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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第二章:二人の王女と魔女と教会
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第59話:傷の中で見えた希望

 ガチャ、ガチャン。私が身動ぐと、頭の上からそんな音がします。そして、体中に感じる痛み。ここでは日が見えないために、何日経ったのかもよくわかりません。来るのは、私をただ痛みつけるためだけに来る教会の人間だけ。目的もわかりませんし、どうすることもできません。今は、ただ心が折れないようにして、助けを待つのが最善でしょう。だから、耐えるだけ、折れなければいいんです。


 そもそも、何故こんな状況になってしまっているのか。それは、時を遡ってみないといけないです。正直、余り思い出したくはないのですが。


 あの日、私はいつも通りにフレアが来るのを待っていました。そんなとき、人の来訪を示す音が玄関から聞こえました。今思うと、私は完全に無防備でした。


「フレア!今日も来てくれt。」


 玄関を開けて、フレアを向かい入れようとしました。しかし、最後まで言い切ることは出来ませんでした。代わりに響いたのは、パンッ、という乾いた金属音。それと同時に、左肩に走る痛み。


「え?」


 完全に予想外でした。動揺しながらも、素早く、玄関に置いていたスペルガンを手に取った。引き金に触れると術式が起動して風の弾丸が乱射された。けれども、すぐにその弾丸は出なくなってしまいました。なら、他のものを、と思いましたが、そんなことは出来ませんでした。連続して聞こえた発砲音。そこで、怯んでしまったのがまずかったんでしょう。そこから先はなす術もなく、修道服を身に纏う男性が複数人、突入してくるのが見えて、首元を叩かれた気はしましたけれど、そこから先の記憶はなく、いつの間にか、今いる場所に閉じ込められていました。不思議なことに、撃たれたことによってできた傷は、跡自体は残っていましたが、治ってしまっていました。


 そこから先は、拷問の日々。そのときに聞かれる内容から私が魔女であることを認めさせたいのでしょう。実際問題、心当たり―ドラゴンとの戦いで私が使ったもの―はあるのですが、そんなことを言ったら、私がどうなってしまうのか、なんとなく想像できてしまって、そんなことを口にしてはいけないと心に決めて耐えていました。


 そして、今日もまた、痛みつけられていました。その時は、できるだけ心を閉ざして、あいつらの声に耳を傾けずに、ただただ痛みに耐える。それだけのことです。そこまでしても、精神はすり減っていく。傾けなくても入ってくる音は私の否定。魔女であるお前は存在価値がない。忌むべき魔女であるお前は死んで当然だ。そんな言葉ばかり。私が何をしたのか、なんでこんな目に遭わないといけないのか。


 あいつらが戻っていってから、しばらくが経った。痛みは、少し引いてきた。辛いものは辛いですけど。そんな中、誰かがこちらに向かってくる気配を感じました。敵意は、なんとなくだけど感じません。その件の人たちは私の閉じ込められている牢の前に来ると、中に入ってきました。


「ルナ様、私達は貴方の味方ですよ。」


 目の前に現れた人物は二人。男女の組み合わせ。こんな場所で味方、と言われても信じていいのかわかりません。


「私達は、教会の穏健派の人間です。」


 そう自分達の身分を明かした彼女らは今のこの国と王都の状況について教えてくれました。王都はどうやら、王城含めて教会に制圧されてしまって、今の行政府を教会に移ってしまっているようです。されと同時に、私の家族、王族、というかお兄様はどうにか王都を脱出して、東の砦に本拠地を置いているようです。そして、そこにフレアもいると。フレア、貴方は、私を助けにきて、くれるんですか?いえ、そうしようと思ったからそこにいるんですよね。


「他の貴方の家族についてはすみません、情報の確実性がないので。第二王子は東の砦にいるという情報はあったのですが。」

「いえ、私の家族が少しでも生きているとわかったらそれで今は大丈夫です。」


 その事実は、私の支えになってくれます。


「すみませんが、私達は貴方を今すぐに助けることはできません。」


 彼女らは、もとは過激派に侵入していた穏健派のスパイだったらしいので、堂々と入ってきてる関係上、私をこっそりと外へと出す手段がないようです。


「いえ、大丈夫ですよ。なんとか、折れずにいられそうな理由が出来ましたから。」


 フレアが私の為に動いていそうなこと、それがわかっただけでも十分です。こう思った根拠はないのですが、不思議とそう思いました。


「では、長居すると過激派にバレてしまいそうなので私達は戻ります。改めて、力になれず申し訳ありません、ルナ様。穏健派の私たちは王家側についております、必ず貴方を助け出しますので、それまで、どうにか耐えてください。非常に酷だとは思いますが。」

「わかりました。貴方たちも無事でいてくださいね?」


 そのやり取りの後、彼女らは引き返していきました。私自身は何もできないのがもどかしいですね。耐えてください、と言われても、正直言って、辛いものは辛いですし。体を傷つけられ、精神的にも削られていく。正直、いくら私でも、自分自身に自信があったとしても、難しい。でも、なんでかフレアが来てくれると思うと、まだ耐えきれそうです。フレア、待っていますよ。


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