04S.リトリンのナタリア
「パルパンティア第52部隊」は、隊長を含めた、隊員3名を失い、本国からの補充も無いままに「シナール第38部隊」との決戦を、控えました。部隊の副長バリアンは、メンバー全員を集めると、10番目の戦士で有る「ナタリア」を、招集しました。
ナタリアは、特殊能力を持つ「リトリン」でした。リトリンとは「ホモサピレ」の、特殊形態と考えられ、8:2の割合で、圧倒的に女子に多く現れました。男子も存在するようですが、余り見掛けることが、有りませんでした。その特殊形態の呼び名を「リトリン」或いは「スモーリィ」と、呼ばれました。
その「リトリン」とは、成人女性の身体を、そのまま0.9倍から0.8倍位に、縮小したような姿でした。「ゼビスの人類」で言う処の、差し詰め小人のような存在でした。しかし小人ではなく「縮小魔人」とでも言うべき存在でした。仮に身長が156㎝で、体重が40㎏の成人女性が、居るとすると、それを「リトリン」に当て嵌めると、身長が125㎝と成り、体重が32㎏の「リトリン」の女性に、成りました。
このリトリンの「ナタリア」は、実に優秀な「戦闘コマンデス」でした。この者が、この隊に居ることに依り、様々なケースを想定した「独自の戦略」が、組み立てられました。その戦略とは「タイム・リトア(時間遡行)」を、使ったものでした。一般的に言えば「タイム・トラベル」のことでした。
この「リトリンのタイム・リトア」は、そんなに大昔までは、遡っては、行けませんでした。しかし数年前位でしたら、比較的楽に、行くことが出来ました。彼女が居る限り何回でも、同じ場所の同じ人物を、救い出すことが出来ました。この能力は、特に「リトリンの女性のみ」が、多く持ちました。
「リトリン」とは、何者なのでしょうか。それは「ホモサピレ」の中から、数百人に1人の割合で、生まれました。彼女達は、何故「タイム・リトア」が、出来るのか。「身体の大きさが、関係して居る」と言う説も、有りました。しかしその理由は、誰にも分かりませんでした。昔は、リトリンが生まれた家庭は、リトリンを恐れ、忌み嫌い捨てたり、家の中に閉じ込めたりして、外に出さずに生涯、家の中で生活させました。
「リトリン」は、身体が小さいのですが、意外に賢くて、綺麗な娘に成る者が、多く居ました。一般的な風潮では、リトリンは「奇形の一種」と、見られました。その為、昔は生まれると、捨てられたり、人身売買されたりして、不幸な人生を送る娘が、多く居ました。特に一時期リトリンの女性は、小柄ですが成長すると、美しくグラマーな女体に、成長する者が多い為「スレイパー(性奴隷)」としての、需要が高まったときが、有りました。
貧しい一般家庭で生まれると、高値で引き取られて買い手は、愚かで動物のような、リトリンの娘が喜ばれました。その為、買い取られると言葉も教えずに、生活作法も教えないで、腹が減ると動物のように手で掴んで、食事をするリトリンの娘が、当時多く、見られました。
言葉を教えたり、生活の作法を教えたりするのは、買い手の自由でした。その為リトリンのスレイパーは、買い手次第で、その後の人生が、大きく変わりました。例えば、動物のような、それとしての生涯を送るか、または言葉を教えて貰い、魔人類の1人として、生きられるかでした。
因みに、リトリンが生んだ子供は、100%リトリンが、生まれる訳ではなく、通常体が多く、生まれました。今では、リトリンの女性は美しくて、賢いと言うことが、広く知られるように、成ったので現在では、偏見も無くなり「ホモサピレ」の特殊形態として、見なされました。
そのリトリンの戦士で有るNO.10が「パルパンティア第52部隊」に、現れたのです。イザベルは、ナタリアとは仲が良かったので、軽く挨拶しました。ナタリアは、身体が小さいことも有り、格闘術が苦手でした。その代わりに銃火器の扱いには、手慣れました。
彼女の容姿は、小柄で肌色が白い、若い娘でした。茶髪で長くて、綺麗な直毛でした。瞳の色も茶色で、長い睫毛でした。唇の色はオレンジ色で有り、リトリンの成人女性特有の、美しい容姿でした。そしてグラマーでした。
副長のバリアンは、作戦の概要を語りました。その内容とは「ナタリアが、タイム・リトアをして、死亡時間の新しい順に、隊員達を救って行き、最後に隊長を救ったら、現在まで戻り、一気に敵軍を殲滅する。」と言う、ものでした。
この作戦の「要」で有る、ナタリアの警護を、最優先にする為に、第52部隊の「リガード(後衛)」は、彼女を取り巻く陣形としました。副長のNO.6バリアンとNO.8のジョスリンは、防御バリアを本隊に、二重に張り巡らして、防御態勢を強固にして、治癒の達人NO.9のグラシアは、彼女付きとしました。そしてジョスリンとグラシアは、剣技の達人でも有るので、彼女の専属護衛としました。
またナタリアは、銃火器の扱いに長けて居るので、NO.5のヘイリンと共に、長距離支援攻撃担当としました。そして実行部隊がNO.4の念動力のイザベルとNO.6副長のバリアン、それとNO.7の離脱のスピロンが、救出担当でした。スピロンは、移動速度が速い為、実行部隊の2人が、暴れて居るときに、スピロンが高速移動をして、ウィンドルを救出すると言う、作戦でした。
副長のバリアンは、ウィンドル死亡時の状況を、イザベルの報告により、かなり詳細に、把握しました。その為、今回の救出作戦は「比較的、楽な作戦で有る。」と、考えました。
NO.3「烈風撃のウィンドル」を、襲撃した「シナール第38部隊」の精鋭は3人組で、男2人に、女が1人のチームでした。メインの襲撃者は2人で、全身を強固な金属の鎧で、武装しました。その為、ウィンドルの烈風撃が、無効と成り、苦戦しました。そして最後に、追い詰められ、惨殺されました。このときの居残りの者は、監視者で有り、銃火器を装備しました。何かのときの為に、銃撃準備をして居たと、思われました。
今回の作戦は、襲撃前にウィンドルを助け出して戻れば、何も問題が、有りませんでした。しかし第52部隊では「タクティス(T作戦)を実行時には、襲撃者を返り討ちにする。」と言うことを、常としました。この「タクティス」と言う呼び名は、タイム・リトアをして、死んだ仲間を救出するときの作戦を、呼ぶときの名称でした。
また今回救出することに成る、第52部隊の「烈風撃のウィンドル」は、同じ隊の所属で有る「念動力のイザベル」に取り、その未来に関わって来る、とても重要な人物に、成りました。