1.炎の舞闘家、敗北を知る
「ねえ、そこのイケメンさん。舞闘ない?」
黒の夜女舞闘衣装の女が男に声をかける。
「火傷するぞ」
「顔に似合わずキザなこというのね。さあ、おいで。」
男は名はリュウ。炎の舞闘家の彼は、単に火傷の忠告をしたつもりであった。
リュウは眉間に不快感を現し、紳士舞闘服の襟をただす。
リュウは炎の歩法を踏んだ。
リュウの周囲の地面が炎に包まれる。
それと同時に放送機から音楽が流れる。
女は電柱を両手でつかみ、逆上がりのように足を振り上げ両足で電柱の上部を掴む。
体を一瞬右に振りかぶり、左に回転しながら両手で電柱を掴む。
「柱竜巻」
女の体は電柱の周りを回転し、足は鞭のようにリュウを襲いかかる。
リュウは吹き飛ばされた。
最強の舞闘家を目指すと故郷を飛び出して3年、初めてのことであった。
リュウの歩法は周囲を焼き尽くす。
しかし、柱舞闘女は空中で踊るため、リュウの炎が届かないのであった。
柱舞闘女は回転を止め、蛇のように電柱に巻き付く。
電柱に背を向け、電柱を体の後ろで股と右手で掴み、退屈だと言わんばかりに伸びをする。
リュウは瞬時に立ち上がり、電柱を睨む。
右脚を大きく踏み込むと、右足の周りが強く燃える。
左脚を後ろに振りかぶる。
「火炎飛翔逆」
燃え上がる左足を先頭に、矢のように電柱へとリュウが翔ぶ。
リュウの左足が電柱に届きそうになった刹那、
柱舞闘女は両足を天に振り上げ、下ろす。
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リュウはすぐに起き上がった、つもりだった。
日は落ち辺りは暗くなっている。
辺りを見渡し、柱舞闘家を探す。
そして、ようやく自分が敗北したのだと気づいた。
呆然となりリュウは膝を落とす。
リュウは自分の目から涙が出ていることさえ気づかなかった。
真っ赤な闘牛女舞闘晴着の女がリュウに近づく。
右手を差し伸べて言う。
「ひどい顔ね。イケメンさん。さっきの見てたわよ。もし良かったら、私とペアを組まない?」