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Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第四章:二人の王女と魔女再誕
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第109話:ルナってたまにやりすぎるんだね

 ルナが始めた決闘騒ぎに、フェンリル特殊個体掃討戦と続いたここ最近では割と事件続きだった日の翌日、私はルナと一緒にエクスマキナ王国へと向かった。ルナ曰く、


「この国でやりたかったことは一通りやりました。それに、国の方でお願いしていたことの進捗も確認したいですね」


 とのことで。まあ、つまり、ルナのエクスマキナ王国への送迎だよね。一応今回は私も数日エクスマキナ王国に滞在する予定だけどね。というのも、出発前に母上に見つかっちゃって行くならついでにこれもお願いと言わんばかりに即位式とかそこらへんの儀式への出席とかそこらへんの話をしてくるようにってお願いされちゃったんだよね。フェンリルの魔石の件でやらかした後ろめたさもあって断れなかったよね。


「お帰りなさいませ、ルナ様、それにフレア殿下」


 ルナの離宮の自室に入ると、掃除をしていたらしいメイドのクレアさんにお出迎えをされる。


「クレアさん、戻りました。私が不在の間に何か問題はありましたか?」

「あー、問題というか、ルナ様の置き土産についての苦情が少しばかり」

「苦情、ですか?」

「内容は非常に単純でしたよ。無茶言うな、とのことで」

「とりあえずわかりました。丁度今から行こうと思っていたので確認してきますね」


 ルナ、一体何をしたんだ?というかこのルナに苦情を入れれる人って何者?ルナにはどうやら心当たりあるみたいだけど、一体何をしたんだ?


「じゃあ、フレア。これから少し時間ありますか?」

「んー、少しだけ時間ちょうだい、すぐ終わるから」

「わかりました」

「ん、ありがとね。ねえねえ、クレアさん」

「はい、なんですか?」


 私はクレアさんに王位継承の儀関係で打合せしたいことがあるからスペランテ王子と相談する時間を作ってほしい、と伝えた。ここに来た目的だから忘れないうちにアポを取っておかないとね。


「ルナ、終わったよ」

「では行きましょうか」


 ルナに袖を引っ張られる。その様子がどうもまたいじらしくて可愛らしい。


「そういえばさ、どこに向かってるの?」

「軍の開発局ですね。ヘカテリア王国に行く前に少しお願いしたことがあったので」

「軍関係ってことは武器とかのこと?」

「そうですね。色々と試しに作ったものがあるので性能テストや量産できるかどうかなどの確認を依頼していたんです」

「…もしかしてそれが苦情の原因?」

「そうじゃないですかね?まあ毎回のことなんで」

「いや、毎回なんかい」

「慣れたものですから」


 目的地への移動中、ルナに色々と聞いてみた。なんで苦情が来るのがいつも通りみたいな感じなのかな?普段から一体何を要求しているのかが少し気になるんだけども。ルナのことだし、多分自分が出来るから他人も出来るでしょ?のノリで無茶言ってるって感じだとは思うけども。


「さて、着きましたよ」


 二人並んで歩いているうちに、どうやら目的地へと到着したらしい。そこは王都郊外にある建物だった。うちの国では見たことのないような建物だけれど、ここが開発局なのかな?


 私が立ち尽くしていると、ルナは当たり前かのように建物の中へと入っていくのが見えたから私も慌てて後を追う。


 中に入ると、そこは大きな空間になっていた。入口からは見えない位置にはシャッターが複数あり、外へと出られるようになっている。そして、中には様々な見たことのない武器のようなものがあった。うちの国で見るものよりも全体的に大型なのかな?


 そんな兵器の中をキョロキョロしながらもルナの後を追って進んでいく。ルナはどうやら向かう先を決めているみたいで迷うことなく真っすぐに進んでいた。


「シモンさん。来ましたよ」

「ああ、ルナ様。やっと来たな。ってそちらの人は?」


 ルナが話しかけたのは、何やら大きな金属の箱っぽいものとにらめっこをしている初老の男性だった。オストよりも少し年上くらいかな?


「この人はヘカテリア王国第一王女、フレアニア・フィア・ヘカテリアです。魔女事変の英雄、と言った方がわかりやすいですかね」

「ええと、よろしくお願いします?」

「ああ、貴方が。俺はシモン・ルグラン。ここ、エクスマキナ王国兵器開発局の局長をしている者だ。魔女事変の英雄と名高いフレア殿下に会えて嬉しいよ」


 そう言ってシモンが手を差し出したので、私はそれを握手をした。


「さてと、ここに足を運んでいただいたんだからせっかくなら色々と魔法について聞きたいことがあるのは山々なんだが」


 シモンさんは私へと向けていた視線をルナの方へと移した。同時に顔が険しくなるのが見えた。


「ルナ様、お願いされていた件についてだが」

「出来ましたか?」

「出来る訳ないだろ!」


 そして、彼はキレた。思いっきりキレた。けれど、それをルナは涼しい顔で受け流している。というか、ルナに本気で怒ってる人初めて見た気がするんだけど。


「あのな、この戦車に使われている技術はなんだ?魔石が積んであるから魔法関連の技術なのはわかるが、それ以上のことはさっぱりわからんが?動かしてみるとかなり素直に動くし、性能も過去の戦車を置き去りにするレベルで高い。だがな、これを量産して欲しいと言われてもどうあがいても今の俺たちには無理なんだ、わかるか?それ以外にお願いされていたものについてもそうだ。前から割とルナ様は俺たちに無茶を言っていたが、なんとか出来る範囲ではあった。だが、今回ばっかりはさっぱりだ。なんでって、使われている技術が理解不能なものかつ、それに関してのデータもほぼないからだ」


 その後、シモンさんは高速でまくしたてるようにルナへと言葉を投げかけた。それはもう、剛速球だった。その苦情はあまりにも長かった。まあ、とにかく長い、そして早い。なんか内容聞いてると今までの鬱憤もすべて詰め込まれてないかな?


 あまりにも長くなりそうなものだから私はシモンさんが見ていた戦車というらしい兵器を見ていた。うわ、なんだこの術式の数。多分これルナが自分で刻んだやつだよなあ。思い出されるのはフェンリル戦のときのくそデカライフル。多分あれと同系統だと思うけど出力はこっちのが下がってると思う。なんというか、確かにこれは無理だよ。うちの国でもこれと同レベルの術式組める人が何人いるのか、少なくともオストレベルはないと無理だろうなあ、これ。


 私が戦車をじっくりと見て、それを構成している術式のレベルの高さ、それを作ったルナの能力、そしてそれを魔法を使えない人に投げたルナの行動、そのすべてに驚いていると、結構な時間が経ってしまっていた。来たときには天頂にあったはずの日が見える位置にまで動いている。


 ちなみにまだルナへの苦情は続いていた。シモンさんが止まる様子は未だになく、最初はスルーしていたルナもさすがに耐えきれなくなってきたらしい。かなりうなだれて、しょんぼりとしているのが見て取れる。あ、涙目になってる。…正直、今回ばっかりはルナをかばえるかというと、割と微妙かなあ。多分私でも同じことするし。とはいえ、ルナの情けない姿とかいうとても珍しいものを見てしまった。正直、すごく可愛いと思う。だって、普段はどっちかというと凛々しいが先に来る子が涙目になってるんだよ?ギャップがすごい。あとで慰めてあげたい。アレだよね、可哀そうは可愛い、ってのが少しだけ分かった気がした。


 まあそんな感じで可哀そうなんだけど、正直今回はルナの自業自得ということでこのままにしておくことにしようかな。ルナってたまにやりすぎるんだね。


ルナはたまに他人の能力の判断をミスって無茶を言う悪癖があります。多分エクスマキナ王国にはルナ王女被害者の会とかあると思う。


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― 新着の感想 ―
ルナ王女被害者の会w ルナ様、それは流石に無茶です!(笑)
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