第54話:形成逆転
私の国からの義勇軍が到着した翌日、私は、その義勇軍を率いてきた兄上と一緒にスペランテ王子が最近住んでいるとかいう会議室に向かっていた。
「フレア、よく眠れたかい?」
「はい、まあ戦いが始まってからだと一番。」
「なら、よかった。会ったとき、顔色が悪くて心配だったんだよ。」
「そうでしたか?心配かけてすみません。」
「辛いなら辛いと言えばいいんだけどな。」
「辛くないので、大丈夫ですよ。まだ戦えます。」
兄上は私のことを心配してくれているみたい。だけど、いくら心配されようとも、ルナを助けるまでは止まりたくない。止まるわけにはいかないから。
「ホルン王子とフレア王女、おはよう、だな。」
「はい、おはようございます。あの、大丈夫ですか?」
「貴方には言われたくないのだが、まあいい。昨日二人がとんでもない数の捕虜を確保しただろう?」
「そういえばそうですね。」
「その捕虜の整理とか尋問とかの報告を徹夜でまとめていたのだ。正直、余りに数が多すぎてな。」
そう言って私達を若干恨まし気な目で見てくる。
「で、だ。その尋問なんだが、それ自体はあっさり済んだ。そこで手に入れた情報が問題なんだ。」
「その問題ってなんなんだい?」
兄上がそう尋ねた。
「それがだな、どうやら、教会側についているのは軍の上の方だけみたいなのだ。」
「つまり、今戦場にいる人たちはその指示に従っただけってことだったんですか?」
「そういうことみたいだな。」
スペランテ王子は重々しく告げた。その事実は私にまたヘドロを作った。本来、奪う必要のなかったものを奪ってしまったことに気づいてしまったから。でも、まだ折れちゃダメ。頬をパン、と叩いて気合を入れる。
「ここからが本題なのだが、二人とも空飛べるってのは本当なのかい?」
「そうですね。」「そうだな。」
「それなら、お二人にお願いがあるのだが。」
「何をお願いしたいのかな?」
「二人で司令部を強襲した上で兵站を破壊して継戦能力を奪い去ってしまってほしいのだ。」
なんとなく、話の流れから読めてはいたけどかなり無茶のあるお願いをされた。実際、戦闘力としては、昨日のを考えると二人でも行ける、とは思うけど。すると、少しの間を空けて兄上が口を開いた。
「スペランテ王子よ、できない、とは言わないが、かなり無茶を言う。」
「不可能とは言わないのだな。で、どうだ?」
「僕としては問題ない、かな。少し条件は付けたいけどね。」
「では、フレア王女はどうだ?」
「先に一つ、これを成功させたらルナを助けられる作戦に移れるんですよね?」
「ああ、恐らくな。これで砦を攻められる可能性が下がるとだいぶ余裕ができるからな。」
「わかりました。私も行けます。行かせてください。」
それを聞いたスペランテ王子は微妙に呆れたような雰囲気を出してため息をついた。
「ルナのことを本当に最優先にしているのだな。正直、不安要素もあるが、お願いしよう。どこを攻めるかとかは、捕虜から得た情報から考えてある。罠、の可能性もあるから気を付けてほしい。教会側が航空戦力を想定しているとは思えないとはいえ、警戒するように。」
その後、私は兄上と一緒に出発の用意を済ませ、移動していた。
「フレア、今なら戻れるがどうする?」
「そんなことするわけないですよ。私が戦闘で遅れをとると思いますか?」
「そういうわけじゃないんだけど…。」
「それよりも、早く行きましょ、兄上。」
私のことを兄上は心配してくれている。昔から兄上、私とあと、妹に過保護な面があるんだけどそんなに心配しなくてもいいのに。
しばらく行って、攻撃の第一候補が目視できるようになった。そこには、白くて大きいテントがいくつか見られた。見た感じ、空への警戒は低そうかな。
「じゃあ、フレアは攻撃に使えそうな野戦砲を破壊してくれ。私は前と同じように一気に制圧する。」
「わかりました。」
私達は、ここからの行動を確認して、互いにやるべきことをする。
「〈ファイア・ランス〉」
私は炎の槍を作って、砲台やら、武器が見えるテントへと攻撃をして、確実に破壊をする。
「〈サンダリング・パラライズ〉」
兄上は昨日と同じように、雷をばら撒いて地上の人間を麻痺させていく。
結果として、制圧には一時間も掛からなかった。こちらは、まあ二人しかいない関係で被害はなし、しいて言うと魔力が減ったくらい。相手方は、というと、こちらに損害を与えうる兵器群はすべて破壊され、いた兵などは私の魔法に巻き込まれたり、麻痺させる雷が流されたりして無効化された。私は空から、警戒をしているけれど、兄上は地上に降りて敵兵を一か所にまとめている。
「これで、大体作戦は終わりかな。私は少しやることがあるから先に補給線の破壊を頼んだ。指揮系統をそこまですれば完全に破壊できるし、敵の兵站も崩壊する。」
「では、行ってきますね。兄上も頑張ってください。」
私は、地図片手に補給線になっている街道へと攻撃を加え、補給手段をなくしていく。大体、分かってる範囲のものを破壊し終わった後、兄上と合流した。
「兄上、こちらは終わりましたよ。」
「フレア、戻ったのか。私もやりたいことは終わったぞ。これで、砦付近の敵戦力は完封できた。」
「それ本当ですか?どうやって?」
「まあ、色々やったんだよ。」
なんか誤魔化された。深くは追求しないでおこう。うん。
こうして、砦の防衛戦は、魔法という存在により、数を質で圧倒したことにより、私たちの勝ちで終わった。
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