表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Princesses' Fairytale~魔法と科学の出会いは何を魅せるのか?  作者: 雪色琴葉
第四章:二人の王女と魔女再誕
111/114

第108話:夜の語らい

 あの後、私は自室のベッドにうつ伏せで力尽きていた。結局、あの後、私は母上にこってりと絞られたうえでいつもと同等かそれ以上の訓練に付き合わされたんだよね。矢を雷の魔法で加速させようと試みていたあたり、ルナの銃を見てやりたくなったんだろうな。獰猛な笑みを浮かべながら攻撃をしてくる母上はさっきまで怒られていたこともあって恐怖でしかなかったよ、ほんと。


 で、そのあとにへとへとの体を無理に動かして件のフェンリルの魔石の魔力を通常のものに変換する作業をした。久しぶりにこの作業やったもんだからなんか無駄に疲れちゃった。で、それが終わるや否や、ベッドにぶっ倒れてこの有様、ということだ。


「そういえば、別れてから結構時間経ったけどルナ全然戻ってこないな」


 うつ伏せになっていたところから仰向けになりながらそうつぶやく。私の視界に私の部屋の天井が映った。視界を窓の外に移すと外はもうすでに暗くなりつつあるのがわかった。


 普段なら、ルナが私のところに来てくっついてくる時間帯なんだけどなあ。というか、暗くなってくると充電と言わんばかりに私の近くに寄ってくる。いや、可愛いし、作業しているときに邪魔になるわけでもないからいいんだけどさあ。で、そんなルナが来ないとなると、どうしても寂しさを感じてしまう。こういう風にくっついてくるようになったのは最近のことだったのに、普段、と言えるレベルにまで常態化してしまっている事実に私自身も苦笑するしかない。


「どうしたのですか?黄昏て」

「ふえっ!?」


 少し瞬きをした隙に、私の視界のほとんどをルナの顔が占めてしまっていた。ルナの絹のような銀色の髪で視野が遮られてしまっているから予想に過ぎないんだけどこの子、この部屋に無音でヌルっと入ってきたな、私を驚かせるためだけに。だって、ルナの顔がそれを物語っているんだもん。


「驚いてくれたならそっと入ってきた甲斐がありましたね。その顔、可愛いですよ」

「むう、ルナのバカ」


 驚いた顔が可愛いって褒められるのって嫌ではあるんだけど、殊更ルナに限ってだけは嬉しく感じてしまうのは惚れた弱みなんだろうか?そう思いながらも微かな抵抗を示してはみたものの、ルナには効いていないっぽい。いいようにやられたようで少し悔しいな。


 私のそんな気持ちが顔に出ていたんだろうか。ルナは満足したかのような顔をすると、体を起こして私の隣へと腰を下ろした。私も体を起こしてルナと並ぶ。


「フレア、あの後どうなりました?」

「いや、ほんと疲れたよ。あの後、母上の実験に付き合わされてるからね?で、それが終わったら今度は怒られる原因になったフェンリルの魔石の処理をしたんだよ?ほんとやになっちゃう」

「それって半分自業自得なような気もしますが、それはそれとしてお疲れ様でした」

「うん、ありがとね。ルナの方は何してたの?」

「ええと、リネストスさん、それにアナさんと少し話していましたね」

「そうなんだ。どんな話したの?」

「そうですね、私の魔女としての力とか、マジックガンの機能についてとか、他にも色々と雑多な内容でしたね。特にリネストスさんの話はかなり参考になりました。おかげで色々と捗りそうです」

「ふーん、そうなんだ」


 ルナがリネリネとアナとのやり取りを楽しそうに話すのを見ていてどうも胸がもやもやしてしまう。ルナの一番は私のはずなのに。それに、リネリネがルナの役に立ったという事実もまた、どこか胸のもやもやの一因になっているように感じた。


「もしかしてフレア、嫉妬してるんですか?うふふ、嬉しいですね」

「むう、してないもん」

「顔に出てるから否定しても無駄ですよ」


 そう言って、ルナは私の頬をツンツンと突っついてくる。むう、なんかいいようにされてる気がする。少し頬を膨らませていると、ルナは私の頭を抱え込むようにして、胸元へと引き寄せてきた。顔がルナの胸に埋もれる形になって、少し息苦しい。…多分見た目よりも大きいんだ、ルナって。


「正直ですね、不安だったんですよ」

「ふえ?」


 私を抱きかかえたままルナが呟いた。


「だって、フレアってモテるじゃないですか」

「それは、まあ」


 それに関しては私も自覚はあった。多分、私の立場やこの国の文化が関係していたところもあるとは思うんだけど、間違いなくモテていると思う。でも、私の立場的に結婚とかしてしまうと、今出来ていることができなくなってしまうことを恐れていた。それに、好きだと思えるような人もいなかった。


「だからですね、その、フレアが他の人に取られちゃうんじゃないかって疑念がずっとあったんです」


 正直、私も同じ感情を抱いたことはある。というか、魔女事変のときはそれよりもより致命的な、ルナがいなくなっちゃうんじゃないかって危機感を持って動いていたから。


「正直、今回ここに来た目的はフレアへのその手の縁談をすべて飛ばしてしまうことだったんですよ」

「…ん?」


 なんかルナが聞き逃しちゃいけないことを言った気がする。私の漏らした声を無視してルナは続ける。


「フレアが困っていそうだというのもそうですし。それに」

「それに?」

「フレアは私のものなのでしっかりと牽制してお邪魔虫を排除したかったんですよ」

「割とストレートに言うねえ」

「事実ですし、隠す理由もないので」


 そう言って、ルナはさらに強く抱きかかえてくる。やば、やわらかいけどいい加減息出来なくなってきた。さすがに苦しくなってきたから手をじたばたさせて意思表示をしてみると少しだけ力が緩まった。そして、少し上を見ると、ルナと目が合った。


「とにかく、これでこの国ではフレアについての牽制は済んだので目的は果たせました。これから先、きっとお誘いの手紙が来ることはなくなるでしょう」


 ルナは私の頭を撫でながらそう告げる。そのあとに、なんかその分他の人に流れそうな気もするけど、まあ関係ない話だから大丈夫でしょう、と続けていた。なんか知らないところで誰かに流れ弾が飛んでいきそうらしい。


 

「それに、フレアが私のものってことを理解してもらえましたね」


 なんだろう、ルナがものすごく満面な笑みを浮かべているけれど、どうしてだろう、なんか怖く感じる。それに、ルナの黒い瞳にはさっきまではなかった蠱惑的な色が見えてきていて、つい魅入られてしまう。


「どうかしましたか?」

「いや、ルナって独占欲強いんだなって」

「当たり前じゃないですか。だって、フレアは私の大好きな人なんですから」

「そっか、私もルナのこと大切に思ってるよ」


 私の言葉を聞いて、ルナは少し呆気にとられたかのような顔をしたかと思うと感極まった表情を表して再び、私を思いっきり抱きしめてきた。やっぱ、苦しいって。今度もまた同じようにもがいて抵抗してみたけれど、緩む気配はない。


「えへへ、嬉しいです」


 でも、その嬉しそうな声色を聞くと、どうも抵抗する気がなくなってしまう。私自身も苦しいから抵抗するだけでこうされること自体は問題なかったりする。いや、むしろそうして欲しいとまで思う。ルナの少し早いような気がする心音が耳に届くと、ルナが生きていることを実感して安心してしまう。あ、やばい。


「ねえ、ルナ、私もうダメかも…」

「え?ちょっと!?」


 ルナの体温に安心してしまったのか、それとも今日色々とあった疲れのせいなのか、急に眠気に襲われる。ルナの慌てるような声が聞こえてくる中、私の意識は沈んでいってしまう。


「ル

 ナ、本当にありがとね。ずっと、一緒にいてね」


 そんな中、私の口から無意識に漏れ出た言葉は、本音だった。


「ええ、いれる限り、ずっと一緒にいますよ。フレアこそ一緒にいてくださいね」


 そして、完全に意識が沈み切る寸前、そんなルナの本音が私の耳へと届いた。


 そんなやり取りをした翌日、私はルナと一緒にエクスマキナ王国へと向かった。そして、私は目撃した。ルナがしょんぼりとした様子で怒られている姿を。…正直、そんなルナを見るのは新鮮で、少し、いや、かなり可愛いと思ってしまったんだけど、それはルナの名誉のために秘密にすることにしようかな。


次回以降、エクスマキナ王国での話になります。何人か新キャラ、出ます


評価、ブクマ、感想などなどモチベになるのでぜひぜひお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ