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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第三章:二人の王女と諦観の月と再起の太陽
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第81話:支えてくれる人たち

スタレのストーリーで脳を焼かれていました

 結局フェンリルを倒した後の処理は兄上がやってくれた。え?私?いくら防御魔法やらなんやらを組み合わせて使ったと言っても地面と衝突した、というのはさすがにダメージがシャレになっていなくてろくに動けなかったよ。傷とかは魔法で治っても、その傷が作った痛みはすぐには消えないんだよね。


「フレア、大体後処理は終わったから戻ろうか。動けるか?」

「んー、無理。調子に乗って魔力使いすぎて少しだるい。ドラゴンのときよりはましだけど」


 言った通り、私が動けなかったのは痛みだけじゃなくて魔力の使いすぎも原因だったりする。動きたくない…。なんかだるくなるんだよなあ。


「じゃあ、僕が背負っていこうか?」

「あ、お願いー」


 兄上のそんな提案に乗っかって、私は兄上に背負われて王都まで戻ることになった。その帰路でのこと、


「なあ、フレア。少し聞いてもいいか?」

「なんですか?兄上」

「フェンリルとの戦いのとき、何を考えながら戦っていたんだ?」


 私はあのときの感情、昂る気持ちや興奮を語って見せた。それを聞いているときの兄上の顔は背負われている関係上見ることはできなかった。けれど、その声から、どこか不安げな感じが伝わってきた。


「あのな、フレア」

「どうしましたか?兄上?」

「フレアが再び魔法や剣で戦えることができるようになったことは個人的に嬉しいんだ」


 兄上のその言葉には、純粋な喜びとは裏腹に何か別のものが含まれていた気がする。その答えはその言葉を発した本人がすぐに教えてくれた。


「けどね、僕はどうしても引っかかるんだ。フレアは再び戦えるようにはなった。でも、それはフレアの望んだものじゃないんじゃないかって」

「兄上、戦えるようになることは私が望んだことなんですけど…」

「じゃあ、それを本当に使いたいことに使えるのかい?」


 私はその兄上の問いに対する答えをすぐには出せなかった。だって、その本来の目的をいざ果たそうとしたときに剣を握れるかまでは断定できなかったから。ルナに私のとびきりの魔法を見せること。それが本来の目的なんだ。


「使えますよ、多分」


 私が結局その言葉を口にするまで、結構な時間が経ってしまった。王都を囲む城壁がだいぶ近くに見えるようになってしまっていた。


「嘘だな、声が震えているのがわかるぞ」

「そう、かな?」


 私がしばらく何も言えなかった理由、それは私の中でもルナの前で魔法を使えるかを考えても、悩んでも、結局断言できなかったから。自分でもわかっている。私が再び剣を持てるようになったこと、魔法を使えるようになったこと、それらはあくまで魔物に対してのもの。それを人に対してできるとは限らない。


「最悪のパターンだと恐らくルナモニカ王女との戦いになるぞ」


 心臓が跳ねるのを感じた。それには、私も薄々気が付いていた。私にとって一番怖いのは、ルナと会えないことよりもルナに、大好きなルナに拒絶されてしまうこと。しかも、それが同時に私の好きな魔法を否定を示す可能性まである。だって、ルナは私の目の前で私の魔法を無効化して見せたのだから。私の魔法を否定することで、私を遠ざけようとするのが最悪だ。私は、怖い。ルナに拒絶されて、魔法を否定されるのが。もし、そんなことになったときに、私はそんなルナに対して魔法を見せることができるだろうか。魔法を使うために剣を握れるだろうか。


「あのね、兄上。私もその可能性には気がついてはいたんだよね。でも、それから目をそらしてた。目的と手段が入れ替わっていることから目を背けてた」


 私は、自分でも震えているのがわかってしまう声で兄上に話す。


「だけど、逃げちゃいけないんだよね」


 兄上は私の言葉に対して、無言で首を縦に振った。その顔はやはり見えない。けれど、私の言葉を認めてくれているような気はした。


「ありがとね、兄上。私、覚悟、決めないと。そうしないときっと私はルナに気持ちを伝えられないから」

「そうか、応援しているからな」


 その兄上の声音は私を送り出してくれているように感じられた。


 その後、私たちは言葉を交わすことなく、王城へと戻った。王城へと着くやいなや、母上に私は回収されて、案の定小言を言われてしまった。なんとなくそんな気がしていたけれども、どうやら王都からでもあのフェンリルの作り出した嵐は見えていたらしい。そんなところに兄上に背負われたボロボロのようにしか見えない私が帰ってきたものだからまさかと思っていたらしい。それで、兄上がその戦いの一部始終を話したところ、まあ見事に小言を言われてしまったわけだ。


「なんで貴方はいつもいつも無茶をして」


 小言を一通り言い終わったあとに母上が最後にそう零した。そのときの母上の目には光ったものが見えた。


「でも、私、無事に戻ってこれたんですよ?」

「それでも、肝を冷やすんですよ。不安に思いますよ」


 そう言って、母上は私を抱きしめてくれた。


「一人で抱え込まないでちょうだい。貴方は一人じゃないんだから」


 母上の肩越しに、兄上がサムズアップしているのが見える。…微妙に腹が立つけど、まあいいや。私の味方は多いんだ。少なくとも、家族は助けてくれる。


「うん、わかったよ、母上。心配かけてごめんなさい」

「これからは他人を頼ってくださいね。今回に関してはホルンもいたんだから」


 私はそれに、相槌で返す。母上は腕の中に抱え込んだ私の頭を撫でた。その手つきはとても優しいもので、ルナのことで不安になっていた私の心を少しずつ溶かしているようだった。


なお、フレアは基本的に強い相手とタイマンで殴り合いしようとする悪い癖があるため、これからも強い相手に突貫しがちです。頼るとはなんだったのか。


あ、評価など是非お願いします。モチベになります。

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