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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第三章:二人の王女と諦観の月と再起の太陽
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第96話:ルナの覚悟

 メイドさんの早朝絶叫事件、事件?によって王城中にあっさりとルナが戻ってきたことが広まった。で、私はウトウトしているルナをどうにか起こそうとしたけど起きる気配が皆無だったからメイドさん、名前はクレア・サテリット、に頼んで今回の件の関係者の人たちをここに呼んでもらうことにした。


 それで集まってもらったんだけども、ここで問題が一つ。ルナが起きない。マジで起きない。


「フレアちゃん、ルナちゃんってもしかして夜通し寝てないのかしら?」

「え?まあ寝てないと言えば寝てないと思いますけど。私はちょっと寝てたので大丈夫ではあるんですけども」

「なら少し待とうかしらねえ」


 まあ、トリステラ様のその一言でルナが起きるまで待つことになったんだけどね。


「んー、ん」


 で、しばらく待っていたらルナが起きた。私の顔をしばらくボーっと見つめた後に、周りを見渡した。


「あ、すみません、フレア。押し倒す形になってしまって。って、あれ?皆様なんで…?」

「いや、ルナが戻ってきたから心配でトリステラ様たちは来てくれたんだよ?」


 私がルナの聞きたかったであろうことに答えると、ルナは目を擦りながら立ち上がった。上に乗っていたルナが立ち上がったことで動けるようになったから私も遅れて立ち上がった。その直後、トリステラ様はルナの方へと近づいて行った。


「ルナ」

「お母様、ええと、ごめんなさ、って、お母様!?」


 ルナが何か口にしようとしたところでトリステラ様はルナへと抱き着いた。


「ごめんなさい、ルナ。気づいてあげられなくて」

「お母様がなんで謝るのですか。謝る必要があるのは私なんですよ」

「私は貴方が魔女になっている可能性があるのにそれを見ないふりをしたの。私の子どもなのにね」


 そう語るトリステラ様の目には涙があった。私は少しルナの後ろにいるからルナの顔は見えない。ただ、ルナが抱き返したのだけは動きから分かった。


「少し、こうさせてください。お母様」

「ええ、いくらでもこうして頂戴。いくら甘えてもいいのよ」


 しばらくの間、ルナはトリステラ様に抱き着いていた。少しすすり泣くような声が耳に届く。


 トリステラ様はルナが失踪した後にルナが魔女になっている可能性について私に語ってくれた。いや、それ以前、魔女事変のときにも話そうとしていた感じがあった。ここらへんのことから考えるとトリステラ様はずっとルナのこれから先のことについても気づいてはいたんだと思う。最後には一人になってしまうことも。その事実をルナに突きつけようかきっと悩んだんだと思う。結果として、ルナは自分でその可能性に気づいて、一人で抱え込んじゃった。そして、孤独になる道を選んでしまったんだ。


 私がもしルナを連れ戻すことが出来なかったら、と考えるとキュッと心臓が締め付けられそうになる。私自身の気持ちもそうだけど、周りから距離をとってしまったルナはどうなってしまうのだろう。ルナは孤独に耐えられるのだろうか。私にはわからない。けれど、これがきっと正解だと思いたい。


 まあ、今度は私がルナを連れ戻した責任をどうにかしてとらないといけないかもしれないんだけどね。だって、私がやったことはルナが一人になってしまうまでの時間を引き延ばしただけだから。私や他の人達がいなくなってしまうまでは、少なくとも私は、私だけでもルナと一緒にいてあげないと。それが、私のすべきこと、責任だと思うから。そもそもの話、私が戻ってきて欲しいってのが先にあってそこにトリステラ様のお願いが重なったって感じだもん。私の想いでルナに戻ってきてもらった。ルナの気持ちを無視してね。なら、ルナのこれからについては私が責任を取らないといけないと思っている。


 そんな思考から戻ってきたときにはルナとトリステラ様は少し離れていて、トリステラ様がルナの頭を撫でていた。その目には、慈しみや母性のようなものが感じられた。と、まあその後も家族同士でのやり取りが続いた。


 そうしたやり取りが続いたあと、一人の女性が私達の方に進み出た。白髪に同じ色のシスター服を着こんでいるあたり、恐らく教会の関係者なのだろう。


「ルナ王女殿下、でよろしいですか?」

「はい、それで大丈夫ですよ」

「私はこの度新しく教会の教皇になりましたサラ・アルトーと申します。この度はルナ王女殿下への謝罪をさせていただきたくてここに参りました」

「謝罪、ですか…」


 ルナはその提案を聞いて小さく呟いた。教会としてメンツを立てに来たんだと思っているけれど、ルナはどう答えるんだろうか。ルナにとって教会は忌まわしい存在なのは間違いない。私としても許したいと思えるようなものではない。


「一応ルナ王女殿下を救出できないか模索はしていたのですが、辛い思いをさせるだけで終わってしまいました。私の派遣したシスターからの連絡が途絶えてしまって以降は接触を控えていましたので直接お会いするのが今になってしまいました」


 そう言ってサラさんは頭を下げた。それを見るルナの表情を窺うことはできない。 ルナはどうするのだろうか。少しの沈黙のあとルナは口を開いた。


「そうですか。ええと、貴方たちは穏健派であっていますか?」

「はい、その認識であっています」

「その節はありがとうございました。囚われていた時は少しだけですが救われました」

「それはよかったです。帰ってこなかったあの者達も報われるでしょう」


 そして、二人は話を続きを交わした後、ルナはまた少しだけ黙り込んでしまった。判断に少し迷っているようにも見える。


「…わかりました。貴方たちの謝罪を受け入れます」

「っ、そうですか、ありがとうございます」


 ルナの快諾の意を受けてサラさんは喜色を見せた。


「ただし、少し条件をつけさせてください」

「条件、ですか?」

「はい、できればこの場で終わらせるのではなく、公式の場で謝罪を受け入れる旨の発言をさせて欲しいのです。見せしめ、という意図があるわけではありませんからそこはご安心を。私としても教会をなくしてしまいたいという考えはありません」

「はあ、それはどのような意図でしょうか?」

「正確に言うと、謝罪を受け入れる、ということ自体はこの場で終わらせても大丈夫なのです。ただ、私が魔女になったことを公式の場で宣言する機会にしたい、というだけなんです」

「…私がいうのもなんですが、それをして大丈夫なのですか?」

「はい、懸念はわかりますよ。私が魔女になってしまったことはこの国にとって間違いなく劇毒ですから。だって、今まで魔女を迫害してたんですよ?この前の一件でだいぶマシになったと思いますが、それでも今までの考え方はそう簡単に変わらないでしょう。でも、だからこそです。私の宣言には意味があるんじゃないですか?」

「ええ、確かにあります。王女である貴方が運命の悪戯で魔女になったことを公表することはインパクトは大きいでしょう。それこそ、今までの考え方を揺るがすくらいには。私たちも少しずるいですが経典の解釈を利用してどうにか魔女への考え方に変化をもたらそうとしています。迫害がなくなりますように。けれども、それらの動きをすると、それこそ反発があまりにも大きい」

「そうですね。なら、私がそれを一旦こっちで受け入れてしまおうかと思ってるんですよ」「反発をですか?」

「そうですよ。下手に教会に流れるよりはいっそのこと私の方に流してしまった方が楽でしょう?」 


 その言葉のあと、その空間は静寂に包まれた。ルナのその言葉はこの国の変革の反動をすべて自分自身が受け入れる、という宣言だったから。


「ええと、ルナ。それはさすがに」


 私が耐えられなくなってルナの方へ駆け出しそうになりつつも声をかけるとルナは手を使って制してきて。


「フレア、心配はありがたく受け取っておきます。けれど、これは私、王族であり、魔女である私にしかできないことですから。それに、覚悟も出来ています」


 そう言ったルナは私の方へと振り返った。すると、ルナは私の目の前に来た。その顔はどこか覚悟を決めたといったもので。だけど、そこに何か別のものが隠れているような?一瞬だけ見えたんだけど気のせいなのかな?


「それもこれもフレアが助けてくれたおかげです。私を受け入れてくれたおかげなんです。私がここにいれるのはすべてフレアのおかげなんですよ」


 そう言ったルナは私を抱きしめてきた。ルナの方が身長が大きいから私が抱え込まれるようになってしまう。結果としてルナの胸元へと頭が来て顔を埋める形になってしまった。こんな状況なのになんてことをするんだ。顔が熱を持つのを感じてしまう。そんな私を知ってか知らずかルナは私の耳元へと口を寄せてきた。


「本当に感謝していますよ。本当に、本当に私にとってフレアは大切な人なんですから」


 そう言ったルナは私から少し離れて私の顔を見てきた。私の顔からは若干熱は引いてくれた。けれども、末端の耳までは抜けきってはいない感覚があった。


「あら、フレア。ふふ、可愛い人ですね」


 ギリギリ私に聞こえるか聞こえないかの声で私にそう呟いたルナはサラさんたちの方へと戻っていった。どうやら、先ほどの話の続きを詰めるらしい。けれど、私は内心それどころではない。大切な人、可愛い人って、それはどういう意味なの?ねえ、ルナ?そう考える私の心臓の鼓動は鳴りやむ気配は一切ない。あ、ダメだ。許容量の限界を超えそう。とりあえず後で確認しよう、うん、そうしよう。


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