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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第二章:二人の王女と魔女と教会
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第50話:魔女のお話

「さて、まずは魔女と教会の話についてしないといけませんね。」 


 東の砦へと戻っている途中、トリステラ王妃殿下は語り始めた。


「今よりも、五百年くらい前の話です。昔、私達の世界には、私のような人のほかに、もう一種類、人類が隠れ住んでいました。彼らのことは魔人、あるいは魔女と呼ばれていました。ある日、その隠れ住んでいた彼らの元に、外から旅人がやってきました。彼らはその迷い込んだ旅人を招き入れ、もてなしました。その旅人は、自らの住んでいる村に戻り、このことを伝えました。村人たちは話し合った結果、代表者を彼らのもとに送り、話し合いをすることにしました。その話し合いの結果、村と彼らとの間でやり取りが始まりました。ただし、非常に限定的な。物のやり取りなどはしましたが、人の行き来は最低限だったのです。

 その関係が五十年くらい続いたころでした。その村のある青年と隠れ住んでいた魔女の少女が恋に落ちました。その魔女の少女は、その青年に会うために、次第に村の方に現れるようになりました。村人たちは、その二人の若者の恋を応援していました。一方、隠れ里の住民はそれをあまり歓迎していないようでした。そのまま、彼らの恋は進み、ついには結婚までたどり着きました。彼らは祝福され、その旅路は明るいもの、そう思われていました。」


 そこで、王妃殿下は話を切った。


「その話は昔話なんですか?実際にあった。」

「そうね、実際に見たわけじゃないから断定できないのだけど。これは教会に原典がある書物に書かれていた内容ね。アカデミーの図書館にも写本があるのよ。」

「そうなんですね。この話には続きがあるんですか?」

「…ええ、あるわよ。かなり残酷な、ね。続きは砦で。」

「はい、わかりました。と、言ってももうそろそろ着くと思いますけどね。」


 私がそう言ってからそう経たず、砦が目視できるようになってきた。そして、砦に着くや否や、私は王妃殿下を連れて、二人の王子の元に向かった。


「ルナ王女か、どうだった?」

「すみません、国王陛下については、王城のどこを探しても見つけきれませんでした。しかし、王妃殿下についてはこのように。」


 私は、一緒に部屋に入った王妃殿下に手を向けた。


「久しぶりね、二人とも、私はこうしてなんとか王都から脱出できたわ。でも、ジョイアとルナは現状救出できていないみたいね。」

「そうですね、母上。ルナ王女が調べてくれた情報によると、教会がほぼ完全に政治的中枢を制圧したようです。それに、軍もかなりの割合が教会側についてしまったようで。」

「どうにかしましょうか。明日中に、臨時政府をここを臨時首都として立てましょうか。継承権的に、スペランテを国王代理として立ててという形にしましょう。」


 そのまま始まったのは政治の話。あー、私はこれ入ったらいけない話だよなあ。そう思って、一旦部屋の外へと出る。正直、今日の私、いや、昨日からかな、何かおかしい。なんだろう、最適解を導き出せてない。教会から出ていくときに急いでいるわけでもないのにガラスを割って出て行ってしまうし、王城の部屋を調べるときに外から空を飛んで中を伺うという手段に気づけなかったし。たまに空回りすること自体は前からあったけど、今回のは正直今までになかったこと。やっぱり、ルナのことかな。正直、教会のあのやり取り、聞いた瞬間、あいつらをその場で殺してしまいそうだった。でも、それはできなくて。結果として、そこから逃げるために、冷静であるために、ガラスを割った。でも、今思うと、その行為自体が冷静じゃない。だって、少なくとも、窓の割れ方とかから、何者かが中に侵入したことはわかっちゃうんだもん。そう考えると、そこまで来た道を辿って戻った方がよかった。このままの状態で動いたら、また同じミスをしちゃう気がする。でも、その対策は思いつかなくて。そんな中でも、ルナへの想いは貯まり続けていて。


「本当にどうにかなっちゃいそうだよ、ルナ。」


 私は空に浮かぶ、少し欠けている月に対してその言葉を吐いた。


***


 教会にて、二人の男性が、フレアが見た部屋で話をしている。


「元国王陛下の教会地下への輸送は夜のうちに終わらせました。」

「はは、それはよかったです。昨日の侵入者に私達の会話が聞かれていた可能性がありましたからね。これで、大丈夫でしょう。」


 そう言って、報告を受けていた男、教皇は嗤った。こちらの手札はまず、魔女であるルナ、そして、元国王陛下。残りの元王族は確保できていないが、元王妃は、アカデミー内に法的に教会の勢力が入れるようにさえしてしまえば、こちらの勝ち。残りの元王子二人についても、軍を動かして、籠城してそうな砦をすべて潰せばいいのだ。数で勝っている。その事実は教会側が強気に動ける一つの理由であった。それに、


「それと、魔女のあれについてですが、どうやら、穏健派が何かをしているようで。尋問の効果が薄くなっているように感じますな。」

「そうですね、その穏健派をうまく使ってみましょうか。恐らく、かなり効きますよ。」


 そう、教会にはこの行為の正当性たる理由になる王族であり、魔女がある。魔女を処分することによって、正当性を確保する、彼らの目的はそれであった。


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