第22話:フレア王女と初めてのアカデミー
私はルナに連れられてエクスマキナ王国の国立アカデミー、私の国で言う国立魔法学院に当たる場所に向かっている。その道中で街並みを見ると、私の国-ヘカテリア王国-のものとは全然違うように見える。多分文化とか技術とかが違うからかな?私の国では白系の壁が多かったのに対して黒系の建物が多いし、所々では私の国よりも大きくて数の多い煙突が煙を吐き出している。
「フレア、きょろきょろしてどうしたのですか?」
「ああ、ごめん。いやあ、私の国とは全然違うんだなあって。」
「私も貴方の国に行ったときに思いましたよ、それ。」
どうやらルナも同じ感想を抱いていたらしい。この国には魔法がなくて、代わりに科学が発展したんだっけ?その結果がこの差になってるのかな?
「まあ、文化の差なんでしょうね。」
「そうだろねー。」
と、まあルナと他愛のない会話をしていると、何やら門の前に着いて、そこでルナが足を止めた。
「さて、着きました。ようこそ、ここが国立アカデミーです。」
ルナは私の方を向いて誇らしげにしている。
「では、講義に参加してもらう前に、まずこのアカデミーの総長に挨拶しに行きましょうか。」
そう言ったルナは今度は私の方を確認してから歩き出した。それに送れずに着いていく。建物に入ってから四階分くらい階段を上ったところにある扉の前まで来た。
「ここが総長のいる部屋ですね。」
そう言ったルナは扉を開ける。
「アレスタ・フォレッド総長、ルナモニカ・フォン・エクスマキナです。交換留学生であるフレアニア・フィア・ヘカテリアとともに挨拶に参りま、し、た…?」
ルナがそこまで言ったところで何か言いよどんだ。開いた扉の隙間から中を見ると黒髪黒目の柔和な印象の男性ともう一人、青白色の髪を片側に流して編み込んでいる、黒目を持つ、どことなくルナに似ているような印象のする女性がいました。
「お母様、何故ここに…?」
「今日貴方がヘカテリア王国の王女様を連れて総長に挨拶に来ると聞いたので名誉総長の立場を利用して同席させてもらいました♪」
やり取りから推測するに、彼女はルナの母上、つまりこの国の王妃―トリステラ・ペナ・エクスマキナ―なんだろうな。なんというか、してやったりって顔がルナが新しく何か作ったのを見せつけてきたときの顔にそっくりというか、なんというか、親子なんだなって。ルナが部屋に入っていくのが見えたから、私も部屋の中に入ってルナの隣に並んだ。
「では改めて。彼女がヘカテリア王国の第一王女で交換留学生としてこのアカデミーで過ごすことになるフレアニア・フィア・ヘカテリアです。」
ルナがそう紹介したので、私も自己紹介をしました。
「そうか、ヘカテリア王国の学院とは勝手が違うところも多く、大変であろうが、このアカデミーでの勉学に励んでほしい。」
「まあまあ、ルナと一緒の講義取るんでしたっけ?頑張らないといけないからね。」
総長と王妃様がそれぞれそう返してきた。なんか不安になる情報が混ざってるような…?そのまま挨拶が終わって部屋を出て行こうとすると、
「あ、フレアニア王女だけすこーし残ってもらえるかしら?」
「「はい?」」
王妃様に私だけ呼び止められた。ルナは困惑しながらも外に出ていく。それを確認した王妃様が口を開く。
「んー、あなたって魔法使えるのよね?」
「はい、そうですが…?魔法を使わないでほしいってお願いですか?」
「それもあるけど、単純に私が貴方にそれ関係で尋ねたいことがあるのよね。」
「尋ねたいこと、ですか?」
「貴方って魔女ではないのですよね?」
魔女?と言われてもそれが何かわからない。魔法が使える女性のことをそういうの?魔女のことがわからない、と返すと、
「そうですか、なら大丈夫ですね。」
「ええと、どういうことで?」
「この国では魔法もそうですが、それ以上に魔女という存在が禁忌とされているのです。念のため確認を取りましたがその感じだと知らなさそうなので大丈夫そうですね。」
「はあ、そうですか…?」
「これで私が確認したいことは確認できました。時間をとっちゃってごめんなさいね。」
そう言った王妃様は茶目っ気な感じを出しながら退出を促してきました。なんというか、自由な人だなあ。
部屋の外に出るとルナが待っていた。
「お母様と何を話したのですか?」
「私が魔女かどうか聞かれたかな。」
「魔女、ですか。教会関連ですね、わざわざ確認を入れるあたり相当厄介なことになってる雰囲気を感じます。」
そう言ったルナは思案顔になっている。しかし、魔女、か、それと教会。私も念のため気を付けないと。
「まあ、今はいいです。早く行かないと講義が始まってしまいます。」
「そうだね、早く行こ!」
私がそう言うと、ルナが先導するように歩き出す。私はそれに遅れないようについていく。
「そういえば最初の講義ってなんなの?」
「最初の講義は物理学ですね、今日の内容は簡単めなので一応大丈夫だと思いますが…。わからなかったらすみません。」
なんでそんなわからないという前提で話をされてしまっているのだろう…。この国の講義のレベルってそんなに高いの…?そんな不安な感情を抱きながらルナと一緒に講義室へと向かうのだった。