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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第三章:二人の王女と諦観の月と再起の太陽
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第76話:一歩前進

 私が母上の前でルナに全力の魔法を見せると宣言してから一夜が明けた。あの後、私達がヘカテリア王国に戻るのは明後日に決まった。まあ、つまり、今日の明日ってことなんだけど。どうやら母上がもう少しやることがあるらしいんだよね。で、私はというと、今日一日はフリーになってしまった。とはいえ、やりたいことがないわけではないんだよね。


「で、久々にアカデミーに来たわけだけど。」


 私は久方振りにエクスマキナ王国のアカデミーを訪れていた。ここにきたのはそのやりたいことの一つ、魔女について知るためにアカデミーの図書館で調べ物をするから。如何せん、昨日聞いた魔女の物語だけでは情報が少なすぎるんだよね。魔女の特性を知らないと最悪のパターンに備えられない。できれば避けたいんだけどね。


 私はアカデミーの図書館に着いて、すぐに司書さんに魔女についての文献がどこにあるかを尋ねて案内してもらった。その案内してもらった場所で何冊かの本を見繕って、読んでみた。


 その選んだ本の中身は大体は似通った内容で欲しい情報はなかった。若干の落胆を覚えていたタイミングで出てきた本は教会の記録だった。これって多分トリステラ様が言っていた記録、だよね?そう思って私はその本のページをめくった。そこには、教会が魔女の隠れ里に攻め入った時のレポートのようなものが書いてあった。


 曰く、最初教会側が魔女たちのところに入った時、彼女たちは訝しみながらも、もてなそうとしたようだった。そうして隠れ里の中に教会勢力が入り込むと、教会側が不意打ちをする形で戦いが始まってしまったみたい。その戦いの経過については、正直読んでてあのときのことがフラッシュバックしそうになって、とてもでもないが読みたくはなかった。そんな中、魔女達がどんなことをしたかだけはなんとか読み取った。


 魔女達は攻撃をされたとき、それこそ普通の人間なら死んでしまうような攻撃でも死ななかったらしい。ただし、首をはねると、さすがに死んでしまったらしい。これで教会が選んだ処刑方法に納得はいった。他には魔女は空を走るように翔け、色鮮やかな閃光で教会側へ反撃をしたらしい。けれども、その閃光はどうやら人を殺せるようなものではなかったらしく、結果的にいくら粘ろうとも、包囲されてしまった隠れ里から動けなくなった彼女たちは、殺され、捕まってしまったらしい。そして、一部は実験台にされ、その生態を調べるのに用いられたらしい。


「やっば、吐きそう。」


 必要な情報は手に入った。けれども、内容が内容だけに正直言ってきつい。私のトラウマを刺激するには十分なものだし、実際に吐かなかっただけ褒めてほしいくらい。ここからわかったのは魔女は生半可な損傷やダメージを受けても死ぬことはなく、空中の移動能力をもち、人に対しては効果の薄い閃光を使うことができるってこと。私の推測をここに付け加えると、その閃光は魔法を無効化する効果があるって感じ。


「結局、私が考えないといけないことはこの閃光の正体が何かってことかなあ。」


 図書館での調べものを終えて帰路につきながらもそんなことを考える。そこがわからないと、最悪の事態になったときにどうしようもなくなってしまうから。魔法を無効化してしまう原因なんて私にはさっぱりだ。魔法が無効化される感覚自体はわかるんだけども。あの構築した術式が乱されてきれいさっぱり消えてしまうような感覚。これはルナが魔法に何か干渉したことによって起きたんだろうけど、その干渉した対象がわからない。術式の中身は魔素であることを考えると魔素、なのかなあ?そうなると、魔女の能力は魔素への干渉ってことになる。けれども、これだとまだ何か届いてないような気がする。


 そんな感じで悶々としながら部屋へと戻ると、私はもう一つのやりたいことの準備を始めた。内容自体は大体決めてあったから、筆の進み自体はかなり早く、作りたかったものはあまり時間を経ずに完成させることができた。それが済んだら、私がまた魔法を使うための方法について考えることになる。


 私がなんで今魔法をうまく使うことができないのか。それは間違いなくあの夜のせい。正直言って私はあのときのことを受け入れることは出来ても、乗り越えることは出来ていないと断言できる。そうじゃないと図書館でのフラッシュバックは起きていないと思うから。そうなると、私の気持ちの問題なような気がしてくる。それに、もし魔法を使うことができるようになったとしても、ルナを魅了できるような魔法を使おうとすると、もう一つの問題が間違いなく出てくると思う。


 それは、今の私は剣を握れないこと。私の手元にある魔法を使う上での触媒で最も優秀なのはドラゴンの素材を用いて作った二振りの剣だと思う。つまり、それを使えるようにすることはかなり重要な要素になる。唯一、この問題は多分前に挙げた問題とほぼ同一な方法で解決は出来ると思う。とはいえ、その問題の解決があまりにも難しいものなのが問題なんだけどね。


「駄目だ、手段が思いつかない。結果だけ夢想したとしてもそれを実現する方法がないと。」


 結局、その日の残りの時間を費やしたとて、代替は思いつけど、結論を見つけることは叶わなかった。


 翌日、私はトリステラ様のところに母上と一緒に訪れていた。


「二人とも、会えて嬉しかったわ。また、すぐに来るのよね?」

「はい、ルナに会いにまた戻ってくる予定です。」


 私は、トリステラ様の言葉にそう返す。絶対にまたルナに会うという決意を乗せて。そして、私は一通の手紙をトリステラ様に手渡した。


「あら、これは?」

「昨日書いたルナへの手紙です。ちょっと待っていてください。」


 そう言って、私は布に包まれたものを荷物の中から出して持ってきた。


「この布の中身のものと一緒に手紙をルナの部屋に置いておいてくれませんか?本当はこの中身は私が直接渡したかったんですけどね。」


 布にくるまれたものは銀のレイピア。私がルナに贈るつもりで用意したもの。


「わかりました。しっかりと私が置いておくわね。」

「はい、お願いします。きっと、ルナに届くと思っています。」


 トリステラ様は私の言葉を頷いて肯定してくれた。


 その後、トリステラ様と別れて、私は母上と一緒にヘカテリア王国への帰途へとついた。その馬車の中で、母上にこんな言葉をかけられた。


「そういえば、フレアは自分のものではなく、布越しとはいえ剣を持つことが出来ましたね?」


 そう指摘されて、私は剣と認識しているものを持つことが出来たという事実に気づいた。少しだけ気持ちが前を向いてくれたおかげなのかな?目標に向けて光明が見えたような、いや確実に見えたんだろうな。


「そうですね、母上。私はもう止まりません。」


 私のその言葉には決意と覚悟が込められている。私の行く先が例え暗闇だったとしても、自分で照らしてしまえばいいのだから。


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