「お兄ちゃん…」
「愛してる!!」
雲一つない青い空
ぼくの瞳の奥の奥
ギラギラとした太陽だ