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アドアドしい怨念 ~叔父さんと姪っ子の日常~

作者: 忌野希和

後書きに用語解説があります。

「怨念ってズルくない?」


「なんだよ藪から棒に。てかなんで居るんだよ」


 徹夜でゲームをして昼まで寝ていた俺が寝室を出ると、リビングに何故か姪っ子がいた。


 古いホラー映画のパッケージを手に持って憤慨している。

 俺が学生の頃に一世を風靡した、井戸に捨てられ系女子のリベンジ映画だ。


「たった一人の怨念でどうして沢山の人を呪い殺せるの?こういう魔法的なのって普通は等価交換じゃないの?」


「ああ、それを見たのか。ってまた人のリビングを勝手に漁ったのか」


 姪っ子に見せられないようなセンシティブなものがあったらどうするんだ。

 見られたのが発覚して兄貴に殺されるのは俺なんだぞ。


 まあそんなものをリビングに置いておくような迂闊な俺ではないが。


「こっちの漫画もそう。勇者に殺された聖女が怨霊になって……」


「うおおい!それは色々とアカンやつや。そのタブレットを叔父さんに返しなさい」


 書籍アプリ版だから海苔ガードがあって助かった。

 いや助かってない。


「一対一の交換なら分かるよ。でもこんな一人で大量に殺せるってバランスがおかしいよ。爆アドすぎてカードゲームならすぐ禁止になるよ。わたし知ってるんだから」


 まーたこいつは人のアカウントで勝手にネット対戦してるな。

 ちょっと前までカードゲームの何が面白いの?なんて馬鹿にしていたくせに。


「いやいや、カードゲームにだってコストの軽い単体除去だけでなく、重い全体除去があるじゃないか。つまり見合ったコストをかければ、一対多数でもおかしくないってことだ。映画で殺された超能力者の女も漫画の聖女も、それぞれの世界で有数の実力者だ。重コストに対応できるんだろう。一般人ならそりゃ一対一、二の交換になるだろうさ」


「ううむ、そういうものなのかな。やっぱりフィクションだから盛ってるのかな」


「ノンフィクションでも同じだぞ」


「えっ」


「一般人なら包丁で、海外なら銃の乱射、時の権力者なら核ミサイルのボタンぽちっとなで、怨霊の呪いに負けない被害が出るぞ」


「そう言われるとそうかも……時の権力者のアドやばいね」


 いやアドから離れなさいよ。

 姪っ子がゲーム脳過ぎて心配な件。


 向こうが勝手にやってきて、勝手に人のもので遊んでいるだけだ。

 だから決して俺のせいではない。

 尚この言い訳は兄貴には通用しない模様、泣けるぜ。


「何なら生きている人間が一番怖いまである。というわけだから、悠里も人に怨まれるようなことをするんじゃないぞ」


「はーい。叔父さんとは違うから大丈夫だよ」


「えっ俺って誰かに怨まれてるの?」


「あっそれでね、わたしが叔父さんちにいる理由だけど、今日から冬休みだからだよ」


「まじか」


 それは俺にとってアド損となるニュースであった。

 冬休みということは毎日姪っ子が遊びに来るので、俺はそれに付き合わされることになる。


 まあご飯や宿泊については、歩いて十五分の所にある俺の実家が面倒を見るから、そこまで負担ではないが……。


「ねーねー叔父さん、餃子カレー食べたい」


 そしていきなり外食のおねだりで追加のアド損である。

 でもまあ俺も久しぶりにソウルフードの餃子カレーを食べたいから、アドはイーブンと言わせてもらおう。


「しゃーないな、食いに行くか」


「やったー!」


 俺の返事を聞いて、花のような笑顔を咲かせる姪っ子。

 ふっふっふ、まだまだ子供よのう。


 なんだかんだ言っても、姪っ子の笑顔を見るとアドなんてどうでもよくなる叔父さんの俺であった。

【用語解説】

・アド

 アドバンテージの略。日本語で「優位性」の意味。カードゲームにおいて対戦相手より相対的に有利な状況を指す言葉。

・爆アド

 「爆発的なほどに大きなアドバンテージを得る」の略。

・アド損

 「アドバンテージを損する」の略。

・餃子カレー

 北海道の某外食チェーン店のメインメニュー。超美味い。好き。

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