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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第一章:二人の王女と新たな世界
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第19話:二人の王女と一旦の別れ

 フレアとの実験のあと、私はフレアと一緒に今回の実験のまとめをしていました。


「ん-、新しいことしたくてももうそろそろルナは国に戻っちゃうんだよねえ。」

「そうですね、私のこの国での滞在はあと少ししかないです。」


 この言葉の通り私がこの国にいる時間は残りわずかです。次の実験をするとしても新しい魔道具を作るとかになると、間違いなく時間が足りません。一応、私が戻ってから一か月くらいしたら今度はフレアが私の国に交換留学に来るのですが…。


「一応この国にいるうちに次の実験の計画だけ立てて私がそっちに行ってから実際に実験するって形でもいいけど。」

「実験をするだけならそれでいいんですけど、不安要素が明確に一つあるんですよ。」


 私はそう切り出して、その不安要素、教会、について話します。教会とは、私の国が存在した世界では広く信仰されていた宗教で、その教義の中にとある歴史に基づく魔法の忌避があるということを。


「あー、なるほど。宗教かあ。そんなのがあるにしては魔法を使える人がいるこの国、ヘカテリア王国と国交、しかも相互不可侵条約なんて結んじゃったの?」

「理由は二つですね、一つは大戦の傷が癒えておらず対外戦争なんてする余裕がないこと、もう一つは唐突に周りの地形などが変わり、また、諸外国との連絡が取れなくなったりしたためにとにかく情報に飢えていたこと、ですね。一番は国の政治としては教会との結びつきはないに等しいかったからですね。」


 それを聞いたフレアは辻褄があった、というような顔をします。


「まあ、国としては背に腹は代えられなかった、ってことなのかな?」

「そういうことになりますね。とはいえ、そのせいで私が国を出る前に少しめんどくさいことになりかけていましたけどね。」


 それは教会の過激派が王女がそんな教会が忌避している魔法の存在している国に行くとは何事かとかいう主張をしていたことです。私が国を出る前はあくまで主張だけですが如何せん過激派だから何をしでかすのかがわかりません。


「確かにめんどくさいことになりかけてるなあ。うちの国にも精霊信仰をあまりにも信じすぎてる危ない貴族とかいるから、わからないことはないんだけども。ただこっちと比べてみるとなんかほんとにやらかしそうな雰囲気がするけど。」

「そうですね、すごく心配です。」


 話の流れからそんな感じについ私の国の宗教についての話をしていました。


「まあ、そこらへんは私たちにはどうしようもないかな。作業は大体終わったからもうそろそろ寝ようか。」

「そうですね、お疲れ様でした。おやすみなさい。」


 そう言って、今日の話は終わりました。


 それから日にちが経ち、私が帰国する日がやってきました。私は帰国のためにまとめた荷物を持って扉に手をかけようとしました。しかし、触れる前にその扉は独りでに開きました。その向こうからフレアがひょこっと顔を出してきました。


「ルナ、大丈夫?荷物運ぶの手伝おうか?」

「いえ、大丈夫です。この後すぐに侍女の方に渡してしまうので。」

「そっかー、お見送りしたいから馬車の場所まで一緒に行っていい?」

「はい、是非。」


 そう言葉を交わした後、フレアが私の隣に並び、ともに歩き始めました。その後、すぐに荷物を侍女の方に渡し、別れの場へと向かいます。


 その場所にたどり着くと、すでに馬車は用意ができていました。


「ルナ、行ってしまうの?」

「ですね、でも、今度はフレアが私の国に来てくれるんですよね?」

「だね。私の方も用意があるから大体一月くらいあとになるけどね。」

「はい、私の国で貴方に会えることをすごく楽しみにしてますね。」

「私もだよ、ルナ!」


 そう言ったフレアは私にまた思いっきり抱き着いてきました。最近、何回も抱き着かれるうちにフレアは感情が高まったりするとこのような行動をとりがち、ということが分かるようになってきました。しばらくはこのように抱き着かれるようなこともないのでしょう。そう思うと何か心細く感じます。私はそれに軽く抱き返すことで答えました。


「ふふ、今回が初めてかもね、ルナが抱き返してくるの。」

「そうかもですね、また会えるとわかっていてもなんか少し寂しくて。」

「そう思ってくれてるなら嬉しいな。」

「フレアとまた会うまでの間に驚かせられるようなものをいくつか用意しときますね。」

「本当!じゃあ私もルナを驚かせられるような物を準備できるようにがんばるね!」


 そう言ったフレアは私から少し離れていきます。その顔は笑みが浮かんではいますが、その裏に寂しさのようなものを感じました。私の表情にもそれが見えてしまっているのかもしれないのですけどね。


 その後、私は馬車に乗り込み、帰国の途へつきました。フレアは私が見えなくなるまでずっと手を振っていました。またフレアに会える日が楽しみです。


***


 ルナを乗せた馬車が見えなくなってしまった。会おうと思えば会いに行けるとはいえさすがに控えた方がよさそうだからなあ。そう考えると、たった一月、されど一月、それがかなり長く感じてしまう。


「ルナと今度はあちらで会えるのが楽しみだなあ。」


 つい、私はそうつぶやいてしまった。


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