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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第二章:二人の王女と魔女と教会
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第45話:一手先を取られる

 離宮のどこを探してもルナを見つけることはできなかった。探知魔法の欠点のカバーのために離宮の部屋を確認出来る限り、クローゼットの中まで確認した。それでも、見つけられなかった。


「どうして。」


 つい、口から言葉が出てしまった。なんで、ねえ。どうして、どこに行ってしまったの?


 玄関へと戻ると、そこの惨状が改めて認識できた。入った時に見えた血痕はその一端でしかなかったみたい。銃弾の跡がいくつもあり、靴棚はボロボロ、その上に置いてあったであろう花瓶も割れてしまっている。でも、やはり一番気になるのは血痕だ。改めて見てみると、血痕自体は一つではない、中央に大きいのが一つだけど、他にもいくつか。ここで戦いがあったのは間違いないんだろう。どちらにしてもルナがここにいないという事実は変わらない。


「もしかして、先を越された?誰に?」


 ダメだ、完全に気が動転しているのがわかる。落ち着かないと、見えるものも見えなくなってしまう。いや無理だ、色んな負の感情がごちゃまぜになってしまってそんなことできない。


「って何!?」


 外から別の誰かが走ってくるのを探知した。数は一人かな。私は剣を抜いて、魔法をすぐに使えるようにして待ち構えるしかなかった。半開きの状態で放置されていた扉が動いた。そこに現れた存在を見て、私の落ち着こうという気持ちはすべて消し飛んでしまった。声が出せないでいると、その人は口を開いた。


「フレア王女、か。すまない、完全に先手を取られた。私達の負けだ。」


 その人、スペランテ王子は絶望的な一言を告げた。負け、どういうことなの…?


「なんだ、スペランテ王子か、って大丈夫ですか!?〈リトル・ヒール〉。」


 彼は左肩から血を流していた。一体、何が。


「フレア王女、すまないな。早速だが、今すぐに私を王都から脱出させてくれ。訳はその最中に説明させてもらいたい。」


 どうやら、思った以上に事態はひっ迫しているようだった。


「で、何があったんですか。私今冷静でいられないので出来るだけ手短にお願いします。」

「ああ、わかった。端的に言うとだな、教会に先に動かれた。」


 王都からの脱出のために、箒の後ろにスペランテ王子を乗せて、〈ドラゴ・インビシブル〉をローブに使いながら確認してみた。スペランテ王子はこう続けた。曰く、今日は王城にいつもよりも少し警備が多かったらしい。そして、時間が経って、暗くなり始めたころ、それは起きたらしい。王城内でボヤ騒ぎが起きたと思ったら外から一気呵成に教会の連中が侵入してきて制圧されたみたい。兵がボヤ騒ぎの対処に持ってかれたせいで即応できず、あっという間だったらしい。


「ええと、つまり、クーデター起こされて政治中枢である王城を制圧されちゃったってことですか?」

「…そうなるな、恐らくこちらの動きがすべてバレていたんだろう。教会は想像の何倍も深く潜りこんでいたらしい。」

「なんで、スペランテ王子は離宮まで逃げれたので?」

「飛び降りた、屋上から。」

「なんで無事なんですか?王城の屋上からだととてもじゃないですけど大丈夫ではないような…。」

「マントをパラシュート代わりにしたんだ。正直、賭けだったけどな、落ちた先に木があって助かったよ。なかったら動けなくなって本末転倒だっただろうな。」


 彼はそう自嘲する。肩の傷は屋上から飛び降りる寸前に撃たれてしまったものらしい。その状態でほんとよく離宮まで来れたな、この人。でも、ここまで聞いた情報から判断できることは絶望的な状況だった。


「ええと、つまり、王城は教会に制圧された、そして、王城から脱出できた王族は確認できているのは貴方、スペランテ王子だけ、ってことですか?」

「いや、今は第二王子、私の弟が東の砦にいる。他に、確か最近は母上もアカデミーの方にいるみたいだな。」

「なんで王族がそんなバラバラな場所にいるんですか?」

「母上が決めたことだ。王城には父上が…。」

「つまり、教会側に国王が握られたってことですか、割と最悪な気がしますが。」

「いや、父上は覚悟の上で王城に残っていたんだ。父上以外が健在であるなら、まだ正当性の面で立て直しはできるんだが。問題はルナだ。今思うとルナを離宮から動かすべきだったな・・・。彼らの狙いは恐らくルナだったろうからな…。」


 そう言ってスペランテ王子は肩をすくめた。声色には後悔の念が篭っているように感じた。


「教会側に手に落ちたのが国王陛下、そして恐らくルナもですか…。」

「恐らくだがな…。とりあえず、まだ立て直しは不可能ではない、薄氷の上を歩くみたいな状態だがな。」

「ところで、今ひたすらにうちの国へと飛んでいますが、このままうちの国まで行きますか?」

「いや、東の砦で弟と合流する。そこならヘカテリア王国とも連絡が取れるからな。」

「はい。」


 その後、会話はなかった。もしかして、魔物の襲撃も教会の誘導?とある方法を使えばできるけど、そちらは冒険者ギルドが調べてくれるはず…。どこまで私たちは手のひらの上で転がされていたんだ。その結果として、ルナは…。私の情緒はぐちゃぐちゃだ。何をするのが正解だったのだろうか。とにかく、ルナを助けることのできなかった私は、私は。とにかく、歯を食いしばることしかできなかった。


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