08S.リトリン物語 前編
「パルパンティア第52部隊」は、隊員の近親者に「リトリン」が居る者が、多い部隊でした。この部隊最強と、言われたNO.4こと「念動力のイザベル」の母方の祖母が、リトリンでした。またNO.5のヘイリンの父方の叔母が、リトリンでした。最近では、近親者にリトリンが、居る家系は「特殊能力値が、高い個体が現れる」と言う、研究データーが、有りました。
そして今は、死亡したNO.1こと「隊長のファイアス」の母親も、リトリンでした。ファイアスは、屈強な大男でしたが、小型なリトリンの女性からでも、大柄な通常態が生まれる、典型的な例でした。そして彼の母親が、それでしたので、ファイアスの「火炎能力」は、極めて高いものでした。
隊長とライガン、それと副長のバリアンは、屈強な大男で有り、体力が桁違いに高い怪物でした。NO.3のウィンドルとNO.7のスピロンは、普通タイプの青年でした。この隊で言えば、差し詰め2人は、イケメン担当と、言えました。
ヘイリンの叔母は「リトリン」でした。彼女の叔母位の世代では、まだ偏見が残っており、叔母は父の妹でしたので、父の両親からは、娘だったので、可愛がられて育ちました。両親から見て娘が、それでしたので、外には出さずに、家の中で育ちました。その為、今も嫁がずに、実家の両親と共に、暮らしました。彼女が子供の頃は、この叔母から、とても可愛がられました。
そして「第52部隊」のNO.4こと「念動力のイザベル」の母方の祖母も「リトリン」でした。彼女の祖母の時代は、それに対する偏見が、強い時代でした。彼女の祖母は、貧しい家系の生まれだったので、生まれてから、それで有ると分かると、直ぐに人買いの奴隷商に、安価な値段で、買い取られました。
リトリンの「スレイパー(性奴隷)」は、言葉も話せず、生活作法も知らない、動物のような娘が、好まれました。その為、奴隷商に買い取られた、その娘は、檻に入れられて、動物として育ちました。食べ物も直接、手で掴んで食べました。
イザベルの祖母は、子供の頃は、動物として生きたのです。そして彼女が、年頃に成ると「リトリンのスレイパー」として、売りに出されました。イザベルの母方の祖父は、大金持ちの御曹司でした。子供の頃から大切に育てられ、高い教育も受けました。また「1人っ子」と言う、環境で育ったせいか、どちらかと言えば、内気で研究熱心な、息子でした。
祖父の年齢も、それなりに成った頃でした。祖父は、まだ所帯を持ちませんでした。祖父の両親も、それを心配して、早く所帯を持たそうとしましたが、本人にその気が無いのか、中々所帯を持ちませんでした。祖父は、或る日のことでした。仕事の関係で、遠出をした所で、初めて奴隷商人が、売りに出した「リトリンのスレイパー」を、見ました。
そのスレイパー達は、薄汚くてケダモノのように、檻の中に居ました。まだ若い娘ばかりの「縮小魔人」でした。ケダモノのような匂いがして、動物のような唸り声を、上げました。彼女達は言葉も話せず、ただ悲しそうな目で、祖父を見ました。祖父は、それを初めて見ると、強い衝撃を受けました。
祖父は、気が付くと必死に成り、リトリンのスレイパーの品定めを、しました。もう仕事処では、有りませんでした。何回も何回も、見比べて、品定めをしながら必死に、誰かを探して居るように、見えました。そしてそれを見て居た祖父に、奴隷商人の男が、話し掛けました。
その男は「そこのダンナ様、うちの商品は皆、良い子ばかりですよ。」と、言いました。「私が子供の頃に、買い取り育てた娘ばかりなので、みんな処女です。言葉は話せず、生活作法も、知りません。会話がしたければ、買ったダンナ様が、教えれば良いし、そのままケダモノが良ければ、ケダモノとして飼えば、良いのです。」と、言いました。
祖父は「その奴隷商人の言葉に、少し腹が立った。」と、言いました。しかし話しには聞きましたが、実際「リトリンのスレイパー」を、初めて見ると「凄いものを感じた」と、そのときの祖父が、話しました。何度も何度も、見比べた祖父に、奴隷商の男が、或る娘を勧めました。
「ダンナ様、あの子なんかどうですか。」と、勧められた、その指先には、少し小柄で薄汚れた「リトリンの少女」が、ひっそりと蹲って居ました。その少女の姿は、肌色は、普通でした。目がとても大きくて、キリっとしました。瞳の色は黒く、唇の形が、ふっくらでした。髪色は、亜麻色でした。そしてそのまま、長く伸ばしました。彼女は、小柄でしたが、年頃のリトリンの娘特有のプックリとした、やや大きめの乳房でした。
奴隷商人の男は、何の根拠が有り、そんなことを祖父に言ったのか、良く分かりませんでしたが、次のようなことを、話しました。「ダンナ様、あの子はダンナ様に、良くお似合いですよ。私は、この商売が長いので、良く分かるのです。あの子は、ダンナ様に、買い取って貰う為に、ここに居るのです。」
「あの子は、貧しい家に生まれて〝リトリン″だったので、親に売られて、私が買い取りました。あの子の目を見て下さい。あの子は、教育すれば大層、利口な娘に、変わります。あの子を救うことが出来るのは、ダンナ様だけですよ。」と、言いました。
またこうも、言いました。「私は商売柄、良く分かるのです。リトリンと言っても、私達と同じ、魔人類の娘なので、良く買い手のダンナ様が、ここの娘達の〝運命の人″の場合が、有ります。そうゆう場合は大概、ダンナ様のような反応を、するものなのです。」と、言いました。
そして、この奴隷商人の男は「その相手を、見極める才能が有る。」と、言いました。祖父は、後で思いました。「この奴隷商人の言葉は、正しかった」自分は初めて、それを見たが「自分は、多分〝リトリンのスレイパー″が、大好きだったのかも知れない。」と、思いました。
祖父は、あの奴隷商人のお勧めの「リトリンの少女」の値段と、いつ頃まで此処に、滞在して居るのかを、詳しく聞くと、奴隷商人の名刺を貰いました。そして祖父は、もう一度あの子の顔を見ました。確かに祖父の好きなタイプの娘でした。そしてその日は、それで帰りました。
祖父は、家に帰ると取り分け「冷静に成ろう」と、心掛けました。高い買い物に成るので、慎重でした。もの珍しさも有り、自分は初めて、あれを見てから「あの女奴隷が、欲しい」と、思いました。彼女が、買おうとした祖父のことを、どう思って居るのか、奴隷娘の気持ち等は、全く考えませんでした。
自分が欲しい物が売って居た。売って居るから、買えば良かったのです。買ったからと言って、それが問題に成るような、時代や世界では、有りませんでした。ここは、魔人類の世界で有り、この世界には「スレイパー」が居て、それが売られて居ました。売買されたのです。それでも祖父は「3日間悩んだ。」と、言いました。
値段が高いからではなく「人型の生き物」でしたので、扱いに慣れて居ないのです。「飼って病気に成り、死んだりしたら、どうしようか。」とか、そんなことばかりを、考えました。祖父は、迷ったときは、買わない主義でしたが、今回ばかりは「そうは、往かなかった。」と、言いました。