12S.パルパンティアの忌子
イザベルの祖母は昔「奇形の一種」として、蔑まれた「リトリンのスレイパー」でした。その「スレイパー(性奴隷)」が、生んだ娘が、イザベルの母でした。母の父親が、裕福な貴族の息子だったので、リトリンのそれで有る祖母を気に入り、買い取り産ませた娘が「イザベルの母」でした。
そしてイザベルの父は、パルパンティアでは「忌子」と、呼ばれる存在でした。それは「ダルタニアの魔人を、父親に持つ者」を、言いました。ここでは下界で有る「ダルタニアの魔人類とは、接触してはいけない。」と言う、決まりが有りました。下界のダルタニアにも「パルパンティアの魔人類には、干渉してはいけない。」と言う決まりが、有りました。
しかしそれは、ただの決まりで有り、禁を破ったからとして、死刑に成るようなことは、有りませんでした。ただ例えば、パルパンティアの近代兵器を使い、武力で下界のダルタニアに、戦争を仕掛けたり、或いは下界のダルタニアが、魔獣軍団を組織して、上界のパルパンティアの魔人類に、攻め込んだりしない限りでした。もし仮に、そんなことをした場合にのみ、厳罰が与えられました。その厳罰とは「存在の消滅」でした。それは、この世界からの「完全なる抹消」を、意味しました。
この「キューブィ」の六面体・内部世界を創った「全能の神」に、連なる者の名前を「右側神サタナス」と、言いました。この「キューブィ」の内部世界に、存在する全ての「知的生命体」は、その名前を知り、崇めました。「互いの世界には、干渉しては、いけない。」と言うのは、その御方の御命令でした。
その為パルパンティアの魔人類が、下界に降りると「サタナスの呪い」の発動により、6日の期日を過ぎると、魔獣に変わりました。その為、交配種の存在は、有りませんでした。しかし逆の場合が有りました。「パルパンティア」は、浮遊大陸なので、空を飛べないと、上陸は不可能でした。その為、翼を持つ魔獣人で有れば、上陸は可能でした。そして「ダルタニアの魔獣人」が、浮遊大陸に上陸しても、何かの生き物に、変わることは、有りませんでした。
主にパルパンティアに飛来する「ダルタニアの魔獣人」は、一部を除き、殆ど対象が無く、偶に上位魔人と、言われる「エンゼル・パピー」とか、淫魔で有る「インキュレスや、サキュレス」位しか、飛来しませんでした。その中で「淫魔の上位魔人」は、好奇心が強くて、飛行能力が高いので、比較的良く、浮遊大陸に来ました。
例えば「男型淫魔」が「パルパンティアの魔人類」の娘に忍び寄り、夜な夜な、寝所に入り込み、種付けをして娘が、妊娠すると言うケースが、偶に有りました。大概そうゆう娘は、夢の中で凌辱されましたが、実際には、生殖行為の経験が無く、心当たりが有りませんでした。そして、いつの間にか妊娠してしまい、止む無く出産してしまうケースが、殆どでした。その原因は、いつもインキュレスでした。
インキュレスの悪戯で、生まれた子供を、パルパンティアの魔人類は「忌子」と呼んで、迷惑がられました。娘の父親に取っては、甚だ不愉快な思いでした。ダルタニアでは、産まれた子供は、主として「母親の能力」を、受け継ぎました。その為インキュレスの子供は基本、淫魔の能力が子供に、引き継がれないのです。その為、至って平凡な「パルパンティアの魔人類」としての、生涯を歩む者が、多いようでした。
しかし淫魔には、異性を引き付ける能力が、高いので「忌子」には、美男や美女が、多く生まれました。そして偶に「淫魔の能力」を、何かの拍子に「発動する者」も、居ました。そうゆう意味に於いては「忌子」も、立派な「特殊能力保持者」と、言えました。
「パルパンティア第52部隊」のNO.4こと「念動力のイザベル」は、ダルタニアの「淫魔」の力を、潜在的に保有しました。彼女の父親は、インキュレスを父親に持つ「忌子」でした。実は彼女は、まだ誰にも言ったことが、有りませんが「淫魔の翼」を、持ちました。
イザベルの本名は「イザベル・ハガン」と、言いました。イザベルが名前で、ハガンが名字でした。ハガン家は「パルパンティア・ヤマトール」と言う、パルパンティアを構成する、共和国の1つでした。この国は、小型の浮遊大陸に在りヤマトールは、57の国から成り立ちました。その中の1つに「シモツケン」と言う、名前の国が在り、その国を支配した統治者の一族を「ウツノール」と、言いました。ハガン家は、この「ウツノール」家の分家でした。
「パルパンティア・ヤマトール」には、身分制度が有り、全部で「4つの階級」に、分かれました。支配者階級を「サムライガ」と言い、以下に「ノミンクス」「コウジンマル」「ショジンカイ」と、続きました。ハガン家は「ヤマトールの最上位階級」で有る「サムライガの身分」でした。
「イザベルの父」の母は「忌子」で有る、父を出産後は、何処にも嫁がず、また婿養子も貰わずに、そのまま実家に居ました。1人娘でしたので「ハガン家」は、危機に瀕しました。しかし幸い父の母の父が、長生きしたので「忌子」でした「孫の父」が、無事に成人した機会に、父に家督が、譲られました。このハガン家には、偶に「忌子」が、産まれました。
イザベルの母の名字は「オクボン」と言い、この「オクボン」家も「ウツノール」家の分家でした。その為ハガン家とは同族でした。身分も同じサムライガでした。このハガン家の「忌子」の当主の元へと嫁いだのが、彼女の母でした。今回のハガン家の危機を、同族でしたオクボン家が、救ったような形でした。
宿敵「シナール第38部隊」を、殲滅したので「パルパンティア第52部隊」に、新たな指令が、出されました。それは東部ダルタニア地方に現れた「右側神サタナス」の娘の「ドペル(分体)」との接触でした。このドペルは魔人類の為、パルパンティアの魔人類でも、接触が可能でした。しかしパルパンティア人が「ダルタニアの下界」に、降りると「サタナスの呪い」の発動により「魔獣化現象」が、起こりました。
「ダルタニアの上位魔人」に、変化出来れば、問題は無いのですが、大抵は下位魔獣に、変わりました。ダルタニアの下位魔獣とは、4カードとか、3カード辺りの魔獣を、言いました。魔獣名で言うと「コンドル・パピー」や「猛獣ザンバ」「メガンキィ」「スネイキス」「トルビン」「クロウス」等です。
第52部隊、全員で訪れるのは、危険だったので「家族にリトリン」が、居る隊員が、選ばれました。即ち「隊長のファイアス」「念動力のイザベル」「遠射撃のヘイリン」でした。NO.10の「リトリンのナタリア」は、貴重な特殊能力「タイム・リトア(時間遡行)」が、使えたので、大事を取り、実行部隊からは、外されました。変わって、第52部隊のNO.11でしたナタリアと同じ「リトリンのマクシア」が、選ばれました。彼女は、この選抜チームでは、貴重な「防御バリアと回復能力」を、持ちました。
マクシアの容姿は、肌の色が白い金髪でした。そして瞳の色が水色でした。髪は長く、身体が小さかったので、可愛い人形のように、見えました。口で呼吸をするように、口が少し、開き気味でした。危険な「ダルタニアの魔獣地帯」に入るには、少し心配でしたが、彼女も「歴戦の戦士」でしたので「問題は無い」と判断され、今回のチームに、配属されました。マクシアも銃火器系の操作に、手慣れました。
出発は3日後と成り、各自出発の準備に、入りました。移動は、小型飛行艇で出発して、東部ダルタニア地方の「バフォメトンの森」付近で降りて、陸路「ゴーレム使いの里」を、目指すと言う工程でした。「バフォメトンの森」付近は「獰猛な魔獣」が、出現しないので、着陸地点に選ばれました。
「ファイアス隊長」が、イザベルに、話しました。「私の母親が〝リトリン″だったので、私は常々〝リトリン″とは、何者なのかを、知りたかった。我々魔人類の中で、定期的に、数百人に1人の割合で生まれ、男よりも女の方が、圧倒的に多く生まれた。特殊能力値が高く、知能も高く、美しい容姿をして居る。だが我々よりも、0.9倍から0.8倍位の大きさしかなく、非力で支配され易い。もっともそれは女子だから仕方が無いのだが、何かの目的が有るから、我らの創造主様が、創ったと思うのだが私は、その理由を聞きたいのだ。」と隊長は、熱く語りました。
イザベルの母方の祖母が、リトリンでしたので「彼女も理由が有れば、聞いてみたい。」と、思いました。しかし彼女は「自分の父親の淫魔で有る祖父が、一体誰なのかを、知りたい。」と、思いました。幸い接触予定の「ドペルの娘」は、淫魔の統率者で有る「原初の魔神リーリス」の「ドペル(分体)」だったので「機会が有れば、尋ねたい。」と、思いました。
イザベルが「鹿島瑠璃」に、会うときの、持参予定の所持品の中には、父より預かった彼女の「淫魔の祖父」から、唯一の息子で有る父に、与えられた淫魔の「魔よけの紋章」と、言われるものの「レプリカ」を、持参する予定でした。それが唯一の祖父の手掛かりに、成りました。本物は「仄かな輝きを、放って居た」と、言われましたが、今では従来の輝きを失い、ただの物体としてのみ、残りました。