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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第一章:二人の王女と新たな世界
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第15話:二人の王女と魔物

 抱きついていたフレアは少し経って、落ち着いたのか私を離してくれました。


「とりあえず、これで魔石から魔力を抽出する実験と、その魔力を直接魔法に変換する実験は成功かな。」

「そうですね、うまくいってよかったです。」


 そう言ったフレアはやはり嬉しそうに笑っています。きっと私も同じような顔をしているでしょう。少し、頬が緩んでいるのを感じます。すると、フレアがパッと何かに気づいたかのように周りを見渡しました。


「どうしたのですか…?」


 私がそう言うや否やフレアは私の口を手で塞いできました。


「ルナ、静かに、魔物が来てる。」

「え?魔物ですか?それらしきものは見えないのですが。」


 周りを見渡しても私の目にはそれらしきものは見えません。


「私の探索用の魔法にそれらしきものが引っかかった。こちらに向かってきてる感じがする。ルナって戦える…?」


 そう聞かれて魔物との戦いで使えそうなものを確認します。まず一つは今持っている杖、もう一つはフレアから借りて持ってきていた剣一本。そして、最後の一つはこのタイミングでフレアに見せようと思っていた物。


「戦えるかというと、なんとも言い難いです。一応武器の類はありますが。」

「武器って、ええと、まずその杖とあと貸している剣だよね?」

「はい。あともう一つ使えそうなものが。」


 そう言って私は持ってきていた荷物からそれを取り出します。


「これです。」

「これは…初めて見るものだね。」

「これは前に話した銃、というものです。」

「ああ、なるほど。それで戦えそう?」

「やってみないとわからないです。そもそも弾が通るかどうか。」

「わかった、魔物はだいぶ距離を詰めてきてる、もうそろそろ視認できるんじゃないかな。」


 そう言ったフレアは二本の剣を構えます。私は一瞬迷った後、今持ってる杖をいつでも使えるように構えることにしました。


「来る。」


 そうフレアが言うと同時に森の方から魔物が現れました。それも複数。


「狼型の群れか、ルナのことを考えると下手に前に行けないなあ。」

「一応この杖で援護はします。」


 私の声を聞いたフレアは私に背を向けて軽く頷くと、魔物の群れに対して走り出します。そして、接敵すると同時に、先頭から順々に剣を振るい始めました。あの剣術の時間の再現のようです。一撃、二撃と切るたびに魔物に傷を負わせていきます。しかし、致命傷にはなっていないようです。すると、フレアの横合いから魔物が攻撃を仕掛けようとするところが見えました。


「危ない!」


 私は咄嗟にその魔物に対して杖の魔法を発動させます。発動させると少しのラグが生じた後、魔法が放たれました。発射された風の弾丸は魔物めがけて飛んでいき、魔物に命中してよろめかせました。その結果として、フレアへの攻撃は回避されました。しかし、


「あー、ルナ。ありがたかったけどその魔法のせいでルナも敵視されちゃったかも。」


 その言葉の通り、魔物のいくらかがこちらへと顔を向けてきています。あ、これまずいかもですね…。


「ルナ、その杖の魔石の残量どれくらい?」

「ええと、まだ余裕ありそうです。」

「わかった、私の合図と同時に限界まで乱射して。私に当てなければとりあえずいいから。」

「…わかりました。」


 そう言ったフレアは、一気に後ろに下がって、私の傍に来ました。


「じゃあ行くよ、〈エンチャンテッドソード〉!よし、ルナ、今!」


 その合図と同時にフレアは一気に前に飛び出していき、私は杖の魔法を撃てるだけ、かつフレアに当てないように乱射しました。魔物の群れは私の撃った魔法によって大きく体勢を崩しています。その中を縫うようにフレアが剣を手に駆け抜けていきます。剣が振るわれる度に魔物の命が刈り取られていきます。まるで踊っているかのようです。大方殲滅が終わったくらいでしょうか。フレアが足を止めて戻ってきました。


「いったん休憩、多分あと少しだけ残ってるけどちょっと様子見。ここまで減れば大体は逃げ出すはずだけど。」


 私はその言葉を聞いて、警戒しつつも一息つきました。しかし、それがどうやらまずかったようです。私は見てしまいました。生き残っている魔物が一斉にこちらに向かってくるのを。

 フレアは剣を二本とも腰に戻してしまっています。つまり、即応はできない。杖はさっき使い果たした。使える武器は…。これしかないか。そして、その武器―銃を引っ張り出して構えます。


「フレア、どいて!」


 そう言いながら私はフレアを挟んで反対側に銃口を向けます。フレアはその言葉に反応して少しずれた後、剣に手を当てます。その刹那、私は引き金を引きました。一発、二発、三発、四発、五発、六発、これで予め装填してあった弾は撃ち切りました。発射された金属の弾丸は、一体につき二発が命中し、計三体に命中しました。当たった場所の問題なのか、そもそも通りが悪いのか致命傷にはならなかったようです。しかし、何か飛んできた、という事実と、何より、銃を撃った時に鳴り響いた音によって、魔物は一瞬動きを止めました。その一瞬でフレアは剣を抜き、駆け抜けていきました。金色の髪がたなびいた後には、生き残っている魔物はおらず、すべての魔物の命は刈り取られていました。


「ルナ、ごめん、完全に油断してた。普段なら様子を見てれば逃げてくんだけどまさか向かってくるなんて。ほんとにごめんね。」

「はい、大丈夫です。こうして無事ですし。」

「とりあえず無事でよかったんだけど。へえ、それが銃なのね。音がすさまじかったけど、ある程度効果はあったわね。」

「はい、みたいです。多分急所にさえ当てられれば致命傷になると思いますが…。いや、それでも結局そもそも弾が通ってないのかもしれないから、どうなんでしょうか…。」

「ル、ルナ?戻ってきてー?一瞬でも動きを止めれただけでもありがたかったから大丈夫、気にしないで。」


 つい思考の渦に飲まれそうになった私に対してフレアはそれを止めることを選びました。そして、フレアは殲滅した魔物の群れの方へと足を進めます。


「じゃあ、ルナ。この魔物から使える素材剝ぎ取るから手伝って!」


 そう言われた私は若干顔が引きつるのを感じました。え?魔物の解体をしろってことですか…?私、魔物はおろか、動物でさえ解体したことはないのですよ?


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