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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第二章:二人の王女と魔女と教会
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第60話:真っ黒に塗りつぶされて

今回は閲覧注意です。

 今日もまた、体に傷が増えました。私自身でもびっくりするくらい傷の回復は早いのですが、それでも、いくつもの跡が見えます。正直、この傷の回復速度を見ていると、本当に私は魔女になってしまっているのではないか?という疑問も湧き上がってきます。


「やあ、魔女。早く魔女であることを認めてしまったらどうだ?」


 今日もまたこの畜生どもがやってきたみたいです。しかし、いつもなら無言でここに入ってきて私を痛みつけながらこんな決めつけるようなことを言いますのに、何故か今日は最初にそれを述べてきましたね。


「ん?なんだその目は。にらみつけてくるんじゃねえよ。なんでここまでしてそんな強い目を出来るのかね。早く折れちまえよ。」


 私の疑問の意によるものかそれとも無意識のうちににらみつけてしまっていたのか、目の前の修道服の男は汚く罵ってきました。



「まあ、いいや。今日は教皇直々にお前に言いたいことがあるそうだ。」


 こいつはそう言い残して後ろに下がっていく。入れ替わりに、白髪でまあ格式の高そうな修道服を着た男性が入ってきました。


「お久しぶりですね、ルナ元王女。いえ、魔女と呼びましょうか。」

「…私は魔女じゃないって何回言えばわかるんですか?」

「いいえ、貴方が魔女であることは決定事項です。さて、今日は貴方に見せたいものがあってわざわざこの私がここに来たんですよ。」


 それを合図として新たに別の人物が複数人入ってきました。それを見て、私は咄嗟に叫んでしまっていました。


「貴方たちなんで!?」


 私の目に映ったのは拘束された穏健派の男女でした。何か言おうとしてますが、口を塞がれていてそうすることを妨げられてしまっていました。


「最近、ここに対して無断で出入りしている人間がいる気配がありましてな。見張って、捕えて、優しく、問い詰めてみると自らが穏健派のスパイであることを自白しましてな。」


 絶対嘘ですね、彼らの体についた傷を見ればわかります。


「私達は裏切り者は許さないのでね。」


 その一言の後、他に一緒に入ってきたやつ等が彼らの頭に銃を突きつけました。


「待ってください、その人達は何も。」


 反射的にそう言うも、多分、無駄。


「何もしていない、ですか?私達にとっては魔女に味方するのは皆裏切り者で魔女と同じなのですよ?」


 大体予想通りの返事。このままでは間違いなく彼らは散ってしまうでしょう。でも、私はどうしたら、どうしたらいいのでしょうか。そんな願いに答えるように、私は、あの時、フレアを助けた時、と同じ感覚を覚えました。そして、私はそれを、咄嗟に放ってしまいました。


「む?」


 しかし、それは、極光は、ろくに仕事をしなかったようです。ドラゴンに効いたのに、なんで。私じゃ助けられないですか?


「ふふふ、ふはは、ふはーはっは!」


 それを見た男、教皇は急に笑い出しました。


「文献からそうとは思っていましたがやはりでしたか。こいつらは用済みです。殺してしまってください。下手に接触しなければこうもならなかったものを。」


 パンッ、パンッ。二回響いたその音は容易く二人の命を奪い去りました。それを見せつけられて、私は何かが割れた気がしました。私が目の前で行われたことに絶句していると、さらに教皇は続けました。


「貴方は今ので自らが魔女であることを自白したんですよ。」


 やっぱり、なんとなく納得してしまうとともに、それは私への死刑宣告にも等しいものであることを察してしまいました。


「そもそも、貴方がこれだけ血を流していても死なない時点でほぼ確定だったんですよ。そして、今の光。それで確定です。貴方は魔女なのですよ。」


 そう言って、教皇は私の近くに来る。そして、眉間に銃を突き付けてきます。あっ、ダメ。やめて。少しひんやりとしている金属は私に死の予感を与えてくる。頬を何かが流れる。


「安心してください。貴方はもうこれくらいじゃ死なないですよ。正直、貴方を殺すのは骨が折れますよ?魔女であって人ではないんですから。」


 それと同時に引き金が引かれた。襲い掛かるは今までに感じたことのない激痛。撃たれた場所を考えると即死のはずですのに。拘束された私は暴れることもできず、ただ苦しむだけ。続けて、左胸に同レベルの痛み。それと同時に足元に感じる生暖かい感覚。ダメ、何も、考えられない。


「ほら、死なないでしょう?でも大丈夫ですよ。最後には殺してあげますから。魔女への救済は死しかないのです。」


 そう言って、今度は左耳のほうに銃が来たかと思うと、また放たれた。そして、それと同時に、許容量を越えてしまったのか、私の意識は完全に落ちてしまいました。


「おや、意識を飛ばしてしまいましたか。では、私は上に戻りますので、もう少し痛みつけておいてください。そうしないと、処刑がうまくいきませんからね。」


 最後に教皇がそう言って消えて言ったような気がします。


 次に目を覚ますと、再び激痛に襲われると同時に、目を覆いたくなるような惨状になった自分が見えてしまいました。


「あっ、もう、、だめ。」


 その濁流は、私の許容量を越えて、心を、希望を薙ぎ払っていってしまいました。残ったのは、ただ、私が少なくとも人ではない何かになってしまっていることと、そのせいで処刑されるという事実。


「もう、諦めてしまいたいです。」


 ごめんなさい、フレア。私、もう無理です。このまま消えてしまいたいです。





 それからどれくらい時が経ったでしょうか。私はもう、激痛に耐える気力もなく、以前よりもさらに酷くなった拷問を受けていました。どんなに傷ができても死ぬことのなく、ただただ苦しいだけ。完全に折れてしまった心ではそれを耐えきれるわけもなく。声をだす気力すら残っていない私は、それによって涙を流すだけでした。途中で何か、撮られた気もしましたが、それを意識する余裕もなく。


 そして、今、私は、自らの終わりとなるであろう場所にいます。久々に見た空は雲一つなく、星が瞬いています。その中に浮く月は少し前は丸かったのに今では欠けていて。


「早く、もう、終わらせてくださいよ。」


 つい、そう呟いてしまいました。しかし、


「〈サンダリング・パラライズ〉」


 私の生を諦めた願いを否定するような言葉が何も見えない虚空から放たれたのでした。


次回からフレア視点に戻ります。


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