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人々が最も平和だった時代

作者: 小雨川蛙

 

 悪い魔女がいた。

 自分より美しいものを許さない魔女だった。

 彼女は魔法の鏡を使い、自分より美しい者が居ないかと問うた。

 すると、鏡は一人の少女を映し出した。

 それを聞いた魔女は嫉妬で怒り狂い少女に決して目覚めぬ眠りにつかせる呪いをかけた。


 それから数年。

 魔法の鏡は最も美しい者を問われる度に、問いを投げかけた魔女自身だと答えた。

 しかし、ある時になり、あの時と同じく一人の少女を映し出した。

 それを聞いた魔女は再び怒り狂い、一人目の少女と同じように決して目覚めぬ眠りにつかせる呪いをかけた。


 それから数年して、また魔女より美しい少女が生まれ、魔女は同じように呪いをかけた。


 それから数年して、また魔女より美しい少女が生まれ……。


 それから数年して………。


 魔女はやがて単純な事に気が付いた。

 新たな少女が生まれる度に自分の美しさが脅かされ続けるのだと。

 ならばと、魔女は少女達だけでなく国全体に呪いをかけて、国民を皆、眠らせてしまった。


 それから数十年の間、魔女はこの世界で最も美しい者であり続けた。

 老いていき、皺が出来、声がしゃがれ、そしてかつての美しさが見る影もなく醜悪になっても。

 何せ、この国には魔女しか居ないのだから。


 そして、ある日。

 魔女は遂に天寿を全うして永遠の眠りについた。

 それと同時に魔女のかけていた呪いはとけて、眠っていた人々は目を覚ました。

 彼らは雨風や草木に荒らされた自分達の国に面食らい、混乱をしていたがやがて長い年月をかけて元の姿へ戻してしまった。

 ・

 ・

 ・

 それから千年単位の時が流れ、歴史家たちは言う。

「何故、この時代だけ戦争がないのだ?」

「人間は争いながら発展してきた生物ではないのか?」

 この空白の時代は当時流行っていたと伝わるおとぎ話から取って『眠りの時代』と呼ばれている。

 それがただの事実を述べているのだと気づくその日まで歴史家たちは今日も頭を悩ませ続けている。

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