第40話:実験結果
「ふぎゃっ!」「うがっ!」
私はルナと一緒に揃って魔石によって起こされた突風によって壁にたたきつけられた。恐らくドラゴンの魔法が発動したんだろうけど。なんとなく魔力の雰囲気もあの時、ドラゴンの起こした暴風を浴びたときに似てたし。で、その魔法の発動に必要な魔力を通していた私が吹き飛ばされたことで魔法の効果はなくなったみたい。まあ、結果としては窓は割れるわ二人揃ってこの状態になるわで大惨事なんだけども。
「いたた、完全に油断してた、これが炎の魔法とかだったらこの離宮全焼してた気がするよ。」
そう言って、なんとか立ち上がって同じく吹き飛ばされたルナの方へと向かう。ルナ、大丈夫?と声を掛けると、ルナは少し意識を飛ばしていたのか、ん、と少し声を上げて頭を振った。
「なんだったんですか?急に突風が…。全身痛いんですけども。」
「えーとね、多分ドラゴンの魔法、風の魔法が発動しちゃったみたい。つまり、機材自体に問題はなくて実験に支障はないけど、私の見積もりが甘くて、室内でするような実験じゃないってことが今ので分かったかな、って、うん?」
そこまで言って、ルナのぶつかった壁に少しだけ赤黒いものが見えた。これってもしかして。
「ルナ、少し失礼するね。」
そう言って、ルナに顔を近づけて頭を少し確認する。あ、やっぱり、少し血が出ちゃってるなあ。
「<リトル・ヒール>。」
私は回復魔法を軽く唱えた。すると、頭の傷が治っていくのが見える。でもなんか少し治りが遅い?気のせいかな。
「あの、急にどうしたのですか?」
「え?あっ、ごめん。少し怪我してるのが見えたから。」
「魔法で治したのですか?」
「うん、そういうこと。ダメだった?」
「そんなことはないですよ。魔法を使われるってあんな感覚なんですね。興味深かったです。」
そう言って、ルナは面白そうに笑った。あ、可愛い。って、違う、今は違う。実験してるんだった。
「ええと、とりあえず、魔法で怪我は治したけど実験続けられそう?」
そう確認すると、はい、大丈夫ですよ、と返ってきた。
「でも、これ大丈夫なのですか?部屋の中でやっても?」
「さっきも言ったけど絶対大丈夫じゃない。もし炎の魔法だったら離宮なくなってた。どうする?機材運び出す?それとも実験中断する?」
「はい、そうしましょうか。私は王城で爆破事故起こしていますし、ここでもボヤ騒ぎを何回か起こしたことがあるので、さすがにまずいです。最初からリスクあるなら回避しましょう、そうしましょう。」
「実績持ちだったね、そういえば。ってなんでちょっと誇らしげな顔してるの、褒めてはないんどけど?」
何故か胸を張るルナに突っ込んだりはしたけれど、機材を外に持ち出す、と決めてからは早かった。まあ、運び出したのは主に私なんだけどね。いくつかのパーツに分割し直して、さっき吹き飛んだ窓から外に出すだけ。私がその作業をしている間、ルナは王城へごめんなさいと窓の修理を依頼しに行った。
機材を運び出し、元の状態に組み立て直し終わったくらいで少し疲れた表情のルナが戻ってきた。
「またやったのか、って怒られました…。」
普段あんまり見ることのないしょんぼりとしたルナは少し可愛らしかった。って、違うって、そうじゃない。そう、今は実験実験。
「それじゃ、今度こそ、実験始めるよ。」
ルナが頷いたのを確認して、さっきと素材の組み合わせを変えた機材へと魔力を通した。
日が暮れるころ、とりあえずやりたかった実験は終わった。結果としてわかったことは、まずドラゴンの魔法の術式。〈ドラゴ・テンペスト〉(部屋の中で大事故を起こしたやつ)、〈ドラゴ・インフェルノ〉(多分ドラゴンのブレスはこれだったんだと思う)、〈ドラゴ・マジックエンチャント〉(ドラゴンの物理的な耐性を大幅に上げてたのがこれっぽい)、〈ドラゴ・マジックバリア〉(ドラゴンの魔法耐性を上げてたのがこれ)、まあ特に大きいのはこれくらいかな。他にも細々とした術式があったけど普通だったから省略。でもまだ少し見逃しがあるような気もするんだけどね。で、もう一つ分かったこととしては特にこの四つの魔法を前に出した理由にもつながるんだけど、どうやらこの四つは私も使えるけどそのときにやっぱりドラゴンの素材を触媒にしないと発動は無理っぽい。逆に言うと、ドラゴンの素材さえあれば私でもドラゴンの魔法を使えるということ。特に後者二つの魔法を私が使える、ということはかなり恩恵が大きい。とはいえ、〈サンダリング・カタラクト〉並みに制御が難しいから動いては現状使えないんだけどね。これを並列で発動できるドラゴンやっぱ化け物でしょ。いや、ほんとに。あと、ドラゴンの素材については、ドラゴンの魔法を使う上ではこの上ない触媒になると同時に、その効果量をさらに上げているような感じがした。まあ、こっちはもう少し試してデータ取らないとだけどね。
「これで、とりあえずやりたいことはできたかなあ。」
「ですかね?正直中庭に火柱が現れたときは肝を冷やしましたけどね。」
確かにあのときはやばかった。王城の方から人が何人も飛んできてかなり焦った。どうにか何をしたかを説明して事なきを得たけど飛んできた人たちのジト目が痛かった。
「ところで、フレアは今日戻るのですよね?」
「うん、そうだね。帰りは箒持ってきてるからそれで飛んで帰るよー。一人だから気が楽だよー。」
あと最後に術式をメモだけしないとだけどそれが終わったら帰っちゃう予定。まあ術式を書く作業自体はすぐに終わるかなあ。あ、あと部屋への機材の運び込みもしないと。思ったよりもやることあるな、これ。
そう思って作業へと戻ろうと振り向いたところで、自分よりも少し高い何かに当たった。いつの間にかルナが私の後ろに回り込んでいたらしい。顔を見ようと少し見上げたところで頭がさわさわされるのを感じた。
「お疲れ様です、フレア。」
少し顔を上げて視界に入ったルナの笑みはとてもきれいだった。その上で頭を撫でられているものだから、まだ、作業があるのに、舞い上がってしまいそうになって、それを抑えるのに必死になってしまった。はう、やっぱなんか調子狂うんだよなあ。
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