第43話:近づく足音
私はヘカテリア王国に戻って早速自分用の二本の剣、ローブ、それとルナに贈るためのレイピアの設計を始めた。レイピアのサイズについては大体わかってはいるから問題はないけど問題は重量バランスかなあ。あと、ドラゴンの魔法のうち一つを使えるようにしたいから魔石を入れる場所と術式を刻む場所も用意しないと。んー、設計すべきものが多くて結構大変だけど頑張るしかないなあ。
で、設計やらなんやらを始めたのが三日前。で、その設計が完成したのが今日。ローブだけは一応用途決めてあったし構造も簡単だからすぐにできたけどレイピアと二本の剣の方に苦労した。主にいかにドラゴンの素材を使うかについてだけどね。結果としてはまあ当初の予定通り剣を作る金属にいくらかの割合でドラゴンの素材を触媒として溶かし込む方向に決めた。配合比の候補もいくつか考えたけどまあこれは作り手に最終的には判断してもらうしかないかな。
「やっほー、オスト。久しぶりだねー。」
ということで、その作り手になってもらう予定のオストの鍛冶屋を訪れていた。
「なんだ?フレア様、久しぶりじゃないか。また何か思いついたのか?」
「うん、そうだよー?ちょっとドラゴンの素材で色々と作りたくてねー。」
「ああ、フレア様がこの前ルナ様と一緒に倒したっていう。」
「そうだよー?大変だったんだから。」
「語りだすと長そうだから先に何を作りたいか聞かせてもらえないか?」
オストにそう聞かれて二本の剣、レイピア、それとローブを作りたいと伝えて、作ってきた設計図を渡した。それを見たオストは首を捻る。
「ドラゴンの素材を使った剣か。また面白いものを考えたものだな。」
「でしょー?魔法使うときの触媒としてかなり優秀っぽいから今まで以上に高出力の魔法使えそうなんだよねー。」
「で、こちらのレイピアはルナ王女への贈り物か?魔石をはめれる場所もあるしな。」
「お、正解だよー?ちょっと考えてることもあってねー。」
そのままの流れで作るものについての話を続けていった。オストの提案で設計図に手を入れたところもあって、本業鍛冶師の持っている知識と魔法の研究者としての視点の違いを感じたかな。
「あ、できればお願いなんだけどさ、ローブだけは最優先、具体的には三日後までに用意出来ないかな?」
「おう、できるぞ。何か使いたい訳でもあるのか?」
帰り際、オストにローブだけ優先して作ってほしいとお願いしたところ、理由を聞かれてしまった。
「あー、それはね、ちょっと使いたい用事があるんだよね。。」
「用事、か。まあ間に合うように用意だけはしておく。それじゃ、早速作り始めたいから帰りな。」
「うん、それじゃあ、お願いね。」
理由を少しはぐらかしたけど特に不審がられたりはしなかったなあ。下手に言いたくないからね、理由は。王城への帰路についたときには既に空は暗くなりだしていた。どうやらかなり長い時間話し込んでしまっていたらしい。空に見える月は雲に隠され始めていた。
***
「軍の方の動きはどうだ?」
「表面上は何か動いている様子はない。しかし、裏では何か大規模な作戦が動いているようだと軍内の信者から報告が入っています。」
「その用意が終わりそうな日時についての報告はあるか?」
「大体一週間後くらいではないかと。」
「ならば三日後に動こうではないか。こちらが動かせる軍はいくらある?」
「全軍のうちの三割は確実に動かせるかと。上層部の信者に命じれば数はさらに増やせるでしょう。」
「まず最優先は魔女の確保だ、次点で上を抑える。すべては魔女を滅ぼすために。」
更けていく夜。想定よりも早く、事態は動こうとしていた。
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少し、ご報告をば。近いうちに最初の方から見直して設定の練り直しなどをしたいと思っています。その結果として、最初の方から内容が変わって行く可能性が大となっています(まあ多分そんなに大きくは変わらない、はず)。少なくとも、魔法関係については変更が入る予定です。読み直さなくてもいいように変更部分は活動報告にまとめる予定です。